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■空族祭SS 作者別まとめ

作者別まとめ



空族祭SS tare


1■SS「初陣」 投稿者:tare
4■SS02「新たなる力」 投稿者:tare
5■SS03「電気工学者」 投稿者:tare
38■捏造祭りSS04「義勇兵」 投稿者:tare
72■捏造祭りSS05「砂漠の嵐(前編)」 投稿者:tare
90■SS06「砂漠の嵐(後編)」 投稿者:tare
91■SS07「その後」 投稿者:tare



空族祭SS FK


2■SS「マガツの過去」 投稿者:FK
33■裏サクセス祭りSS「三つ巴」 投稿者:FK
56■空族捏造祭りSS「決戦前夜」 投稿者:FK
94■オマケSS「新たな門出」 投稿者:FK



空族祭SS 文一郎

■空族時代投稿キャラ&都市 投稿者:文一郎
■空族時代投稿キャラ第三弾 投稿者:文一郎
■イーベル登場イベント完全版 投稿者:文一郎
■ティオ登場イベント簡易版&イベントキャラ追加 投稿者:文一郎
■捏造祭延長戦「天の秤を正す者・序章」 投稿者:文一郎



空族祭SS 野球小僧monjya

7■イベント:ジン・イル・ユウキ加入まで 投稿者:野球小僧monjya
14■汎用イベント・ジン 投稿者:野球小僧monjya
24■パワポケスタジアム捏造祭り 4本目 投稿者:野球小僧monjya
41■クエスト「仇討ち」 投稿者:野球小僧monjya
65■クエスト編・後編 投稿者:野球小僧monjya



空族祭SS waya

8■空族編イベント 投稿者:waya



空族祭SS ペケ

9■キャラ紹介+α 投稿者:ペケ
11■鮮血の盗賊団遭遇イベント02「再び、そして」 投稿者:ペケ
12■テイルウッド初遭遇&仲間加入イベント 投稿者:ペケ
18■カズイベント「過去の裏切り」 投稿者:ペケ
19■鮮血の盗賊団小型イベント集 投稿者:ペケ
20■もしジオットとカズが同時に裏切っていたら・・・ 投稿者:ペケ
22■テイルウッド「テイルウッドの書庫」 投稿者:ペケ
23■マダラ「闇の仕事人」 投稿者:ペケ
27■【いろいろがんばるユイちゃん】 投稿者:ペケ@
28■【どちらが本物か】 投稿者:ペケ@
29■【殺し屋としてのポリシー】 投稿者:ペケ@
30■【鮮血の狐】 投稿者:ペケ@
32■「駆ける目的」 投稿者:ペケ@
43■「ヒカリ君の憂鬱」 投稿者:ペケ
44■「カメダ軍の日常」 投稿者:ペケ
45■「大切な仲間」 投稿者:ペケ
52■「欠落と決断」 投稿者:ペケ
53■「カズ問答」 投稿者:ペケ
60■「追いかけてた背中」 投稿者:ペケ
70■「熱意の先に」 投稿者:ペケ
71■「先史兵器ファントゥーム」 投稿者:ペケ
75■「人形の真実」 投稿者:ペケ
76■「最終決戦-決意とは-」 投稿者:ペケ
77■鮮血の盗賊団 イベントアルバム集 投稿者:ペケ



空族祭SS 正拳


10■ピンとボイラー 投稿者:正拳
48■「みんなで花見」 投稿者:正拳(代理:ラリアット)
81■捏造祭:ピン、ラストイベント&アルバム 投稿者:正拳



空族祭SS トミーズ・ぞいや

13■イベント集 投稿者:トミーズ・ぞいや
16■クロマツ連続イベント 投稿者:トミーズ・ぞいや
17■クエスト「ドキドキ列車大爆走」 投稿者:トミーズ・ぞいや
34■ネロ・モモカ会話イベント 投稿者:トミーズ・ぞいや
35■クロマツとスウォンの会話イベント 投稿者:トミーズ・ぞいや
36■ユウキ・アイハラ会話イベント 投稿者:トミーズ・ぞいや
37■パラダイスカフェの日常 投稿者:トミーズ・ぞいや
54■探偵少女は情報屋おじさんの弟子 投稿者:トミーズ・ぞいや
61■クロマツ連続イベント(後半) 投稿者:トミーズ・ぞいや
62■「乙女の恋と男の決意はスイセンの花のように」 投稿者:トミーズ・ぞいや
63■会話イベント「男達の盃」 投稿者:トミーズ・ぞいや
68■双龍伝説  投稿者:トミーズ・ぞいや
85■捏造祭り  アルバム集 投稿者:トミーズ・ぞいや



空族祭SS ヘイム

15■イベント 「ステンシルの正体は?」 投稿者:ヘイム
84■奴隷の印 投稿者:ヘイム



空族祭SS F・S

26■すれ違いイベント1回目『変な人たち』 投稿者:F・S
40■すれ違いイベント3回目『変な人たち三度目』(上) 投稿者:F・S
50■模造祭り イベント投下 投稿者:F・S
64■「嵐の夜(前編)」 投稿者:F・S
99■嵐の夜(中篇) 投稿者:F・S



空族祭SS アイス


31■ネグロ奴隷解放 プレオープニングイベント 投稿者:アイス
47■パライソうろつき:レッドローズ参上! 投稿者:アイス
51■イベント:Rローズ参戦! 投稿者:アイス
67■ランダムイベント:ソネットとミソラ 投稿者:アイス
74■ネグロイベント:迷い子 投稿者:アイス
97■『迷い子』の続き 投稿者:アイス
98■レッドローズラストイベント 投稿者:アイス



空族祭SS 狂路

42■捏造祭り イベント「クローバー畑で相見え(あいまみえ)」 投稿者:狂路
88■メリッサ「夜空にぶちこわせ」 投稿者:狂路
89■ヨツバ「いつかのターゲット 御伽噺の古代種の場合」 投稿者:狂路



空族祭SS usuki


25■捏造祭り連続イベント「古代遺跡の真相(2)」 投稿者:usuki
46■捏造祭りイベント「星に願いを」 投稿者:usuki
55■捏造祭り連続イベント「古代遺跡の真相(4)」 投稿者:usuki
66■捏造祭り連続イベント「古代遺跡の真相(5)」 投稿者:usuki
73■捏造祭りイベント「ヒーローは遅れてやってくる」 投稿者:usuki
95■捏造祭りイベント「ロマンは此処に」 投稿者:usuki
103■捏造祭りイベント『語る者無き英雄譚』 投稿者:usuki



空族祭SS ルナ


57■ソネットとツチのイベント集② 投稿者:ルナ
83■ソネットとツチの本当のラストイベント 投稿者:ルナ



空族祭SS クロル

59■イベント「どういう関係?」 投稿者:クロル
69■イベント「どんな関係? 2」 投稿者:クロル
82■モモコED「わたしの宝物」 投稿者:クロル



空族祭SS みーやん

49■非公式なお話 投稿者:みーやん
79■「水がまた流れた」 投稿者:みーやん



空族祭SS BLUE

86■<月送り その後> 投稿者:BLUE
87■アルバム 投稿者:BLUE
104■<空族祭 打ち上げ会編> 投稿者:BLUE



空族祭SS 雨夜

100■ヒカル君がサクラに襲われたら? 投稿者:雨夜
101■ウゲツとジン達 投稿者:雨夜
102■ウゲツとアイハラ君 投稿者:雨夜



空族祭SS 無頼

58■捏造祭りSS『ショウカ』 投稿者:無頼
78■捏造祭りSS『居場所』 投稿者:無頼
92■『新しい幸せの日々へ…』 投稿者:無頼
93■各キャラ後日談 投稿者:無頼
106■Melodies of Life(前篇)投稿者:無頼
107■Melodies of Life(後篇)投稿者:無頼



空族祭SS 無頼


No.58

■捏造祭りSS『ショウカ』 投稿者:無頼 投稿日:2012/03/19(月) 17:52

「来るな! 紅蓮の悪魔め! こっちに来るな!」
――違う、俺は悪魔なんかじゃない。
「火を振りまく災厄め! さっさとこの街から出て行け!」
――違う、俺は災厄なんかじゃない。
「死ね! 早く死んでしまえ! この世界から消えてしまえ!」
――やめろ。やめろ。

「あんたなんか、産まなきゃよかった。」
――どうしてだよ、母ちゃん。
「お前は生まれてくるべきではなかったのだ。」
――どうしてだよ、父ちゃん。
――どうして、俺の事をそんなに嫌うんだよ。
「お前は死ななくてはならない。
 親としてのせめてもの情けだ。苦しまずに死なせてやる。」
――いやだ。いやだ。いやだ――!!

瞬間、縛り上げられた一人の少年に迫る二人の男女の身体が、一瞬の内に燃え上がった。
人の形をした火柱そのものと化していた。
悲鳴が上がる事は無かった。
二人の男女の身体は、すぐに生前の姿を留めていない、
炭化した杭のような物体へと変わり果てた。
そして、水分を完全に失った二つのかつて人間だった「それ」は、
パサリ、と軽く乾いた音を立てて、崩れ落ちた。
「………うわああああああああああああああああああああああああ!!!」
後に響いたのは、一人残された少年の悲痛な叫びだった――。





「くっ……!」
意識を覚醒させたファイアバグは、目を見開くと、周囲を見回した。
視界に映るのは、愛機『ヴァイレン・ネメシス』の見慣れたコクピットの風景。
それを目にした瞬間、安堵にも似た気が彼の心中に広がる。
――ここは、「夢の中」ではなく、「現実」だ。
「ハァ…ハァ…糞が…! またあの夢か…。」
彼の身体は、汗に濡れていた。

コクピットをわざと乱暴に開け、ファイアバグは愛機から降り立った。
彼の覚醒に気付いた周囲のカメダ軍団団員達は、
すぐに姿勢を整えると、彼に敬礼する。
恐れ戦いている様子なのは、明白だった。
ファイアバグは明らかに不機嫌な様子で、周囲を見渡す。
周囲の団員達の肝が冷える。
まるで、蛇に睨まれた蛙のようだった。
その中の一人に、ファイアバグはゆっくりと近付く。
自分に近付いてくる狂気の放火魔を前に、
若いその団員の頬をいくつもの冷や汗が伝い、心臓の鼓動が速度を上げていく。
既に、生きた心地がしなかった。
「…おい。」
「は、はい…!」
「今何時だ?」
「げ、現在は午前9時です。
 ファ、ファイアバグ様がご帰還されてから、7時間ほどが経過…」
「今何時かだけ教えてくれりゃいいんだよ。」
「し、失礼いたしました…!」
「で、何で俺、あいつのコクピットの中で寝ていたんだ?」
「そ、それは…ファイアバグ様がご帰還されてすぐに、
 ヴァイレン・ネメシスのコクピット内でお休みになられてしまいまして…
 だ、団長が、そのままお目覚めまでコクピットの中でお休みになられますようにと…」
「…要するに、俺が帰ってすぐにあん中で寝ちまったから、
 そのまま放っておかれたってわけか…。そうだったか…。」
ファイアバグは寝起きがあまり良くない。
起きた直後は、寝る直前の事を思い出せない時も、度々ある。
「大体わかった。それじゃ。」
「お、お待ちを…、お顔色が優れないようですが、お体の方は大丈…」
「うるせえよ。俺はとっとと部屋に戻りてぇんだ。
 さっさと退け。それとも、消されたいか。」
「ひ、ひぃっ…! も、申し訳ございません! し、失礼しました…!」
顔面蒼白になって謝罪する平団員を尻目に、ファイアバグは基地の格納庫を後にした。


「む…」
基地内にある自室の近くまで戻ってきたところで、
ファイアバグは自室の扉の前に、独り待ち構えている者が居るのを見つけた。
凛とした美しい佇まいの女影。
数少ない女性団員の一人である女剣士・ヴェールの姿だった。
「…目が覚めたか。」
「おはよーさん。この通り覚めてらぁ。」
「昨晩の任務、お疲れだったな。」
「そりゃどーも。生憎だが、まだ少し寝足りねぇんだ。
 そういうわけで、さっさとベッドで横になりたいんで、そこを退いてもらおうか。」
「退く前に、一つお前宛の伝言がある。」
「後にしてくれ。マジでさっさと寝転がりてぇんだ。」
「悪いが、伝え終るまで退く事は出来ない。」
「…何だとテメェ…」
わざとらしく不機嫌そうな顔に(実際、不機嫌なのだが)になると、
ヴェールをじろりと睨みつけ、顔をぐいっと近付ける。
ヴェールは、一切同じた様子を見せる事は無かった。
「そういやぁ最近、色々と不機嫌で溜まっていてな…。
 なんだったら、お前、もしお前がいいんだったら、
俺の「お休みの相手」でもしてもらおうか…。」
そう言って、ファイアバグはヴェールの整ったボディラインの美しい身体を、
舐めるような視線で見渡した。
対するヴェールは、依然無言・無表情のままだ。
「…フン、冗談だよ。」
ヴェールの人間性は、ファイアバグもよく知っている。
彼女の愚直なまでの真面目さと頑固さは、梃子でも動かせない強固な意志を生み出す。
言伝を託すまで、彼女はここを動くことは無いだろう。
それこそ、ファイアバグに焼かれたとしても。
「で、その伝言とはなんだ。」
「本日の時刻18時に、今後の作戦の通達がされる。
 時間までに、オペレーションルームに入室を完了しているように、との事だ。」
「ん…わかった。」
「用件は以上だ。それでは、失礼する。」
「おい、待て。」
「…何だ。」
「誰にその要件を伝えるように頼まれた。」
「…ババヤガン様からだ。」
「ハッ、ハカセも余計な気を回す。
 お前みたいな無口な奴に、メッセンジャーガールを頼むとはな。」
「話は終わりか。では、今度こそ失礼する。」
「おう、お休み。」
ヴェールが去ると同時に、ファイアバグもようやく、自室へと入室する。


「…………くっ…!」
ようやく自室の戻り、すぐにベッドに寝転がって目を閉じたファイアバグだったが、
彼の身体は、安息の眠りに就く事はできなかった。
目を閉じても、闇に浮かぶ、
先程まで愛機のコクピットの中で眠りに落ちていた際に見た、忌まわしき「夢」の光景。
それは、眠りに落ちる事を望む彼の意思を妨げる。
「…なんでだよ…! なんでまた、最近になって…!」
自室のベッドでの就寝を願って戻ってきた彼だったが、
部屋に戻ってきて30分と経つ前に、
彼は室内にあったジパング製の酒瓶一本を片手に、自室を発った。


ファイアバグ。
元はフリーのテロリストで、現在はカメダ軍団に所属する、
世界最悪のテロリストとも目される男。
彼のテロによって命を落とした人間は数知れず、
カメダ軍団に所属する人間の中でも、
最も多くの人命をその手で直接奪った個人ともいえる存在だ。
彼にとってこの世界に恐れるものはなく、
ただ、彼はこの世界を憎み、破壊し、殺戮し、愉しむ。
自らが犯した数えきれぬ殺戮の数々に、彼は一切の罪悪感を抱く事は無い。

ただ、唯一つの殺人を除いて。

彼は最近、同じ夢を何度も見るようになった。
それは、彼の記憶の奥底に封じ込められた、
彼にとっては思い出したくもない、忌まわしい過去だった。

発火能力という異能を持って生まれたファイアバグは、
物心ついた時には、既に周囲の人間達にとって
忌み嫌われ、蔑まれ、そして恐怖される存在になっていた。
そして、実の両親にさえも。

悪夢の内容は、いつも同じだ。
幼い彼に、周囲の人間達はひたすらに恐怖し、憎悪し、
罵声と殺意、ありとあらゆる悪意を向ける。
実の両親からもそれらを向けられ、
遂には息子を手にかけようとする。
死の恐怖を感じた幼い彼は、無意識のうちに「能力」を発現し、
両親は瞬く間に炎に焼かれ、炭化し、崩れ落ちる。
後に残された幼い彼の叫びが響き渡る。
――夢はいつもそこで途切れる。
それは、生まれて初めて彼が犯した殺人。
そして、彼が唯一罪悪感を今も尚抱き続けている殺人だった。

彼以外の誰も知らない、忌まわしく、悲しい記憶。


「んぐ…んぅ…ハァ…ハァ…」
カメダ軍団の秘密基地の数ある、海面に面し、空を仰ぐテラスの一角にて。
瓶の中身を飲み干すと、ファイアバグは無造作に空になった瓶を放り投げた。
その後は、ただ涼しい風を浴びながら、熱量の上昇する身体を涼ませるだけ。
時間がある時に眠れない際は、いつも彼はここでそうしている。
今は一人ここでこうしていたいものだ。
誰とも話をせず、誰の声も聞く事無く。
しかし、彼のそんな望みは叶わない。
「あ! いたいた!」
背後から聞こえてきた声が、
ファイアバグのささやかな今の望みを、もろく打ち砕いた。
「バーにいただいま!」
「…戻ったか、兄弟。」
幼い姿が奔り足でファイアバグに近付いてきたかと思えば、
嬉しそうに、屈託のない笑みでファイアバグに笑いかけた。
今のファイアバグにとって、
ある意味最も会いたくなかった相手かもしれなかった。
ニノ。
「グレムリン」のコードネームを与えられた、
カメダ軍団所属の少年団員だ。
能力の種類こそ違えど、彼もファイアバグと同じサイキッカーであり、
軍団内部でもファイアバグを恐れる人間の多い中、
そんな彼を慕う数少ない人間でもある。
「バーにいも今日帰ってきたばかりだって? お疲れ様!」
「ああ…お前はいつ帰ってきた? 一週前に、任務に出て行ったきりだったな。」
「オレもね、ついさっき帰ったばかりなんだ!
 今回の任務も大成功だったよ! やったよオレ!」
「そうか…それはお疲れだったな。おめでとう。」
「バーにいの方はどうだったの? やっぱり今回も大成功?」
「フン、まあな。」
「さっすがバーにい! やったね!」
無邪気に喜びを示すニノ。
まだ疲れも癒えておらず、不機嫌な様子であったファイアバグも、
ニノと話しているうちに、少し上機嫌になる。
「いつにも増して、嬉しそうだな、お前。
 何か他にもいい事でもあったのか?」
「うん!こっちに戻ってくる前に、ブランシェに寄って来てさ、
 高いけどとってもおいしいケーキをい~っぱい買ってきた(買ってもらった)んだ!
 新メニューのケーキも手に入ったんだよ!
 バーにい、また後で一緒に食べようね!」
「おう、いただくとするよ。…果物も全部残さずに食えよ。」
「わ、わかってるよ…。それとね、ブランシェに寄る前に、
 本当に久しぶりに、オレの家に寄ってきたんだ!」
瞬間、ファイアバグの心中に、動揺が広がった。
表情にこそ表れてはいないが、ニノの発したその一言は、
明らかにファイアバグにとって聞きたくない話題だった。
そんな彼の心の変化に気付けないニノは、嬉しそうに言葉を続ける。
「久々に父ちゃんと母ちゃんに会ったんだけど、
 二人ともとっても元気だったんだ!
 仕事で頑張っている事を話して、いっぱい褒めてもらったよ!」
やめろ。
「だけどね、すごく心配もされたよ。
 …そりゃあ、オレまだ子供だし、子供なのに一人で家を飛び出して、
 世界中飛び回って働いているわけだしね。
 できる事ならもう帰って来てほしいって言われたよ。
 父ちゃんや母ちゃんに心配かけちゃってるのはわかってる。
 心配してもらえたのはすごく嬉しいし、
 オレもたまには、父ちゃんや母ちゃんのところに帰りたいと思う事だってあるけど、
 でも、オレまだこの仕事を頑張るって決めているから!
 心配しないで、オレ、ちゃんと元気に頑張ってるから!って言ってきたよ。」
やめろ。
「バーにい、オレ、これからもこの仕事、頑張るよ!
 オレ、この仕事大好きだし、誇りに思っているし、
 それに、父ちゃんや母ちゃんにも、もっと楽をさせてあげた――」
やめろ!
ニノがそれ以上、言葉を続ける事はできなかった。
倒れたニノの首に、ファイアバグの手が伸びていた。
その時、ニノは初めて見た。
敵対者ではなく、自分自身へと向けられた、怒りと憎しみの感情が宿ったその表情を。
「やめろ。それ以上しゃべるな。」
「バ、バーにい、どうしたの…な、何を怒っているの…?」
「しゃべるなと言っている。黙ってろ…!」
「こ、こわいよ…バーにい…」
怯えきった表情のニノの目元には、うっすらと涙が滲んでいた。
「今更何を言ってやがる…! 俺は元々怖ぇ人間だよ!
 お前だって知っているだろ…!
 何千、何万、いや、それ以上の数の人間を焼き殺した人間さ!
 悪魔だよ! 人の形をしたバケモノ! それが俺だ!」
「ち、違うよ…。バーにいは悪魔でもバケモノでもないよ…。」
「……」
怒りと憎しみの形相のままに怒鳴りつけていたファイアバグの手が、
僅かに強張った姿勢を緩める。
「バーにいは、あんなにいっぱいオレをかわいがってくれたじゃないか…。
 確かに、怖い人だとは思うけど…でも、悪魔やバケモノなんかじゃないよ…。
 悪魔やバケモノだったら…優しくなんてしてくれないよ…。」
怯えきった表情で、弱弱しい声で、ニノはゆっくりと、言葉を紡ぐ。
彼の言葉を聞き終えると、ファイアバグはゆっくりと、ニノの首にかけていた手を放した。
「…悪いが、今は一人にしてくれ。」
「わかったよ…。ごめんよ…ごめんよ…バーにい…本当に、ごめんよ…」
何度も何度も、ニノはファイアバグに謝ると、テラスを後にする。
「………何をやっているんだ、オレは…。
 何の非も無ぇのに、アイツに当たり散らすなんてよ…。」
一人残されたファイアバグの心中に、苦いものが残る。

自身と同じ「異能の者」でありながら、
帰る場所があり、自身と暖かく迎えてくれる家族がいるニノ。
自身とは正反対な彼のその境遇に、
ファイアバグは嫉妬にも近い感情を覚え、
無意識のうちにニノに対しても憎悪に近い感情を抱く事もあった。
だが、同時に、何の非も無いニノに当たり散らした行為に、
後悔にも似た感情を覚えるファイアバグの姿もそこには在った。

多くの殺戮を繰り返した大量虐殺者。
その彼も、後悔の感情を完全に忘れ去ってはいなかったのだ。
そして、自身を慕う者に理不尽な怒りを向けた事への後悔を覚える心…
親しい者への、親愛の情も、彼はまだ失っていなかった。





同日、軍団長のカメダと、参謀のチャンションより、
次なる作戦の内容が通達された。
近年、国内である新種の鉱物が発見され、
その鉱物を用いた新エネルギー産業の活性化により、
ネグロにも迫る勢いで急成長を遂げた某国。
国力は急成長を遂げているものの、軍事力は決して強大ではないその国は、
カメダ軍団の標的となっている国家の一つだった。
チャンションの弄した策によりその国は近隣諸国と紛争状態に陥っており、
現在も、国境付近で戦闘が継続して続いている。
その国の最大規模のエネルギープラントの奪取。
それが、ファイアバグの率いる部隊に下された指令だ。
既に裏工作により、状況はより、カメダ軍団にとって有利な方向へと動いている。
準備は整っていた。
唯一懸念する存在は、各地で幾度となくカメダ軍団を阻む、
ファッティホエール号を中心に集う空族達の存在だ。


「なるべく…そう、最小限の被害で、エネルギープラントを制圧してもらいたい。」
「それはどちらの被害をだ?
 味方の方か? それとも、エネルギープラントの方か?」
「…両方、だ。」
「ちっ、めんどくせぇ。」
苦々しく表情を歪ませるファイアバグに対し、
チャンションは僅かに不快な感情を含んだ眼差しを向けた。
「…破壊するなら侵攻を阻む敵の戦力のみにしろ。
 無駄に味方の戦力も削られてはたまらんからな。」
「へいへい。わかってまさぁ。」
「…貴様、何度同じ返答をして、
 その後何度無駄な破壊とフレンドリーファイアを繰り返した…?」
わざとおどけたように返答するファイアバグの様に、
チャンションは不快感を抱くのを禁じ得なかった。
「フン、先生、あんたに言えた事か?
 勝つための策略にありとあらゆるものを利用するあんたにしては
 随分とお優しい事を言うものだなぁ?」
「貴様のように無駄の犠牲や破壊を出すような策を用いたつもりはないが?
 我輩の望む破壊や犠牲は、全ては未来の為に、革命の為に必要なものだ。」
「フン。」
付き合っていられるか、とばかりにファイアバグは踵を返した。
「どこへ行くつもりだ?」
「寝る。作戦開始時刻の直前まではお休みさせてもらうぜ。
 満足に寝ちゃいねぇんだ。」
振り返ることなく、そう言って退出する。
「…所詮は獣か…。」
一人残されたチャンションは、忌々しげに吐き捨てた。

「ケッ、何が未来だ。革命だ。その為に必要な破壊と犠牲だ。」
吐き捨てているのは、ファイアバグも同じだった。
「壊し、殺すのに違いは無ぇんだろ。
 所詮、革命なんざ、殺すしかねぇんだよ。」
尤も、未来も、革命も、俺にとってはどうでもいいものだがな。
ファイアバグは、そのどちらも求めていない。
ただ、壊し、殺す。
彼が望むのは、それだけだ。





「…行くか。」
作戦決行日当日。
出撃時刻を前に、ファイアバグは酒を一本飲み干したところで、部屋を出た。
気分は最悪だ。
また、あの夢を見た。
湧き起こる怒りと破壊衝動は収まらない。
チャンションの指示は、おそらく今回も完全に果たされる事は無い。

「ん…?」
基地の滑走路に向かう途上の通路。
彼の行く手を、一つの小さな影が待ち受けていた。
ニノだ。
「…何の用だ?」
不機嫌そうな声。
先日のことを思い出し、内心少し気まずい気分だ。
「バ、バーにい、この間の事は、ゴメン…。」
「あー…別に謝んなくてもいいぞ。
 お前何も悪くないからな。俺の方こそ、悪かったな。」
そう言ったところで、自身の言動に驚き、戸惑う。
他者に謝罪の言葉を述べる事を、どれだけ忘れていたのだろう。
「今から、任務なんだよね?」
「ああ…」
「あ、あのさ…、この間買ってきたケーキなんだけど…
 オレ、まだ一つも食べていないんだ…。」
「ハァ? もう買って何日も経っているんだろ?
 早く食わねぇとマズくなるぞ。」
「いや…オレ、バーにいと一緒に食べたかったから…。
 オレも今から任務で数日間ここを空けるんだけどさ…
 また今度、一緒にケーキ食べてくれない…?」
「…何日後になる…。大体そんなに日数が経過したら、相当マズくなっちまうんじゃ。」
「大丈夫! バーねえが裏ワザを教えてくれたんだよ!」
「何の裏ワザだ…。まぁ、いいぞ。」
「ホント!?」
少し暗く沈んでいたニノの表情が一転、ぱぁっと明るく輝く。
「ホントにいいの!?」
「ああ、いいぞ。ちゃんと付き合ってやる。」
「ホントだね! 約束だよ!」
「ああ、ああ。そろそろ時間だから退いてくれ。
 急がにゃならんくなる。」
「わかったよ。 約束だからね! バーにい!」
「おうおう。んじゃ。」
「頑張ってね! バーにい!」
ファイアバグの後ろ姿が見えなくなるまで、ニノはずっと手を振っていた。

「まったく、あのガキは…」
呆れたように呟きながらも、
ファイアバグは、少し不機嫌だった気分が、少し良くなったような気がした。





傾き行く陽の光を浴びながら、
ヴァイレン・ネメシスを中心としたカメダ軍団の部隊は、
標的であるエネルギープラントを目指して飛行を続けていた。
エネルギープラント近隣に待機している軍勢は、大した数にも満たなかった。
今も尚、某国と隣国との紛争状態は継続している。
この程度の戦力など、ヴァイレン・ネメシス一機でも殲滅は容易だろう。
「彼ら」が、この戦闘に介入さえしなければ。


「チッ。」
目標のエネルギープラントまで後僅かと迫ったところで、
レーダーに幾つもの機影が確認されたのを確認し、ファイアバグは舌打ちした。
間違いなかった。
邪魔で仕方ない、例の「彼ら」だった。
視力のいい彼は、いち早く、「彼ら」の存在を肉眼で捉えた。
鯨を思わせる外観の航空母艦。
そしてそれを中心に展開する、いくつもの戦闘挺。
幾度となく自分の前に立ちはだかった、「彼ら」だった。
「クジラどもが…」


眼前に迫る「赤き暴力」を前に、
ユウ達の闘志は加速的に燃焼していく。
幾度となく立ち塞がった強敵・ファイアバグ。
彼によって引き起こされた数多の破壊と殺戮。
眼前で彼によって引き起こされたいくつもの惨劇と悲劇。
それらを知る彼ら全員は、ファイアバグに対して激しい怒りを抑える事は出来なかった。
彼らにとって、ファイアバグはこの世界から排除すべき敵でしかなかった。
「ファイアバグ…!今日こそ、必ず…!」
怒りに満ちた声で、ユウが力強く呟く。

「殺し過ぎる。 やりすぎたのさ、貴様は。」
真紅の戦闘挺『レッドドラゴン号』のコクピットよりヴァイレン・ネメシスを見据えて、
レッド・ボイラーは静かに呟く。
ファイアバグを鎮めるべく、彼もこの戦いに参戦する。
自らの望むままに破壊と殺戮を延々と続けるファイアバグの存在は、
彼にとっても許しがたい存在だった。
そう、「過ち」を犯し続ける彼の存在は、絶対に。

「ファイアバグ…!貴様だけは…!」
そして、彼らの中でも特にファイアバグへの強い怒りを燃やす、
先陣を切りゆく白き戦闘挺のパイロット。
かつて友人達をファイアバグのテロによって失った
軍の元エース・スウォン。
空に還った「白き閃光」は、「火消しの風」となりて、空を切る。


ファッティホエール号には様々なパイロットが集う。
空族、軍の元エースなど、優秀なパイロットが数多く。
その全てが、火を消さんとする。
そう、破滅をもたらす「放火魔」の火の、その火の元を断たんと。


「空族風情共が…! 相も変わらず正義の味方気取りしやがって…!」
怒りの感情に囚われ、「放火魔」は咆哮する。
「選んで殺すのが、そんなに上等かよっ!!」
そして、空に暴力の嵐が吹き荒れる。


海上に立ち込めた雲に、いくつもの爆発の炎が反射する。
それは、沈みゆく夕陽の色と併さって、空を、雲を、より鮮やかに染めた。
ファイアバグは、いつもにも増して猛り狂っていた。
ただ、目の前の空族達を沈めようと、圧倒的な暴力を奮い続けた。
炎。炎。炎が空を包む。
戦闘が続く中、いくつもの機体が焼かれ、落ちてゆく。
当初はカメダ軍団側が戦線を有利に進めていたが、やがて、戦局が変わり始める。
カメダ軍団側の多くの航空戦力が徐々に失われていき、
たとえヴァイレン・ネメシスがいくら強大であろうと、
目的であるエネルギープラントの制圧が、現有戦力では厳しくなってきたのだ。
彼らの抵抗は、ファイアバグやチャンションの想定を、遥かに超えていたのだ。

『撤退しろ! ファイアバグ! 部隊を引き上げさせろ!
 このままでは目的の達成もままならん!』
「撤退だと!? ふざけるな! 俺は撤退するつもりはない!」
『貴様! このままだと死ぬぞ!』
「死なねぇよ! 今日という今日は、こいつらを皆殺しにしねぇと気が済まねぇんだ!」
『貴様! 正気か!?』
「俺がいつ正気だった事がある! 俺は狂っているさ! いつだってなぁ!
 通信切るぞ! 戦いに集中できないからなぁ!」
『ま、待て!』
一方的にチャンションからの通信を切ると、
ファイアバグは再び眼前の敵達に敵意に満ちた視線を向けた。
幾度となく撥ね退けておきながら、未だに仕留め損なっている、
目障りな存在に向けて。
憎いこの世界を愛し、守ろうとする「正義の味方達」に向けて。
「全員、今日こそ灰にしてやる…!」


だが、いくら「暴力」が強大であろうと、
いくつもの「勇気」は、それに屈する事は無かった。
怨敵を追い詰めた彼らの勢いは、留まる事は無かった。
ファイアバグは怒りに我も痛みも忘れて、独り戦い続ける。

やがて、その時がやってくる。
孤立無援となり、満身創痍となったヴァイレン・ネメシスに向けて放たれた、
スウォンの搭乗するベルーガの銃撃。
それは、鉄壁を誇ったヴァイレン・ネメシスの機体を撃ち抜き、
ファイアバグの身体をも撃ち抜いていた。
燃え上がるヴァイレン・ネメシス。
「全てを焼き尽くす暴力」は、炎上しながら、ゆっくりと墜ちてゆく。
翼をもがれた断末魔。
墜ちゆく機体の各所から、いくつもの爆発がのぼる。
「ク…ククク…ヒャハハハハハ…!…死ぬ時は…こんなものか…」
殺しもする。殺されもする。
通信でチャンションに「死なねぇ」と大口を叩いてはいたが、
ファイアバグは、いつ自分が死んでもおかしくないと思っていた。
昔から、何度も死にかけた事などあったのだ。
たまたま今まで生き延びる事が出来ただけで、
今日こそ死ぬ番が回ってきた。
勝ったのは彼ら。負けたのは自分。
戦場には、生きる奴と死ぬ奴がいるだけ。
今回、自分が死ぬ奴になった。
それだけだ。
「まぁ…悪魔やバケモノには相応しい死に方か…」
燃え上がるコクピットの中で炎に包まれながら、
死を目前にして、先程まで怒りにまかせて猛り狂っていたというのに、
ファイアバグは冷静だった。
死んだら、どうなるのだろうか。
何もない「無」へと還るのか。
地獄に堕ちるのか。
それとも、自分が殺してきた者達と同じ所へ行くのか。
そんな事を考える余裕すらあった。
「親父、お袋…あんたらは…俺を許しちゃくれねぇだろうな…。」
そして、自らが殺したことに、唯一罪悪感を持っている両親の事を想う時間も。
「ああ、そういやぁ…悪ィな、兄弟…。ケーキは一緒に食えそうにねぇ…」
最期に浮かんだのは、自分を唯一慕ってくれた、幼い少年の事だった。
それを最後に。
轟音。
一際大きな爆発と共に、稀代の殺戮者・ファイアバグの身体は、
ヴァイレン・ネメシス共々、爆発の中に四散し、消えた。
彼の魂が安らかだったかどうかは、定かではない。

全てを焼き尽くす炎は、ショウカされた――。





「馬鹿者が…」
「信じられないYO…。まさか、彼があんな最期を迎えるなんて…。」
「残念です…。惜しい人を亡くしました…。」
ファイアバグ、戦死。
その報に、ババヤガンとスカインは沈痛な面持ちを浮かべ、
彼を内心嫌っていたチャンションも、その報にはショックを禁じ得ない様子だった。
「どうするの? あいつが死んじゃったら、色々と面倒なことになるんじゃない?」
「問題は無いでやんす。
 奴が欠けたところで、まだ充分に手はあるでやんす。
 まぁ、奴が使えなくなってしまったのは残念でやんすけどね。」
カメダは大した動揺も見せず、ヨミチにそう答えた。
「しかし、彼らしく、それでいて彼らしくもない最期だったね。」
ジオットの声には、どこか冷笑するような響きがあった。

カメダ軍団はエースの一人を失った。
これより軍団は、更なる新たな戦力を強いられる事になる。





「う、嘘だ…」
護衛からの報告に、愕然とした表情で、力なくニノが呟く。
「う、嘘だろ…? なぁ、今言ったのって嘘だろう…?
 冗談だろう…? そんな冗談、子供のオレでも騙されないぞ…。
 なぁ、冗談だろ…? 冗談だって言ってくれよ!」
「残念ですが…冗談ではありません…。」
力なく、重苦しい表情で、護衛は声を押し出した。
「嘘だ…嘘だ…バーにいが負けただなんて…
 バーにいが死んだなんて…そんなの…嘘だ…嘘だ…
 嘘だああああああああああああああああああああああああああ!!!」
かつてない悲しみと怒りが、幼い少年の心を包む――。


一つの憎しみが終わり、新たな憎しみが生まれる――。





No.78

■捏造祭りSS『居場所』 投稿者:無頼 投稿日:2012/03/22(木) 19:45

「ど、どう、かな…?」
澄み切った空のような美しい色の、水色のワンピースを纏った少女が、
やや緊張した表情を湛えて、くるりと回ってみせる。
「すごくかわいいよ! 似合ってる!」
水色のワンピースを纏った少女に対し、
彼女とほぼ同じ年齢であろう少女から、称賛の声が贈られる。
「うにゅー、確かにかわいいけど…そうね…」
称賛の言葉を贈った少女の傍らに立つ、
もう一人の若い、艶っぽさと幼い雰囲気を共に色濃く纏った女性が、
じっくりと水色のワンピースを纏った少女の姿を見渡すと、
彼女はワンピースの少女の、ポニーテールに束ねられた髪をほどく。
ワンピースにも負けないくらいに、
それ以上に美しい青色の髪がふぁさりと広がり、
ポニーテールの時とはまた違った可憐な美しさ覗く。
「わぁ…」
先程称賛の声を贈った少女は、新たに更なる可憐な姿を披露した友人の姿に、
思わず感嘆の声を上げた。
「あたしはこっちの方がとってもかわいいと思うな。…ユイはどう?」
ほどいた髪をとかしつけたところで、
彼女――サクラは、青色の髪の少女――ユイを鏡の前に立たせた。
「ちょっと、不思議な感じがするな…」


世界でも有数の大都市・ブランシェ。
今日も平和を謳歌するこの街で、
空族のクロエ・ユウと彼と共に往く仲間達は、束の間の休日を楽しんでいる。
各々のメンバーがそれぞれの事情や目的で休日を過ごす中、
その内の女性数人が、この街の一角にあるブティックの一店にて、
服のショッピングを楽しんでいた。


「いつものポニーテールもとってもかわいいと思うけど、
 ワンピース姿には、あたしはこっちの方が似合うと思うな~。」
おしゃれが大好きで、
ファッティホエール号に集う仲間達の中でも、特に多く衣装を持つサクラ。
彼女は自分がおしゃれをするのも勿論だが、
おしゃれをさせるのも大好きだ。
「サーヤは、どっちが似合うと思う?」
ユイは自身に称賛の声を贈った友人のサーヤに対して、
そう問いかけて意見を求める。
「あたしはサクラの意見に同意かな。
 ワンピース姿なら下ろしていた方が合っていると思う。」
「そ、そう…。」
照れ笑いを浮かべながら、ユイはもう一人、意見を求めたく、
そのもう一人の仲間へと、意見を求める。
「マリンの意見も、聞きたいな…。」
「…俺は…」
静かに様子を見守っていたもう一人の仲間、マリンは、
少し悩みむような素振りを見せつつも、
「…そう、だな。俺もサクラとサーヤの意見に同意するよ。
 下ろした姿も、とっても素敵じゃないか。」
柔和な笑みを浮かべて、マリンは同意の意見を述べた。
「じゃ、じゃあ、これを着る時は、髪、下ろしてみようかな…。」
「にゃはは。二人もこう言ってくれたし、それがいいと思うよ。」
依然少し照れた様子のユイに対し、サクラはそう笑いかけると、
もう一度ユイの身体を改めて見渡し、じっと顔を覗き込む。
「でも…他にもやっぱり、
ちょっとセクシーな衣装も捨てがたいと思うんだけどな~。
もっと、露出の多いような…。フェイちゃんも言ってたけどね…。」
「そ、そういうのはもう結構!」
「うにゅー、残念だな~。絶対似あうと思うんだけどな~。」
以前のある出来事の事もあり、ユイは即座にサクラの提案を拒否してしまう。
「サーヤはどう? よかったら、何かセクシーなの着てみる?」
「うん! 着てみる!」
「最近ずっと思っていたけど、サーヤ、最近すごく色っぽくなったね。」
「ユイもそう思ってくれたんだ…。ありがとう。
 …サクラのおかげなの…。サクラがあたしを女にしてくれたの…。」
視線を一度サクラに向けると、サーヤは目を瞑り、頬を赤らめた。
「うみゅ~? もしよかったら、ユイもあたしがもっと一人前の女に
 し て あ げ よ う か ?(はぁと)」
「い…いや、あの…ご、ごめん…! 
 気持ちは嬉しいけど、私は大丈夫だから!」
艶のあるセクシーな、そしてどこか獲物を狙う肉食獣にも似た視線を感じて、
ユイは慌てて、サクラの申し出をお断りする。
「うにゅ~、またまた残念…」

そんな三人の様子を見守りながら、マリンは一人、静かに微笑んでいた。
胸に穏やかな風が流れ、改めて感じる。
平和だな、と。

恩師のシュネーをカメダ軍団によって亡くし、
彼女の仇討の為にファッティホエール号の仲間に加わったマリン。
当初は他の仲間達と距離を置き、積極的に関わり合う事も無かった彼女だが、
今では仲間達と打ち解け、皆と一緒に穏やかで楽しい時間を過ごす機会も多くなった。
シュネーと出会う前の辛い過去も自ら打ち明け、
仲間達は改めて、マリンの全てを受け入れ、
マリンと仲間達の心は、距離は、更に近いものとなっていた。

この日、マリンは初めて、同性の仲間達と新しい衣装の購入の為に、
街のブティックを訪れていた。
今までいつも基本的に同じデザインの、
顔以外の肌を見せないような装束ばかりを着こんでいたマリン。
その彼女が、初めて、同性の仲間達と一緒に、
一緒にブティックに行きたい、と、そう申し出た。
それは、仲間達にとっても、とても嬉しい話であった。
現在、マリンはこのブティックに、
ユイ、サーヤ、サクラの三人と一緒に訪れていた。


「よし! 今度はこれでクロエさんにアタックしよう!」
「あたし達はセクシーさで勝負だね!
 ユイ、あたし達も絶対負けないつもりだよ!」
「だ、だから…! 私とクロエ君は幼馴染で、ずっと付き合いは長いし…
 友達として、仲間として彼の事は…好きだけど…
 そ、そういう好きというのとは…まだ違うから…!」
「みゃはは、またまた照れた事言っちゃって…。
 お待たせ、マリン。ごめんね、時間かかっちゃって。」
「気にしなくていいぞ。最後でいいって言ったのは俺の方だからな。」
ユイ、サーヤ、サクラの三人の新しい服探しが終わり、
いよいよ、マリンの試着の番。
「任せて! マリンにとっても似合う服、しっかり探し当てて選んであげる!」
「ありがとう。それで…一つリクエストがあるんだ。」
「うみゅ? どんな?」
「…サクラやサーヤが選んだような、
 少し露出のあるような…男性の目を引けるような感じのをお願いしたいんだ。」
「えっ!?」
「マ、マリン…!?」
マリンのその言葉に、三人の表情に動揺が現れる。
マリンが肌の露出を殆どなくした衣服を着続けていた理由。
それは、彼女のシュネーと出会う以前の、「過酷極まりない過去」に起因していた。
三人も大きなショックを受けた、マリンの過去。
その彼女が、自ら進んで、露出のある、男性の目を引けるような服を望んでいる。
三人が衝撃を受けるには、充分すぎた。
「マリン、本当にそんな感じの服を選んでいいの…?」
「ああ、お願いする。あ、ただ胸から下の…
お腹が露出するようなのや過度な露出のはちょっと勘弁な。」
「うにゅー、わかったわ。じゃあ、ちょっと来て。」


「お待たせ…どうかな?」
やがて、マリンとサクラが試着室に消えてからしばらくした後、
二人は試着室からユイとサーヤの前へと戻ってきた。
少し照れくさそうな表情で戻ってきたマリンの姿に、
ユイとサーヤは、一瞬驚きとも感動ともとれるような表情で固まり、
その口から感嘆の感情を含んだため息が漏れた。
美しいプロポーションのとれた身体を鮮やかに包み、
胸元と両手を露出させた、美しい碧色のドレス。
美しさの随所にセクシーさも盛り込まれたそのドレスは、
それは、マリンの生まれ持った女性としての美しさを、魅力を、
十二分に引き立てていた。
「綺麗…。」
「マリン、すごいよ…。すごく綺麗だよ…!」
「ありがとう、二人とも。 サクラにもそう言ってもらえたよ。」
「本当の事だもの。 綺麗じゃないわけがないわ。
 (うみゅー、おまけにすごくセクシーじゃない…。
このセクシーさ、あたしに匹敵するレベルだわ…!)」
ドレス姿のマリンを改めてまじまじと見つめながら、内心唸るサクラ。
「さっきユイも言っていた事だけど、俺も同じ気持ちだ。
 本当に、不思議な気持ちだ…。
 なんだか、俺が俺じゃないみたいだよ…。」
(((かわいい…)))
ほんのりと頬を染めてそう言葉を続けるマリンの姿は、
同性であるユイやサーヤ、サクラの目から見ても、
はっきりとかわいいと思えるものだった。
「うにゅー、でも、本当にビックリしちゃったわ。
 まさかこういうタイプの服を選んでほしいなんて言われるとは思ってなかったもの。」
「…俺も、着てみたくなったんだ…。」
「…どうして?」
「どうしてって…それは…その…」
「…もしかして、恋?」
話が進むにつれて一層頬を赤くし、口ごもりも進行していくマリンに対して、
サーヤが爆弾発言を放った。
「「恋!?」」
「!」
ユイとサクラもハモって発せられたキーワードを繰り返す。
同時に、マリンの顔にもはっきりと動揺の色が表れる。
「うにゅ? マリンさっきよりも顔が赤くなっているよ?」
「サ、サーヤが変な事を言うからだ…。」
「もしかして、図星だった?」
「い、いや……違う…。どうして俺があんな研究バカと…」
否定しようとする彼女の声は、弱弱しいものだった。
いや、そもそも聞いていないことまで答えているような。
非常に小さく、弱弱しい声だったが、
地獄耳のサクラは、それを聞き逃す事は無かった。
瞬間、にまっとサクラは微笑んだ。
「あっれ~? 誰もパーシヴァル君の事なんて言っていないけど~?」
「!? ど、どうしてそこであいつの名前が出てくるんだ!?」
激しく動揺した様子を見せるマリンの姿に、三人は悟る。
図星だったんだな、と。
そして同時に、安心と、嬉しさが、三人の心に広がる。

三人にとっても、「彼」の存在が思い当たるのは自然だった。
ずっと、「彼」と彼女の関係が気になっていたから。
関係は、ずっと進んでいたようだ。
そう、いい方向に。

「にゃはは、この一着だけじゃ足りないでしょ!
 まだまだ他にも選んであげるわよ!」
「だ、だから…俺はあいつに、そこまでそういう気があるわけじゃ…!」
サクラに引っ張られて、マリンは店の奥へと再び姿を消した。
その姿を、ユイとサーヤは微笑ましそうに見送った。
(やぱり、恋って素敵なんだね…)
声に出さずに、ユイは心中で、そう呟いた。


そう、本当に平和だった。
そして、はっきりと感じる。幸せだ、と。
だが、同時に一つの不安も、彼女の心中に広がっていた――。

この後、四人はそれぞれの用事から戻ってきた他の女子メンバーと合流。
街での幸せなひと時を、皆で楽しく過ごした――。





その日の夜、ファッティホエール号の仲間達の宿泊するホテルにて。
マリンはそのホテルのとある一室の前に居た。
その部屋に宿泊している人物に話があり、その為にここに来たのだ。
その人物は用事の時間が長くかかったので、
まだホテルに戻ってそれほど時間がかかっていなかったので、
その人物が戻ってきてある程度時間が経ったところで、
彼女は今こうして、彼の部屋を訪れようとしていた。
コンコン。
「俺だ。お邪魔してもいいか?」
「どうぞ。」
了承の返事が聞こえたのを確認すると、マリンはドアを開けて、室内へと足を踏み入れた。
「お疲れ。」
「よぉ、おつか……」
部屋の宿泊者は、軽く挨拶をするも、部屋に足を踏み入れた彼女の姿を見た瞬間、
驚いた表情になり、彼女の姿をまじまじと凝視した。
「彼」の視線に、僅かにマリンの頬が赤くなる。
「…どうした?」
わざと平静を装うが、内心は、彼女も非常に緊張していた。
「い、いや…どうしたんだ、そのドレス。」
「今日街で買ってきた。サクラに選んでもらった。」
「そ、そうか…。綺麗だぞ、すごく。良く似合っている…。」
そう答える「彼」――パーシヴァルもまた、同じだった。
表面上は平静を装っているが、
彼もまた、内心ではどこか動揺した、緊張した様子だった。
「…なあ?」
「何だ?」
「どうして、そのドレス…」
パーシヴァルも、マリンの過去のトラウマ、そして肌を露出させない、
「女性らしさ」を意識しない服ばかりを着ていたことを、よく知っている。
仲間達の中で、彼女の最も近いところに居るのは、彼なのだから。
「着たくなったんだ。俺もこんなドレスを。
 気に入ったよ、これ。選んでくれたサクラには感謝してる。
 このドレス姿を褒めてくれたみんなにも。」
今まで殆ど着用する事のなかった、女性らしさを強く意識したドレス姿。
自身のそんな姿をもう一度見渡してから、
マリンはパーシヴァルに向けて、静かに微笑みかけた。
「それに…お前にも、な。」
「俺に…?」
「こんな服を着たいと思うようになったのは、ある意味お前のおかげだからな。」
「…わざわざ、見せに来てくれたのか?」
「…ぅん…まぁ、今言ったように、ある意味お前のおかげでもあるからな…。
 他に数着購入したんだが、これが一番気に入ってな。
 他のは、また今度な。一応、どれもお前の好きそうなのだと思う。」
「あ、ああ…、楽しみにしてる…。
 …って、おい、それってまさか…わざわざ俺の好みにも合わせるように選んだのか!?」
「…さて、な…。」
驚いて問いかけるパーシヴァルに対し、マリンは回答をはぐらかす。
尤も、その返答と様子では、殆どはぐらかしにもなっていない気もするが。
「なぁ、今日買い物以外にも何があったんだ?
 買い物の事も含めて、よかったら話してくれないか?」
「ああ、今日はまずな…」
そして、マリンは話し始めた。
今日朝起きてから、仲間達とどのように楽しく時間を過ごしたのか。
どんな楽しい出来事があったのかを。


「……とまぁ、そんな一日だった。」
「そうか。今日一日、とっても楽しかったみたいだな。」
「ああ。」
その短い返事の中に、たくさんの喜びの気持ちが詰まっている。
そう、本当にとても楽しかった。
「それを聞けて、俺も嬉しい。ありがとよ、いい話が聞けた。」
「礼を言わなきゃいけないのは、俺の方だな。
 本当にありがとな、いつも助けてくれて…。
 今こうして皆と楽しく時間を過ごせるのも、
 皆のおかげで、お前のおかげでもあるよ…。」
「…照れるな…。」

恩師のシュネーを目の前で殺されてから、
マリンの生きる目的は、ただ「復讐」を果たすため、のみとなった。
それまで奴隷にされて地獄のような日々を助けてくれて、
長く忘れていた幸せな生活を、愛情をくれたシュネー。
その彼女を身勝手な目的の為に殺害したカメダ軍団を、
マリンは許す事などできるはずがなかった。
恩師の復讐さえ果たせれば、自分はもうどうなってもいい。
一時そこまで思い詰めていた彼女の心を救ったのは、
パーシヴァルであり、そして、ファッティホエール号に集う仲間達だった。
あたたかい仲間達との交流の中で、
暗く悲しい感情に囚われた彼女の心は救われ、
続く戦いの中であっても、
彼女の心は、今はっきりと、仲間達との幸せを感じていた。
そして、いつもすぐに助けてくれたのは、パーシヴァルだった。
まだシュネーが生きていた頃に、初めて彼と出会った時から、
彼はいつも、マリンを助けてくれた。
敵との戦いで窮地に陥った時も。
マリンが一人で悩み、苦しんでいた時も。
マリンが心に深い傷を負った時も。
いつも。いつも。
傍には、パーシヴァルがいた。

そして、昼間にサクラ達に対してあのように返答はしたが、
マリンは、今ではパーシヴァルの事が――。


「…なぁ、何か、悩んでいるのか?」
「な、何でだ?」
「顔にそう書いてある。わかるんだよ、俺には。…話してみろよ。」
「…相変わらず、鋭いな、お前…。」
パーシヴァルは女好きではあるが、恋愛感情に関しては妙に鈍感なところもあった。
だが、人の心の変化には機敏だった。
そして、マリンはそんな彼を強く信頼している。
今では、彼に自身の悩みを、素直に打ち明けられるほどに。
マリンの表情から、笑みが消える。
「…お前は、これからもずっと学者を続けていくんだよな…?」
「ああ、勿論。今は何よりファントゥームに辿り着いて、
そこに住んでいる生き物たちを発見して研究したい。
だけど、世界は広い。
この地球上で、人間の目に触れた生き物は、ほんの一握りなのかもしれない。
まだ見つかっていない生き物だってきっとたくさんいるはずだ。
それに、既に発見されている生き物だって、わからない事が山ほどあるんだ。
俺は、この地球に生きる生き物の事をもっと知りたい。
まだ誰も知らない事を、もっと確かめたいんだ。
だから、俺はこれからも学者を続けていく。
ファントゥームを巡る戦いが終わって、
ファントゥームの生き物の研究も終わって、
ファッティホエール号のみんなと別れた後も、
死ぬまでずっと、な。」
そう語るパーシヴァルの様子は、非常に生き生きしていた。
彼は本当に、自身の生き甲斐に強い誇りと、大きな夢を持っている。
その事を、改めて感じる。
「…俺は、未来が怖いかもしれない…。」
「…未来が…?」
マリンの表情に、影が落ちる。
「…俺、今お前と…ファッティホエール号のみんなと一緒に居るのが、すごく楽しい。
 正直に言うと、戦いはやっぱり大変だし、辛い。
 泣きたくなることだって、いっぱいあるよ。
 だけど、みんなと過ごせる時間が、本当に楽しい。
 家族が生きていた頃にも、シュネー先生が生きていた頃にも負けないくらい。
 はっきり言うよ。今、俺幸せだよ。」
「マリン…。」
一度微笑みかけたマリンだが、再びその表情から笑みが消える。
「だけど、いつかは、全てが終わったら、みんな、離れ離れになるんだよな…。
 その時が来るのが、すごく、怖いんだ…。
 …情けないよな、俺なんかよりもっと辛い過去を背負って、
 それでも元気に頑張っている仲間だっているのに…。」
「…お前だけじゃないさ。
 お前と同じような悩みを持っている奴は、他にもいる。
 正直に言うとな、俺もその時が来るのは怖いと思う事もある。
 せっかく仲良くなった仲間達と離れ離れになるのは、誰だって寂しく思うさ。」
「……。」
「けど、必然な出会いもあれば、必然な別れだってある。
 別れの後も、前に進めるさ。前に進めるよう頑張るさ。
 それに、その別れが永遠とは限らないぜ。
 きっと、別れた後も、みんなとはいつかまた出会えるって、俺はそう信じている。」
「…お前は、強いな…。
 だけど、俺はやっぱり別れが怖い…。もう、味わいたくないよ…あんな想いは…。」
僅かに、マリンの目元が潤み、光るのが見えた。
「っ!? すまん…。」
家族との永遠の別れ。孤児院の仲間達との別れ。恩師との永遠の別れ。
マリンは、あまりにも辛すぎる別れを幾度も経験してきた。
そして、幸せを打ち砕かれるその時も…。
故に、彼女は他者よりも、ずっと恐れていた。
大切な人との別れを。大切なものを失う事を。
謝罪するパーシヴァルに、マリンは静かに優しく微笑みかける。
「いや、気にしないでくれ。お前は何も悪くないよ。
 …ありがとう、また相談に乗ってくれて…。」
そう言って、マリンは立ち上がる。
「夜遅くに失礼したな。もう部屋に戻るよ。
 他の服は、また今度見せるから。じゃあ、おやすみ…」
そう言い残し、部屋を後にしようとするマリンだったが、
彼女は部屋を立ち去る事は出来なかった。
パーシヴァルが、マリンの身体を背後から抱き寄せていたからだ。
「…待てよ。まだ俺からの話は終わってないぞ。」
「……」
後ろから抱き締められて、マリンは羞恥心と、そして嬉しさに、
ほんのりと赤くなった頬は、やがて加速的に熱を増していった。
「さっきも言ったよな。みんなと別れる事になった後も、学者を続けるって。
 だけどな、研究も、一人じゃ大変な時もあるんだ…。」
「え…?」
「よかったらでいい…。
 戦いが終わった後に、俺の助手になってくれないか…?
 お前に、色々と手伝ってほしい…。
 そして……俺と一緒に居てほしい。
 絶対に、もうお前を独りにしない。何かあったら、絶対に俺がお前を守る。」
「!」
その言葉が何を意味しているのか、それがわからないマリンではなかった。
嬉しさで、目頭が熱くなってきた。
そして、とめどなく涙が溢れてきた。
「俺なんかで、いいのか…?」
涙溢れるマリンの顔を見つめて、はっきりと、力強くパーシヴァルは「その言葉」を放った。
「お前でいいんじゃない。お前がいいんだ。」
「あり…がとう…」
涙に濡れた顔で、マリンは微笑んだ。
「マリン…」
「んっ…」
そして、二人の影が静かに重なり――

その夜、二人は、身も心も結ばれた――。


翌朝、二人が同じ部屋から一緒に起床して出てきたところを仲間達に見られて、
色々と幸せな騒ぎが起こるのだが、それはまた別の話。





No.92

■『新しい幸せの日々へ…』 投稿者:無頼 投稿日:2012/03/23(金) 22:49

今宵も、空には月が、数多の星々が輝く。
そして、輝く夜空の光は、夜に沈んだ世界を優しく照らす。
月と星の光に照らされた夜の世界には、
太陽の光に照らされた昼間とは違った美しさと、輝きがある。
そして、光をもらうだけでなく、自らも光を放ち、輝く夜の世界もあった。


眠らない街・ブランシェ。
世界有数の大都市であるこの街は、
夜闇に包まれた現在も街の各所に明るい灯りが輝き、
光りあるところに、人々の明るく賑やかな喧騒があった。
人々は、今宵も平和な夜を謳歌する。
それぞれの、お互いの幸せを喜び合いながら。

幾多の問題を抱えながらも、世界は廻り続けている。
戦火の芽は今も撒かれ、芽吹き続け、
新たな戦いと悲劇もまた、生まれようとしている。
だが、混迷続くその世界には、平和も確かにあった。


「今夜も星が綺麗ですね。」
「この空…きっと明日もいい天気だよ。いい青空になる。」
平和な夜を享受するブランシェの街の一角にある、喧騒から外れた公園。
海が近く、街の風景もよく見渡せるその公園は、
ブランシェの街の人々にとって憩いの地だ。
昼間ともなればこの公園も人で賑わっているのだが、今は夜。
とても静かだ。
そこに、手を繋ぎ、夜空を見上げながら散歩する一組の男女の姿が在った。
優しく手を繋ぎながら、お互いの顔を見合わせて微笑み合う二人の姿。
他者から見ても、二人が仲睦まじい関係であることを察するのは、容易だった。
「ヒトミさん、寒くない?」
「ちっとも寒くありませんよ。だって…スウォンさんが隣にいるんですもの。」
ぎゅっと、女性――ヒトミの、男性――スウォンの手を握る力が、少し強くなる。
お互いのあたたかさを、今の自分達の幸せを、より強く噛み締めるように。


ファントゥームでの最後の戦いが終わってから、二週間が経過した。
世界の存亡を賭けるまでに発展したカメダ軍団との最後の戦いは
クロエ達ファッティホエール号の仲間達の勝利に終わり、カメダ軍団は遂に壊滅。
ファントゥームもまた、この世界を、「仲間」達を愛し、平和を願う一人の少女の意思により、
この世界から永遠に姿を消した。

戦いを終えたファッティホエール号の仲間達は、遂に解散の時を迎える事になった。
戦いが終わっても、世界は終わらない。
この世界の「終焉」は阻止され、これからも世界は廻り続ける。
そして、皆にはその世界で、それぞれのやるべき事がある。
全員が、この戦いを通して得た絆と思い出を改めて確かめ合い、
必ず再会する事を約束して。
解散した仲間達は、各々の道へと旅立っていった。
行くべき場所へ。
帰るべき場所へ。
それぞれの未来へ。

スウォンもまた、帰るべき場所へと戻ってきた。
たくさんの仲間達の、そして、愛する人の待つ、故郷のブランシェへと。

ブランシェに帰って来て、情勢が落ち着いてきてしばらく経ち、
そして今日、スウォンは久しぶりに、
幼馴染で恋人のヒトミと一緒にデートに出かけていた。
最愛の人との幸せな時間を、二人は久しぶりに満喫する事が出来た。
その「一日」も、もう残り短くなりつつあった。
二人は今日一日のデートの最後の外出先に、この公園を選んだ。


「今日は一日、どうだった?」
「とっても楽しかったです。久々のデート、本当に素敵な一日でした。」
ブランシェの港地区の美しい夜景を一望しながら、
スウォンとヒトミは、ベンチに腰を降ろし、互いに寄り添い合っていた。
「嬉しいよ。またこうしてヒトミさんとデートする事が出来て…。」
「私もです。あなたが無事に帰って来てくれて、私、本当に嬉しかった…。」
「…長く心配かけて、すまなかったね…。」
「ううん、いいんです。
 それに、私達がこうして今日もこうして平和に生きていられるのも、
 スウォンさん達のおかげですから…。」
ヒトミは改めて、ブランシェの夜景を見渡す。
街に輝く灯りの下にはたくさんの人達がいて、今も明るい賑わいを見せている。
平和の光景、そのものだった。
「スウォンさんが、テネジーちゃんやヒカリ君が、
 クロエさん達が、皆さんが守った街です…。皆さんが守った平和です…。」
「守れたんだな…俺達…。」
あの最後の戦いで負けていたら、この世界は終焉を迎えていた。
そう、ファッティホエール号の仲間達は、救う事が出来たのだ。
この世界と、そこに生きる数多の命を。


「スウォンさんは、これからもワギリで働き続ける予定ですか?」
「ああ。もう身体も完全に回復したし、前と同じように働ける。
 これからは、また元気に働けるよ。」
微笑んでそう答えると、スウォンは夜空を仰ぐ。
視線の先は、一際輝く満月。
一瞬、スウォンは静かに満月をじっと見つめると、再び言葉を紡ぎ始める。
「ただ、必要とあらば、また空で戦う事もあると思う。」
「えっ…?」
「カメダ軍団とのファントゥームを巡る戦いは終わったけど、
 まだ世界が完全に平和になったわけじゃない。
 いつまた大きい戦争が始まるかもわからない。
 それに、カメダ軍団は確かに壊滅したけど、
 逃走した残党だってまだ多く居るはずだ。
 カメダ軍団だけじゃない。
 自らの私利私欲で平和を脅かそうとする輩は、他にもたくさんいる。
 いつかまた、あのファイアバグやカメダ、ジオットのような悪党が現れるかもしれない。
 もし今までの一連の戦いの時みたいに、この世界が危機に曝されたその時は、
 戦うよ、俺は。」
この世界を、もっといい方向へ導くこと。
この世界に、一つでも多くの幸せと平和を齎す事。
それが、続くこの世界でこれからも生き続ける俺達の役割だと思うから。
平和の礎となって散っていった数多くの魂の為にも。
幸せを、平和を踏み躙られ、犠牲となった、かつての旧友達に、数多くの魂の為にも。
この世界の幸せと平和を願い、みんなにそれを託した彼女の為にも。
俺達は、未来を創らなくてはいけない。明るい未来を。
「スウォンさん…。」
そしてまた、静かに、スウォンはヒトミに微笑みかけ、
そっと彼女のあたたかい身体を抱き締める。
「小さな力だけど、俺には戦う力がある。
 だから、その力で、少しでも多くの人の平和を、幸せを守りたいんだ。
 そして…誰よりも、ヒトミさん、君の事を守りたいんだ。」
あたたかく濡れたものが、ヒトミの目元に溢れ、頬を伝う。
多くの傷を心身に負いながらも、戦い続けたスウォン。
彼の戦いは、いつも「誰かの幸せを守る為」という行動理念から始まっていた。
カメダ軍団との一連の戦いでは、
友の命を奪ったファイアバグへの復讐、という怨恨も確かにあった。
だが、それ以上に彼を突き動かしたのは、
人々の幸せを踏み躙るカメダ軍団への怒り、そして軍団の非道から人々を守りたいという
想いに他ならなかった。
そして、彼はまた、新たな戦いに身を投じようとしている。
彼の決意は、揺らぐことは無い。
ヒトミは、彼がそういう人間だという事を熟知している。
彼はまた、自分達の為に傷つこうとしている。
いつもスウォンの事を見守り続けてきたヒトミ。
彼の優しさに、嬉しく、同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「…スウォンさん…。 スウォンさん…!」
スウォンの背中にも、そっとヒトミの手が廻る。
ありがとう。ごめんなさい。
最愛の人への、謝意に満ち溢れた涙が、ヒトミの頬をとめどなく流れる。

ずっと近くなり、感じ合う、お互いのあたたかい温もり。
絶対に守りたい、最愛の人の温もりを感じながら、
スウォンは一旦、名残惜しそうに彼女の身体を離した。
まだ潤んだままのヒトミの目元と、涙の痕に、
スウォンも嬉しくも、申し訳ない気持ちになる。
だが、再び戦いに身を投じる決意に、躊躇いは無い。
彼女の幸せを守る為にも。
幸せにしたいのだ。誰よりも、彼女を。
最愛の女性(ひと)だから。

一連の戦いの日々の中で、
以前から相思相愛ながらもなかなか進展できなかった二人の関係は、
様々な出来事を経て、大きく前へと進んだ。
お互いの気持ち、想いは、もうはっきりとわかっている。
だからこそ、彼は今日、彼女に向けてある言葉を贈る事を決意していた。

「ヒトミさん、お願いがあるんだけど、いいかな…?」
「う、うん…」
「左手、前に出して。」
「…っ!?」
その声に従い、ヒトミはそっと左手を前に差し出す。
スウォンはポケットから小さな箱を取り出し、
箱の中にある物を、そっとヒトミの左手の薬指に、それをゆっくりとはめた。
「ス、スウォンさん…! これ…!?」
ヒトミの左手の薬指にはめられたもの。
それは、美しい宝石の指輪。
それが何を意味するのか。わからないわけがなかった。
「ヒトミさん、ごめん。
 また先の戦いのような事が起こったら、
俺、これからも何度もヒトミさんを待たせる事もあると思う。
寂しい想いをさせてしまう事もあるかもしれない。
だけど、信じてほしい。
俺は絶対、君の所に帰ってくる。
俺は、これからも君の隣にいたい。」
「あ、ああ…。」
再び、ヒトミの頬を涙が伝い始める。
今度は、喜びと幸せに満ち溢れた涙が。
「絶対に、幸せにする。
 俺と、結婚してほしい。
 一緒に、幸せになろう。」
「……はい…!」
最初の返事は、涙と幸せに溢れた笑顔と共に。

そして、二つ目の返事は、涙に濡れた、甘酸っぱい口付けと共に。


一つの物語が終わり、いくつもの新しい物語が始まる。

これは、二人の新しい幸せの日々の始まり――。



HAPPY END!!





No.93

■各キャラ後日談 投稿者:無頼 投稿日:2012/03/23(金) 22:49

・スウォン&ヒトミ
ユイ「スウォンさんはあの戦いが終わった後、またワギリに戻って元気に働いています。
   だけど、ブランシェや街の近辺で悪い空族が暴れた時には、ベルーガ号で出撃しては
   悪党たちを次々と撃墜しています。
   今では、ブランシェの街を守る守護神のような存在になったみたいです。
   そしてもう一つ大事な事。
   スウォンさんは無事にヒトミさんと結婚し、幸せな夫婦生活を送っています。
   結婚式、本当に素敵だったな…。二人とも、とっても幸せそうでした。
   もうすぐ赤ちゃんも生まれるとの事です。赤ちゃん、無事に生まれてくるといいなぁ…。」

アルバムの一枚絵は、二人が子供達と一緒に幸せに暮らしている光景。

スウォンさんとヒトミさんはその後、双子の娘を授かりました。
一家は激動の時代を無事に生き抜き、末永く幸せに暮らしました。
天寿を全うするまでブランシェの守護神であり続けたスウォンさん。
世界に何か大きな危機があった時、世界の命運をかけた空戦には、
必ず「白き閃光」のような戦闘機が姿を現した、と伝えられています。
彼は生涯、その力で力なき人を守る為に、その力を行使し続けました。
ヒトミさんとは、生涯を終える最後の瞬間まで、ラブラブ夫婦でした。

パラダイス・カフェも、その後も繁盛を続け、
かつてファッティホエール号に集い、戦った仲間達もたまに集まり、彼らの憩いの場となり続けています。


・サーヤ
ユイ「サーヤちゃんはスウォンさんと一緒にワギリに戻り、元気に働いています。
   今ではお父さんの事も積極的に手伝っているみたい。
   まだクロエ君の事は諦めていないみたい。
サーヤ「もっといいオンナになって、必ずクロエ君の心を射止めてみせるわ! ユイ、あなたにだって負けないから!」
   と改めて宣戦布告されちゃった。…私も負けないからね、サーヤ。」

一枚絵はお父さんの仕事を手伝うサーヤの姿。
サーヤちゃんは二十年後、お父さんの跡を継いでワギリの女社長に就任。
ワギリを更に大きな企業に発展させ、飛行機の開発や平和利用にも大きく貢献するほどに成長しました。
クロエ君にアタックした後の展開は秘密です。
歳をとってからもその若々しい風貌は衰えなかったそうで、これも「サクラのおかげ」との事…。


・ユジーヌ
ユイ「ユジーヌ君は故郷に帰って、ミナさんと結婚。
   その後も空族として活躍を続け、今ではすっかり一流の空族として名を馳せています。
   空族がどんどん姿を消していく今でも、ユジーヌ君の空族としての活躍は続いています。」

一枚絵はユジーヌ君の駆るプライマル・ジョー号の空戦シーン。
ユジーヌ君はその後、空族という言葉が人々の記憶から忘れられるその時まで、空族として戦い続けました。
引退後は両親の跡を継ぎ、家業に専念しています。
空族引退後も飛行機好きは止まらず、たまにかつての愛機に乗って飛び回っています。
   


・パーシヴァル&マリン
ユイ「パーシヴァル君は今も世界中を飛び回り、研究と冒険を続けています。
パーシヴァル「ファントゥームの生き物たちを研究できなかったのは残念だけど、
       世界にはまだ不思議な生物がいっぱいいるはずだ!」
   と、今でも不思議な生物を追い求め続けています。
   でも、彼もアケチ君と同じように、仮にファントゥームの生き物たちを研究できたとしても、
   彼もその事実を封印するつもりだったみたいです。パーシヴァル君も、アケチ君とその想いは同じだったみたい。
   パーシヴァル君の発表した研究成果は他の学者さん達からも高く評価され、
   彼の博物学者としての名声は高まる一方です。
   きっと、いつかすごい大発見をしそうだな…。
   そして、マリンさんも正式にパーシヴァル君の助手になり、彼と共に旅立っていきました。
   二人はいつも一緒に研究と冒険を続けています。
   二人はもうすっかり、公私ともに素晴らしいパートナー同士となりました。
   今はまだ表向きは博士と助手の関係だけど、二人もいつかきっと…。」

アルバム一枚絵は、書斎で研究論文を執筆するパーシヴァル先生と、傍らで優しい笑みを浮かべながらそれを手伝うマリンさんの姿。

パーシヴァル先生とマリンさんはその後結婚し、正式に夫婦となりました。
夫婦はその後、共に末永く幸せな人生を送りました。
パーシヴァル先生は天寿を全うするまで多くの研究を発表し、多くの大発見をし、博物学・生物学の発展に大きく貢献。
彼の学者としての地位は不動のものとなり、後世の研究にも大きく影響を与えました。
そして、いつも彼の傍らにあったマリンさん。
彼女の幸せは、その後は二度と崩れ去る事は無く、彼女はシュネー先生が望んだように、
無事に長生きし、最愛の夫と共に幸せに天寿を全うする事が出来ました。





No.106

■Melodies of Life(前篇)投稿者:無頼 

少女は、泣いていた。
少女の前には、彼女の前から消えていく三人の大人の姿があった。
二人の女性と、一人の男性。
何れも、少女にとって、とても大切な人で、愛していた人、だった―。
―行かないで!―
涙に濡れた少女の声。
少女は気丈だった。
どんなに辛い事があっても、人前では涙を見せまいとする、そんな子だった。
彼女の前の三人は、その少女の涙を知る、数少ない人物だった。
けれど、三人の男女は、そこに足を留める事はできなかった。
行かなくては、いけなかったのだ。
もう、彼ら三人は、少女とは住む世界が異なってしまったから。
理不尽な運命によって、少女と引き離されてしまったために。
ずっと、一緒だったのに――。

――あなたは、幸せになって――

やがて、三人の姿は霧散し、完全に少女の前から消えて無くなってしまった。
泣き崩れる少女。
少女の意識が絶望に沈み、
目の前の世界から色が、音が、あたたかさが失われていこうとした時。

どこからともなく、その声は聴こえてきた。
それは、歌声だった。
あたたかさと、優しさに満ち溢れた歌声。
それは、絶望に沈もうとした少女の心を踏み留める。
―あたたかい―
心が、優しいぬくもりに抱かれる。
いや、心だけではない。
その身体も、ぬくもりに抱き締められていた。
ぬくもりに抱き締められると共に、
彼女は自分の中に、新たなるぬくもりが生まれるのを感じた。
自分を抱き締めるぬくもりと、自分の中に新たに生まれたぬくもり。
ぬくもりが、彼女の心から一瞬消えかかった想いを蘇らせる。
それは、幸せの想い。

少女は、もう不幸ではなかった。
想いが蘇ると共に、少女の意識は、この世界から、彼女があるべき世界へと目覚める。





「ん…」
ぼんやりと意識を覚醒させたマリンが最初に目にしたのは、
カーテンの隙間から室内に差し込む、柔らかい月の灯りだった。
先程の「夢」の中と同じように、彼女の身体は、優しいぬくもりに抱かれていた。
少し首を捩ると、目が合った。
彼女の身体を優しく抱き締める、夫の目と。
「…目、覚めたのか。」
「…うん。」
頬をそっと指でなぞる。
あたたかく濡れた感触。
「…ありがとう。」
彼女が辛く悲しい夢に苛まれた時、いつも夫はこうして優しく抱き締めて、彼女を救ってくれる。
「…ごめんな、また泣いてしまって…」
「気にするな。泣きたい時は、声を出して思い切り泣けばいいんだ。」
夫はそう言って、枕元のハンカチを手に取り、マリンの濡れた頬を優しく拭う。
「泣いてばかりじゃ、この子にも心配させちゃうよ。」
マリンはお腹を優しく撫でる。
大きくなったお腹。
そこには、新しい命が宿っている。
夫と育んだ、愛の結晶。
肉親を全て亡くした過去を持つ彼女に、
もうすぐ、自分の血を分けた、新しい家族が生まれる。
「ごめんな、お母さん、泣いちゃって…。」
「大丈夫だぞ。
 お前のお母さんは、たまに泣いちゃう事もあるけど、強いお母さんだからな。」
夫は左手を、お腹に手を添えるマリンの左手にそっと重ねると、
一緒に、お腹を優しく撫でた。
右手は、そのまま彼女のお腹に優しく触れる。
「お前の事も、お母さんの事も、俺がちゃんと守るから…
 だから、安心して生まれて来いよ…。」
「お母さんも、絶対にお前の事を守ってやるからな。
 元気に、生まれてきてくれよ。」
マリンのお腹の中の新しい命に囁きかけると、
二人はお互いの顔を見合わせ合い、優しく微笑み合う。
「…寝るか。明日、早いしな。」
「そうだな。……なぁ、一つ、お願いしていいか?」
「ん?」
「もう少し…このままでいてくれないかな。」
返事の代わりに、夫はマリンの頬にそっと口付けると、
彼女の身体を優しく抱き締めたまま、静かに歌を口ずさみ始める。
マリンから教わった、子守歌だった。





「おはよう、パーシヴァル。」
「起きたか、パーシヴァル。」
「うん、おはよう。」
「お義父さん、お義母さん、おはようございます。」
「マリンちゃんもおはよう!」
「おはよう、マリン君。」
翌朝、目覚めたパーシヴァルとマリンがリビングに向かうと、
パーシヴァルの両親は既に起床して着替えていた。
「マリン君、その子は今日には生まれてきてくれるかな?」
「それはまだわかりませんよ。元気に生まれてきてくれるのを願うばかりですよ。」
「そうね。私もそれを願うばかりだわ。」
そのやり取りは、
マリンが臨月を迎えてから、毎朝必ず交わされるようになった。
パーシヴァルの両親もまた、初孫の誕生の日を、
今か今か、と常々楽しみにしている。
「もう朝ご飯にする?」
「そうだな、お願いしようかな。」
「よし、母さん、朝食の準備だ。」
「あ、お義母さん、俺も手伝いますよ。」
「ダメダメ。マリンちゃんはもう臨月に入ってるんだから。
 ずっと前から言ってるでしょ。
 無理したら、お腹の赤ちゃんに良くないわ。
 私とパーシヴァルに任せて、マリンちゃんは休んでて。」
「…すいません、いつも気を遣わせちゃって…。」
「何言ってるの。あなたとお腹の赤ちゃんのためだもの。
 ほらほら、パーシヴァル、手伝って。」
「はいはい、今日も野菜洗いからでいいかな?」
「うん、お願い。」
「頑張れよー、二人とも。」
「…親父もたまには手伝えよ…。」

今日も、一家の新しい一日が始まる。





「本当に、いつ生まれてくるんだろうな?」
「もうすぐ、なのは確かだと思うけどな。
 臨月に入って、兆候も度々起こっているし…。」
朝食終えて一息休息したところで、
夫婦は車を出して、町の港に来ていた。
待ち人を、待つためだった。

田舎町であるパライソだが、
その美しい町の情景と周囲に広がる自然風景に惹かれて、
町を訪れる観光客の数は少なくない。
陸路を伝って来る者もいれば、海路、更には空路を使って町に来る者もいる。
数十メートルクラスの船舶も停泊可能な港を備え、
近隣に小規模ではあるが必要なものの備わった飛行場も所在する港地域は、
パライソの玄関口であり、最も賑わっている地域だ。

「そういえば…昨日の夜も、悪かったな。また助けてもらって。」
「そう何度も謝らなくていいんだぞ。夫婦だろ。」
待ち人を待つ二人は、港付近にある公園のベンチに腰かけて、
時折空を眺めつつ、静かな時間を過ごしていた。
「妊娠中に悲しみやすくなったり、涙が出やすくなるのは、
 妊婦さんにはよくある事だろ。
俺のお袋だって、俺がお腹の中にいた時はそうなったって言っていただろ。」
「うん…。」
所謂、マタニティブルー。
女性が妊娠中、出産後に、一時的に感情や精神状態が不安定になってしまう症状。
「赤ちゃんがもうすぐ生まれてくると思うと、
すごく楽しみで、嬉しくて、幸せだと思うのに…、
不安まで、一緒に大きくなってしまうんだ。
こんなに、幸せな事なのに、な…。」
「不安が大きくなるのは、俺も同じだよ。
 昨日の夜もああ言いはしたけど、それでも、
 俺なんかがいい父親になる事ができるのかって度々不安に思う。」
「なれるさ、お前なら。」
「そういうお前だって、絶対立派なお母さんになれると思うぞ。」
「昔から、ずっとそう言ってくれてるよな、お前。」
「そう信じているから、そう言ってるんだ。」
「そうか…。俺もそうだぞ。
俺だってお前がそうなれると信じているから、率直に言ってるんだが。」
そう。お互い、信じる事は同じだった。
「…ありがとうな。」
「…お前もな。」
少し照れて、お互いの頬が熱くなる。

(わかってるよ。お前が不安に思っている事…。)
そう、パーシヴァルわかっていた。
マリンが不安に思っている事。
それは、「親になる事」への不安だけじゃない。
今ある幸福を失う事への、恐怖。
過去に経験した、いくつもの辛く、悲しい出来事。
それは、一生消えないであろうトラウマを彼女の心に深く刻みつけ、
今もなお、彼女を苦しめている。
だからこそ、自分が守らなくちゃいけない。
彼女の夫として、
生まれてくる子供の父親として、
家族を愛する者として、
一人の男として、
彼女と、生まれてくる子供を…家族の幸せを守らなくてはならない。
誰よりも愛している人を、守りたい。絶対に。
それは、パーシヴァルが心に決めた、一生をかけて守り抜いていく、誓い。

「…!…なあ、聞こえて、こないか…?」
その声に、マリンは耳を澄ませ、意識を聴覚へと集中させる。
「…!うん、聞こえる。この音、間違いない。」
二人は共に、空を見上げた。
彼等は確かに聞いた。懐かしい音…声を。
その声は、東の空から近付いてくる。
空に、鯨が浮かんでいた。
鉄で出来た身体を持つ、「空飛ぶ鯨」は、ゆっくりとパライソの町へと近付いてくる。
「…来た…!」
その雄々しき姿を、パーシヴァルとマリンは、嬉しそうな表情を浮かべつつ見上げていた。

ファッティホエール号。
空族の存在がすでに過去の物と化し、大きく時代が変わりゆく現在も、
空族達が空を飛び廻っていた時代から飛び続けていた「鋼の鯨」の生きる場は、
今も大空にあった。
歴史の裏で、この世界の存亡を賭けた「謳われぬ戦争」を戦い抜いた、
「謳われぬ英雄」達の母艦。
その戦いを知る人間達は、今もその雄姿に、その名に対して敬意を払う事を忘れない。
そして、鋼の方舟と共に戦い続けた勇士達に対しても。
現在も、パライソの町の人々にとって、
ファッティホエール号は馴染み深い存在だった。
パーシヴァルやマリン、
町の郊外に研究所を構える科学者、プロフェッサー・クロノと、
その助手のジョンがファッティホエール号に乗り込み、
戦っていた事も、町の住人達は知っていた。
今もファッティホエール号には、彼等の仲間達が乗っていることも。
また、パライソ郊外に別荘を構えるイオ・レーヴェ…レーヴェ財閥現会長が、
現在もファッティホエール号の面々と…
ファッティホエール号を所有するアブニール社と協力関係にある事も、
町の人々にとっては周知の事実だった。

港の係員に通信を入れ、無事に港に着水したファッティホエール号は接岸。
パーシヴァルとマリンもまた、接岸したファッティホエール号の傍に辿り着く。
やがて、格納庫の扉が開き、中から一人の男が姿を覗かせた。
「よおっ! はるばるお疲れ様!」
その男を、パーシヴァルは手を挙げて、笑顔で歓迎する。
「久しぶり!」
艦内から姿を覗かせた男も、パーシヴァルとその隣に居るマリンの姿に気付くと、
手を挙げて合図を示し合せる。
クロエ・ユウ。
ファッティホエール号の艦長であり、
「謳われぬ戦争」にて、カメダ軍団を打倒した勇者達の中心となった男である。





「それでは、俺達の再会を祝して、乾杯!」
「「「「「「乾杯!」」」」」」
パーシヴァル、マリン夫妻とパーシヴァルの両親の邸宅にて、
息子夫妻を交えた七人の男女が、笑顔と共に杯を交わしていた。
(とはいっても、お酒ではなくお茶やジュースだが)
「遠路はるばる、本当にお疲れ様。」
「五人とも、元気そうで何よりだよ。会社も銀行も、順調みたいでさ。」
「うん! みんなの…たくさんの人達のおかげさまでね。」
元気印の笑顔で答えたのはユイ。
父・トウヒの跡を継ぎ、アブニール社の若女社長となった彼女は、
家電企業へと転身させた会社の事業を順調に進めている。
「こっちもね。テネジーにも、本当に色々と助けてもらってるよ。
 たくさんの人達に助けてもらっているけど、
 やっぱり、テネジーに一番助けてもらってると思うし、
 テネジーの助けが一番嬉しいよ。
 最高の妻をもらえて、本当、僕は果報者だよ。」
「旦那様を献身的に補佐するのは、奥さんである私の務めですから。
 …でも、嬉しいなぁ…。
 果報者なのは、私も同じですよ。
先生に、いつもいつも、いっぱいいっぱい愛してもらってますから(はぁと)
昨日だって、明け方近くまで…」
「ぶっ! ストップ! テネジー、悪いけどそれ以上は…」
隣に座る妻の続けそうな言葉を察知したところで赤面して噴き出したアケチは、
急いで続こうとした妻の口を制止する。
「…ぁ…ご、ごめんなさい、先生…。」
夫に制止されて、妻は一層照れ隠しの笑みを浮かべた。
ユイがそうしたように、アケチも現在は父親の仕事を継ぎ、
銀行の若頭取という立場にある。
学者としての活動も続けているが、
現在は世界情勢の関係上や、頭取の地位を継いでさほど時間が経っていない事もあり、
学者としての活動は休業中の様子。
そして、彼の妻のテネジー。
元は国際テロリスト・カメダ軍団の一員であり、
パラダイス・カフェの従業員でもあった彼女は、
あの戦いの中で相思相愛の仲となったアケチと結ばれ、
現在は彼の妻として、若頭取の仕事を献身的に補佐している。
「お互い…いい奥さんをもらったな、アケチ!
 マリンだって、俺の嫁だって、最高の嫁だぞ。世界一だ!」
「お、お前…! そこまで…」
親友に負けじ放たれたパーシヴァルの熱い言葉に、
マリンも瞬時に表情を赤くしてしまう。
恥ずかしいけど、嬉しくて。
「全く…だね…。」
親友の言葉に、静かにも、はっきりと、照れた表情を浮かべつつ、アケチも応える。
テネジーも、満面の幸せな笑みを浮かべていた。
「…ご馳走様だな、ホント…」
そんな幸せな二組の夫婦を、嬉しそうに、同時に、羨ましそうにも見つめる、
ユウ、ユイ、そして…。
「ところでアケチ、お前、前に会った時よりまた痩せたな。」
「…察してくれないかな…。…そういう事なんだよ…。」

「…そうか、二人もそういう事情で忙しいんだな…。」
「ああ。先の大戦は終わったとはいえ、終戦の混乱はまだ各地で続いているからな。
 紛争の火はまだいくつも燻っている。」
「だから、今の僕達の主な任務は、火消しをする事なんだ。
 火が大きく燃え上がる前に、出来るだけ早く、すぐに消化できるようにね。
 …あんな戦争みたいな悲しい事は、もう起こしてはいけないんだ。」
「空族の時代が終わっても、空族にも火消しの一助は出来る。
 …戦うさ。俺達にもその力があるなら、これからも、そのために…。」
「僕達が生きていくこの世界を、
みんなの…この世界で生きる人達の幸せを守るためにも…。」
「何か力になれる事があったら、また俺達も、手を貸すからな。
 負けるなよ、二人とも…。」
「負けないさ、俺達、二人なら。なぁ、ヒカル。」
「うん。ユウと一緒なら…!」
夫婦の言葉に、強く頷くユウ、そしてヒカル。
かつて「謳われぬ戦争」を戦い抜いた「謳われぬ英雄」達の中核だった少年と、
文字通り、世界の命運…「鍵を握る者」だった少女。
空族の時代が終焉を告げ、世界中が戦場になった大戦が終わり、
時代が大きく転換していく中、二人の戦場は、今も変わらず大空にあった。
二人だけではない。
今も、かつてファッティホエール号に集っていた仲間達の中には、
大空で戦い続けている者は何人もいた。


ユウ達がパライソの町を訪れたのは、
アブニール社とパライソの町にある家電企業(ミソラの働いている修理工場が発展した企業)
との契約と協力のためでもあった。
今から遡る事二日前、
ブランシェで終戦後初めて世界各国の電気工学者達が集まっての会議が開かれ、
ファッティホエール号の仲間の一人で、
現在は高名な電気工学者として名を馳せ、アブニール社の重役でもあるレンも
会議に出席、参加する事になり。
それに彼女に同行する形で同じく仲間のアカリもブランシェの街に滞在する事になった。
会議の期間は一週間。
その会議期間中の日時に、ユイ達もパライソに向かう事になり、
現在ちょうど休暇をとったユウ、ヒカル、そしてアケチ夫婦も伴って、
五人はパライソの町を訪れたのだった。
用事となる契約の打ち合わせの日時は翌日。
この日は、ユウ達はパーシヴァル・マリン夫妻をはじめ、
パライソの町に住むかつての仲間や友人達の許を訪れ、旧交を温める予定だ。


「あ、今のうちに二人に渡しておかなくちゃ…。はいこれ。私達やみんなから。」
「サンキューな。」
ユイ達が用意していたいくつもの品を、身重の妻に代わってパーシヴァルが受け取る。
「…こんなにも、たくさん…」
手渡されたいくつものプレゼントに、マリンは喜びに溢れた声を漏らす。
「このベビーウェアはね、私とヒカル君が編んだの。」
「…どう、かな…?」
マリンは彼女達の編んだ二着のベビーウェアを手に取ると、まじまじと見つめ、眺めた。
「かわいい…。それに、なんだか懐かしくて、不思議な感じがする…。」
「そのベビーウェアはどっちもね、
私とヒカル君が赤ちゃんの頃に着ていたものを参考にして編んだの。」
「ベビーウェアを編むのは初めてだったんだけど…どう、かな…?」
ユイに続いて、照れ臭そうに言葉を紡ぐヒカル。
少女の頃の面影が強く残る表情だった。

二人がまだ赤ちゃんの頃に着ていたベビーウェア。
それもどちらも、彼女達の母の手編みのものだった。
牧歌的なかわいらしさの、ユイのベビーウェア。
神秘的なかわいらしさの、ヒカルのベビーウェア。
どちらも、二人の優しさがつまった素敵なプレゼントである事に変わりは無い。

「ありがとうな、二人とも。二着とも、生まれてくる子に大切に着させてもらうよ。」
二人の「母」の娘への愛情がつまったベビーウェアは、
今度は、彼女達の大切な友人に…
もうすぐ「母」になる女性に、生まれてくる新しい命に、受け継がれて…
二つの愛情が、また新たに未来へと繋がる。

その他にも、たくさんの素敵な贈り物が、夫婦に贈られた。
今日二人の元を訪れた五人からだけでなく、
五人へと託された、
ここに居合わせていない、彼等の大切な仲間達からの物も。
(中には、母親先輩でもあるイーベルやヒトミ達から贈られた、
育児などに関してのアドバイスノートなども。)
贈られたプレゼントの一つ一つ…全てが、
夫婦にとっての、新しい、大切な宝物だ。


「…もうパーシヴァルとマリンもお父さんとお母さんか…」
「先、越されちゃいましたね…」
ユウに追従して呟かれたアケチの声。
その言葉は、自身にも、テネジーにも、
そしてユウと彼女の隣に居る二人の女性にも向けられたようだった。

「…マリンさん。」
「ん?」
「本当に、大きくなりましたね。」
「だろう。大きくなるってわかってはいたけど、
お腹こんなに大きくなっちゃって、最初はびっくりしちゃったよ。」
「…お腹もですけど……ここも…。」
そう言ってテネジーが手で覆ったのは、
マリンもテネジーも大きくたわわに実っている、女性を象徴するふくらみ。
「…そりゃあ…ここも妊娠すると大きくなるらしいからな…」
「絶対今の私より大きいですよ…。ぐすっ…負けた…。
 みんなでファッティホエール号に乗ってた頃は、私が一番だったのに…。」
「く、悔しがらなくてもいいだろ…。それに、多分テネジーに子供ができたら、
 大きさは俺の負けになるよ、多分…。」
思わずマリンも苦笑い。
この会話には男性陣もちょっと顔を赤くしてしまいます。

「…予定日、もうすぐなんですよね。」
「うん。もうすぐなんだ、って、身体でも実感してる。
 ついこの間まで、この子、頻繁にお腹の中で蹴ったりしていたのに、
 最近はあまり動かなくなったんだ。
 もうすぐ生まれてくるから、赤ちゃんも動きにくい状態になったんだって。
 他にも、いくつもサインが起こってるんだ。」
大きくなったマリンのお腹を、ユイはまじまじと見つめる。
「少し、触ってもいいですか…?」
「ああ。」
ユイの手は、おそるおそる、マタニティドレス越しに、マリンのお腹に触れる。
「…あったかい…。」
そのあたたかさは、体温から得られるものだけではないと、ユイは思った。
お腹の中に育まれている、新しい命のぬくもり。
そして、命を包む、母の優しさのぬくもり。
とても神秘的で、美しく、優しいぬくもり。
そのぬくもりは、ユイにも幸せな気持ちをもたらしてくれる。
「マリンさん。」
「どうした、ヒカル?」
「僕も…触らせてもらって、いいですか…?」
「うん、いいよ…。」
ヒカルも、おそるおそる手を伸ばし、ユイと同じく、
その美しく、優しいぬくもりに触れる。
(なんてあったかいんだろう…。)
二人は、共に感じた。
新しく生まれようとしている親子のあたたかさを。
「…わかるか?
 今、お母さんの大切な二人の友達が、お前に優しく触れてるんだぞ?
 早くお前の元気な顔も見たいって…。
 いつでも元気に生まれて来いよ。
 お母さんも、お父さんも、みんなも、お前の事を待っているからな…。」
そして、今度はマリンの優しい手が、お腹に触れる。
慈愛に満ちた声で語りかけながら、愛おしくその命を抱き締めるように。
息を呑むような、美しい姿だった。
ユイも、ヒカルも、テネジーも、アケチも、ユウも、そしてパーシヴァルも、
マリンの見せた美しい「母の顔」に見惚れずにはいられなかった。
かつて、絶望の淵にいた少女は、
更に美しく、幸せな顔をするようになったのだ。

ユイとヒカルがマリンから一旦離れたところで、
今度はパーシヴァルが、優しくマリンのお腹に触れた。
「パーシヴァル…。」
今度は、最愛の夫に向けて、妻は優しく微笑んだ。
夫も妻に微笑み返すと、妻のお腹の中にいる我が子に、そっと語りかけた。
「…俺も早くお前の元気な顔を見たいぞ。
 お父さんもお母さんも、お前の事がとっても大好きだからな…。
 いつでも、待ってるからな…。」
「……………本当に…もう…すぐ…みたいだ…」
パーシヴァルの優しい声に応えたのは…少し苦しそうな、マリンの声だった。
「! おい、マリン! まさか、お前!」
パーシヴァルも、そしてユウ達も、マリンの異変に気付く。
彼女の身に何が起こったのか、この場にいる全員が、それを察していた。
「…始まった…みたいだ…。赤ちゃん…生まれてくる…。」





No.107

■Melodies of Life(後篇)投稿者:無頼 

「はぁ…はぁ…ふぅ…はぁ…はぁ…」
マリンの顔は苦痛に歪み、汗でびっしょりと濡れていた。
漏れる吐息にも苦痛が滲んでいた。
「頑張れ! 頑張れ、マリン…!」
「マリンちゃん、頑張って…!」
彼女の苦しい呼吸と共に、
苦しむ彼女の手を握り続けるパーシヴァルと、
その隣に付き添うパーシヴァルの母の、二人の懸命に励ます声が繰り返される。
「はぁ…はぁ…大丈夫…ふぅ…はぁ…俺…最後まで頑張るから…」
夫に手を握り返すと共に、マリンは夫と義母に笑顔を向けた。
その表情には、依然苦痛が滲み出ている事に変わりは無かったが、
確かな力強さ、そして辛さだけではない、別の感情が強く宿っていた。
(マリン…!)
妻の返事に応えるように、パーシヴァルはもう一度、彼女の手を強く握り返した。



【Melodies of Life (後篇)】



マリンが産気づき、お産が始まってから、
もうじきに一日の半分近くの時間が経過しようとしていた。
仲間達との再会の時を楽しみ、昼食を前にしてのお茶会の最中、
彼女は産気づいた。
それからすぐに、パーシヴァルの両親はお医者様を呼び、
急いで彼女のお産を助ける準備を始めた。
マリンはすぐに夫婦の寝室にあるベッドに寝かされ、
その隣で、パーシヴァルが付きっきりで彼女を見守り、
彼も妻を看護すると共に、言葉で励まし続けていた。
やがてお医者様と助産婦さん達が到着。
パーシヴァル、パーシヴァルの両親、お手伝いさん達、
そしてユウ達のおかげもあって、お産の準備はすぐに整い、
後は無事に赤ちゃんが生まれてくるのを待つのみとなった。





「マリンさんも赤ちゃんも、大丈夫かな…?
 二人とも、無事だといいけど…」
「大丈夫よ!絶対!」
「ああ、お医者様達も付いているし、
それにパーシヴァルもお母さんもずっと傍にいる。
心配する事は無いさ、ヒカル。」
不安そうに呟いたヒカルに、ユイとユウが優しく声をかける。
既にこの日、幾度となく繰り返されたやり取り。
――心配なのは、心配の言葉を口にしたヒカルだけでなく、
励ましたユイやユウも、アケチやテネジーも同じだった。
ここにいる誰もが、
その胸中は人生で初めてのお産を迎えている仲間の事への心配でいっぱいだった。
「経産婦さんの出産に比べて、初産は時間がかかりますからね…。
 丸二日、三日かかる事もおかしくはありません…。」
アケチはそう言って一度視線を室内に掛かった時計に向けた。
時計の大針は、すぐに11時を指そうとしているところだった。
「…今は、早く無事に産まれてくる事を祈るしかないんですね…。」
テネジーの言う通り、今はユウ達に出来る事は、
マリンの出産が無事に終わる事を、
そして赤ちゃんが無事に産まれてくる事を祈るばかりだった。

「夜分遅くまでマリン君と赤ちゃんの為に、ありがとうございます。
 本当に本日はお世話になりまして…。改めて、お礼を言わせてください。」
同室していたパーシヴァルの父が、ユウ達に深々と頭を下げる。
「いえいえ、そんな。こちらこそ…」
一同で共にお辞儀を返したところで、ユウが言葉を続ける。
「…おとうさん、俺達、もう少し、お邪魔させてもらっていてもよろしいでしょうか…?」
翌日に、ユイ達はアブニール社の仕事等の件で、
この町の企業の方々との面会に臨む予定を控えていた。
身体の事を考えると予約してある宿に戻って身体を休めるべきでもあるのだが、
今は誰もそうしたいとは思っていなかった。
夕刻までの時点で、五人は手伝える事は何でもしようと努めた。
もう手伝える事は無くなり、
今は五人とも、ここで赤ちゃんが無事に産まれてくるのを待つだけ。
仕事は午後から。
仕事は絶対に疎かにはしない。してはいけない。
最低限の睡眠時間だけは確保しなくてはならない。
だけど、それはまだもう少し後でいい。
今はただ、目の前のマリンのお産が心配だった。
時間が許すギリギリまで、ここで待ちたい。五人全員がそう願っていた。

「…ありがとうございます。
 …本当にパーシヴァルとマリン君は、いい友人を持ちました…。」
パーシヴァルの父は、もう一度ユウ達に、心からの感謝の言葉を述べた。





「はぁ…はぁ…なぁ…」
「何だ?」
苦しそうに吐息を漏らし続けながら、マリンはパーシヴァルに問いかける。
「赤ちゃんを産むって…はぁ…こんなに…ふぅ…痛い事だったんだな…」
パーシヴァルの母さんも。イーベルさんやヒトミさん達も。
世界中の子供を持つ母親達も。
そして、俺の母さんも。
みんな、みんな、こうやってお腹を痛めて、赤ちゃんを産んだんだ―。

「ごめんな…言葉で励まして、手を握ってやる事しかできなくて…」
わかっている。
妻の出産に際して、夫は本当に限られた範囲内でしか、妻の助けを起こせない。
それがわかっていても、
目の前で陣痛の痛みに苦しみ、それに必死に耐えるマリンの姿を前に、
パーシヴァルは自身の無力さを痛感せずにはいられなかった。
彼女に痛い想いをさせまいと、辛い想いをさせまいと…
彼女を守ると、そう誓ったのに。
どうあっても、こればかりはできない事だと理解していても、
パーシヴァルは心に痛いものを感じずにはいられなかった。

「謝るな…はぁ…はぁ…お前が…ふぅ…
 傍にいてくれる…はぁ…はぁ…それだけで…はぁ…はぁ…嬉しいから…」
「マリン…」
苦しさに呻きながら、マリンはまた夫に笑顔を向けた。
そう、わかっている。
彼の想いも。辛さも。
だけど、それでよかった。充分すぎた。
最愛の夫が、すぐ傍にいる…。
休まずずっと傍にいてくれて、ずっと手を握って、ずっと励ましてくれて…。
彼の優しさが、愛情が、ずっと自分を助けてくれている。
嬉しくないわけがなかった。
パーシヴァルは、今この瞬間も、マリンを救い続けていた…。

それに、陣痛の痛みは確かに苦しくて辛いものだけど、
それは、不幸なものではなかった。
この痛みは、生まれてくる新しい命の鼓動そのもの。
痛みに耐えきったその先に、新しい家族との出会いが待っているのだから。


「~~~~~~~~~!!!」
「マリン頑張れ…! マリン…! マリン…!!」

激しくなる痛み。
それは、いよいよ「その時」が近付いている事を意味していた。
今まで感じた事のない痛みに、マリンの意識は朦朧とする。
それでも、意識が朦朧とし、薄れていく間にも、彼女ははっきりと感じ続けていた。
繋がる手。そこから伝わる、力強く、優しい温もり。
そして、必死に自分を励ます声。
それは、夫の、義母の、お医者様達の声。そして――。


頑張るから、最後まで。
――だから、あなたも頑張って――。
元気に生まれてきてくれると、信じてる―。


おぎゃあ! おぎゃあ! おぎゃあ!
――ほら、聞こえてきた。
新しい命の声が。
命の歌が――。


「おぎゃあ! おぎゃあ! おぎゃあ!」
「マリン…! 生まれたぞ、マリン…!」
「元気な女の子よ! マリンちゃん!」
はっきり聞こえた。
元気な産声と、喜びに溢れた夫と義母達の声。
「…生まれたんだ…」
そして、はっきりと見た。
目の前で、元気よく手足を動かしながら大声で泣く、
自分とへその緒で繋がった赤ちゃんの姿を。
そう、自分とパーシヴァルの子供の姿を。
「おめでとう、マリンちゃん!」
「本当に…よく…頑張ったな…。」
「うん…。ありがとう…。」
「おめでとうございます。…お母さん…」
助産婦さんに促されて、マリンは手を伸ばす。
生まれたばかりの新しい命は泣き止む事無く、
ますますその元気を増すように泣き、身体を動かしていた。
元気な小さな身体を、マリンはゆっくりと、はだけた胸元に抱き寄せる。
「大丈夫だよ…。怖くない…怖くないよ…。」
静かにそう囁きかけて、小さな命を優しく抱き締める。
素肌を通して、生まれたばかりの子供のぬくもりと、命の鼓動が伝わってくる。
「赤ちゃん…。俺と、パーシヴァルの赤ちゃん…。」
胸に抱く我が子を見つめるマリンの目元には、熱い涙が滲んでいた。
それは、すぐに彼女の頬を伝う。
その顔は、笑っていた。
幸せいっぱいの笑顔で。泣いて、笑っていた。
母子の姿を優しく見守るパーシヴァルと彼の義母の目元にも、
マリンと同じように涙が滲む。
とめどなく溢れてくる涙は、しばらく止む事は無かった。

――父さん、母さん、シュネー先生。赤ちゃん、無事に産まれたよ。
――俺、お母さんになったよ!





マリンとパーシヴァルの赤ちゃんが無事に産まれて、分娩第3期も終わり、
母子の状態も健康のまま落ち着いたところで、
マリンやパーシヴァルの希望もあり、
応接室でマリンのお産が無事に終わるのを祈り、待っていたユウ達が、
マリンと赤ちゃんのいる寝室に招かれる事になった。
パーシヴァルの父親と一緒に、ずっと待っていたユウ達。
マリンが無事に出産した報は、すぐに彼等にも伝えられており、
その時、応接室にも喜びの歓声が満ち溢れた。
みんなすぐに新しく生まれたばかりの「親子」に会いに行きたいばかりだったが、
母子の状態が落ち着くまで、それを我慢。
夜遅くの疲れなど、彼等には何の問題も無かった。
そんな彼等が母子のいる寝室に向かったのは、
時刻は深夜の2時になろうとしている時だった。
(ちなみにパーシヴァルの父は一足先に
寝室にいる妻と息子夫婦、そして孫にちょっと会いに行きました。)


「改めておめでとう、マリン君。パーシヴァルも母さんも、お疲れ様。」
「ありがとう、お義父さん。」
「さぁ、皆さんも…」
「ありがとうございます…」
パーシヴァルの父に促されて、ユウ達もすぐ前へ。
「マリン、長い間本当にお疲れ様。そして、本当におめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
胸に赤ちゃんを抱くマリンの姿を目の前に、ユウ達の顔にも一層喜びの笑みが広がる。
そして湧き起こる、いくつもの祝福の声。
「ありがとう、みんな。」
マリンの顔にはまだ出産の疲れが残っていたが、その笑顔は、幸せに満ち溢れていた。
「パーシヴァルも、おめでとう!」
「もうこれで、パーシヴァル君も立派なお父さんの仲間入りだね!」
「ああ…ありがとう、みんな。」
パーシヴァルの表情もまた、マリンと同じだった。
彼もまた、母と共にずっとマリンのお産に付き添っていたのだ。
その疲れは表情にも残っていたが、やはり幸せな笑顔が広がっていた。
そして、五人の視線はマリンの胸に抱かれる、小さな命に。
「この子が、マリンさんとパーシヴァル君の…」
「うん。かわいいだろ…?
 さっきまでは起きていたんだけど、
おっぱい飲み終わったら、すぐに寝ちゃったんだ。」
五人は静かに、母の胸に抱かれてすやすやと眠る赤ちゃんの寝顔を見守る。
生まれたばかりの、小さな小さな、新しい命。
穏やかな寝顔で眠る赤ちゃんの表情は、安堵に満ちていて、笑っているようにも見えた。
見ているだけで心にあたたかく優しいものが満ちていく、かわいらしい寝顔。
幸せの風が、五人の心にも吹く。
「みんな…本当に…ありがとうな…。」
微笑ましく赤ちゃんを見守る仲間達に対し、マリンはもう一度、感謝の言葉を述べた。
「みんなにもこの子の事を祝ってもらえて、俺、本当に嬉しいよ…。
 この子に会えたのは…パーシヴァルに会えたおかげで…
 みんなにも会えたおかげだよ…。」
マリンの声には、やがて涙の色が滲み、彼女の目元にも、再び涙が潤んでいた。
「俺からも…礼を言わせてほしい。みんな、本当にありがとう。」
パーシヴァルの目元にも、うっすらと涙が滲んでいた。

パーシヴァルとマリン。
いくつもの出会いを、仲間達との出会いを経て、
いくつもの出来事を経て、二人の運命は重なった。
そして、今ここに、二人は新しい出会いを果たした。
二人と血の繋がった、新しい家族との出会い。
新しい家族が、今ここに生まれたのだ。

(パーシヴァル…マリン…。本当に、良かったな…)
仲間の幸せは、自分達にとっても幸せな事だった。
新しい幸せを掴んだ二人を、ユウ達は心から祝福した。
あの「謳われぬ戦争」の頃から、ずっと二人の仲を応援していた仲間達だったが、
二人は遂に結婚を経て、最愛の子供を手に入れた。
幸せな家族の姿に、自分達も幸せを感じずにはいられなかった。
気付けば、パーシヴァルの母も、ユイ、ヒカル、テネジー達も、
目元に涙を浮かべ、貰い泣きの涙を流していた。
マリンの壮絶な過去。
それはパーシヴァルや仲間達、パーシヴァルの両親にとっても周知の事実。
一時には女性としての尊厳をも踏み躙られ、奪われていた彼女は、
今、女性としての最高の幸せを掴んでいた。
だからこそ、同じ女性である彼女達には、男性陣以上に感じ、思うところもあった。
(本当に…おめでとう…! マリンさん…!)

いくつもの涙が、流れる。
それは全て、喜びと幸せに満ち溢れた、あたたかい涙だった――。





んく。んく。んく。んく。
静かな寝室に、かわいらしい音が規則正しいリズムを刻み、木霊する。
「…おいしい…?」
マリンははだけた胸元に抱く愛娘に、そっと優しく語りかける。
まだ目を開けていない赤ちゃんは、母の露わになった豊かなあたたかい乳房に抱き着き、
甘い食事にありついていた。
「…いっぱい飲んで、大きく元気に育つんだぞ(はぁと)」
母の優しい眼差しが、赤ちゃんを見つめる。
赤ちゃんにとって、お母さんの胸は世界で一番あたたかい場所。
赤ちゃんにとって、今の時間は、まさに至福の時間。
そして、それはお母さんにとっても同じ。
母乳の授乳は、赤ちゃんに栄養を与えるだけでなく、
あたたかい愛情を与え、子供との絆を育む、母子の大事な時間。
母乳、乳房と素肌のあたたかさと感触、声。
全てが、赤ちゃんに母の愛情を伝え、与えるもの。
母子の愛情が最も通じ合う、あたたかい時間。

「おっぱい、いっぱい出てるみたいだな。」
「うん。よかったよ、すぐに赤ちゃんにいっぱい飲ませる事ができて…」
そして、母子をあたたかく見守る優しい眼差しもそこにはあった。
一睡する事無く、妻と生まれたばかりの愛娘に付き添うパーシヴァル。
愛娘の誕生の喜びに、疲労は既に完全に吹き飛んでしまった様子だった。

窓から見える水平線には、既にうっすらと陽の光が滲んでいた。

ユウ達五人は一度宿に戻る事になり、
パーシヴァルの両親も息子家族を気遣い、パーシヴァル・マリン夫婦の寝室には、
若夫婦と、生まれたばかりの赤ちゃんの、三人だけが残されていた。
新しい両親と子だけの、初めての時間だった。

「身体、大丈夫か?」
「うん。疲れていないと言ったら嘘になるけど…不思議と楽な気分だ。
 そんなに眠くもないよ。……んっ…」
再びマリンの視点が愛娘に移る。
こちら側の方はもう飲み終えたみたいだな。
そう判断したマリンは愛娘の口を左の乳房から離すと、
「はいはい、こっちも召し上がれ(はぁと)」
抱く赤ちゃんの向きを変えて、今度は右の乳房にその小さな口を寄せる。
赤ちゃんはすぐに口を開くと、再び元気よく、母親の乳房に吸い付く。
「んっ…おなかいっぱいになるまで飲むんだぞ…?」
優しい眼差しで愛娘を見守り続けながら、
やがてマリンはベッドの隣に腰掛ける夫に静かに語りかける。
「不思議だよ。
 この子におっぱい吸ってもらって、身体の疲れまで無くなっていくみたいだ…。」
「なんだったら俺も吸ってやろうか?そうすれば更に疲れがとれるんじゃ…」
「却下。このおっぱいは今は赤ちゃんだけのものだぞ。」
「嘘嘘。冗談で言っただけだ。」
砕けてそう言いながらも、パーシヴァルの優しい眼差しは、
マリンに、そして愛娘へと注がれ続けていた。
マリンも、愛娘を見守り続けながらも、その優しい眼差しを夫に向ける。
愛情に溢れた笑みは、彼にも注がれていた。


「…ぁ…」
「マリン…?」
愛娘への授乳を続けるマリンの表情が、声色が変化した事を、
パーシヴァルは聞き逃す事は無かった。
「ごめん、また涙出てきちゃった…」
すぐにハンカチを示すと、マリンは頷いた。
パーシヴァルはそっと妻の目元を拭う。
「…マリン、何で赤ちゃんは生まれた時に泣くと思う…?」
「…科学的な理由は、ずっと前にお前に教えてもらったな。」

(赤ちゃんが生まれた時に泣く理由の説。
子宮の中にいる頃の赤ちゃんは肺呼吸をせず、
へその緒でお母さんの身体から直接栄養をもらっていますが、
出産でお母さんのお腹の中から外に出て、空気に触れる事で
赤ちゃんは肺呼吸を始めます。
大声で泣くのは、生まれたばかりの赤ちゃんにとって大きい運動で、
泣くことで、肺の機能を活性化させて、酸素を身体にたくさん取り入れる為…
 とも言われています)

「ああ。だが、それ以外の理由があると俺も思っている。
 …お前は、どんな理由だと思う。」
「…不安で、怖いから…?
 それまでずっとお母さんのお腹の中が赤ちゃんにとっての世界の全てだったのに、
 お母さんにずっと守ってもらっていたのに、
 そこを出て、いきなり知らない世界に出てきて、
やっぱりそれで不安で怖いから、とか…」
「…それもあると思う…。
だが、それだけじゃないんじゃないかな。
俺は、こうも考えている。
…不安だけど、同時に、嬉しいから、じゃないかなって…」
「嬉しいから…?」
「ああ…。
 …不安な事もいっぱいあるけど、
 楽しい事、幸せな事だって、この世界にいっぱいあるじゃないか。
 人はそれを求めて…無限の可能性を持って生まれてきて、
 この世界を生きて、創り続けてきたんだ。
 …この世界で生きる事は、怖いけど、嬉しい事だって、
 赤ちゃんは…それを本能で知っているんだと思う。
 それに、たくさんの出会いだって待ってる。
 嬉しくない出会いだっていっぱいあるだろうけど、
 嬉しい出会いだって、必ずたくさん待ってる。
 俺が親父やお袋と、みんなと、そして、お前やこの子と出会えたように。」
「パーシヴァル…」
パーシヴァルは愛娘に視線を落とし、そっとその身体を優しく撫でる。
「怖い事や、不安な事も、確かにいっぱいある…。」
そう、マリンがかつて経験したように。
消し去れない、悲しい過去。
それは彼女自身にとってだけでなく、パーシヴァルにとっても、辛く、悲しい事実。
パーシヴァルの声色が、僅かに曇る。
「だけど…嬉しい事や、楽しい事も、いっぱいある。
人は辛い事からも立ち上って、幸せを掴む事ができるんだ。
人は、生まれた時からどこかでそれを知ってるのかもしれない…。」
そう、二人ができたように。
「あくまでも俺の考えだけど、俺はそう考えてる。
 赤ちゃんはこの世界に生まれてきて、
 怖くて、そして、嬉しくて泣くんだって。」
そこまで言い終えて、パーシヴァルは優しく妻の肩を抱いた。
「俺、この世界に生まれてこれて、本当に良かったって思ってる。
 お前にも、この子にも会えたからな…。」
優しいパーシヴァルの眼差しに、マリンも向き合う。
その目には、再びとめどなく涙が溢れ、頬を雫が伝っていた。
「俺だって…はっきり言えるよ。この世界に生まれてこれて良かったって…。
 俺も…この世界に生まれなきゃ、みんなに、そしてお前にも、この子にも会えなかったからな…。」
辛い事も、悲しい事も、過去に数えきれないほど経験してきた。
けれど、マリンはこの世界で生きていく事を一切後悔していない。
この世界で、たくさんの大切な人達に、
そして、愛する人に巡り会う事が出来たから…。
幸せをその手に掴む事が出来たから…。
「絶対に、幸せにしような、この子を…」
「ああ、この子の幸せを守り、導くのも、俺達の役目だ。
 守ろうな、何があっても、絶対に…」
「…うん…。」
マリンも、忘れていない。
幼い日々の幸せが、ずっと両親に守られ、導かれていた事を。
シュネー先生が、絶望の淵にあった自分を助けてくれて、
幸せをもらい、守ってもらえた事を。
そして仲間達と、パーシヴァルと出会い、
彼と共に幸せを掴み、今の未来を得たことを。
パーシヴァルも、マリンも、たくさんの人達に幸せに導かれ、守られ、
そして二人で一緒に二人の幸せを目指し、それを手に入れた。
だから、今度は…
「今度は、俺達がこの子の幸せを守り、導く番なんだな…。」
「ああ…。そして、この子だけじゃない…。お前の幸せを導き、守るのも、俺の役目だ。」
「パーシヴァル…」
「探そうな、これからも。
この世界で、俺達みんなで、楽しい事を、幸せな事を探して、
もっともっと、幸せになろう…!」
「…うん…!」
頷くと、マリンは目を閉じて、そっと唇を寄せて…
パーシヴァルもそれに応えて、目を閉じると、彼女に唇を寄せて…
母の胸を抱き、甘いミルクを元気よく飲む赤ちゃんの頭上で、
夫婦は、ミルクにも負けないぐらいの甘い口付けを交わし合う―。

辛い事、悲しい事。いくつものそれらを乗り越えて、二人は今を生きている。
幸せな現在(いま)を。
信じてる。
これからも、どんなに辛い事があっても、必ず断ち上がる事が出来て、
最後は必ず幸せを掴むことができると。
愛しい彼と、彼女と一緒なら、絶対できるって…!





「みんな、本当に、色々ありがとな。」
「元気でな。他のみんなにもよろしく。」
「ああ、三人もな。頑張れよ、お父さん、お母さん。」
同日の夕刻、ユウ達五人は、無事にパライソでの仕事を終えて、
再びブランシェへと飛び立つ事になった。

マリンの出産が終わり、夜が明けて。
マリンの出産の報は町の人達にもすぐに知れる事になり、
たくさんの親しい人達が、パーシヴァル達の自宅に祝福に訪れた。
その中には、プロフェッサー・クロノやその助手のジョン、
レーヴェ財閥会長のイオにその秘書のシアン、それにミソラ達の姿もあった。
ユウ達も午前中に一度訪れ、無事に仕事を終えた後にももう一度パーシヴァル達を訪問。
ギリギリまで時間を過ごしたところで、彼等もこの町を発つ時間となった。

「赤ちゃんも、またね!」
「名前が決まったら、また僕達にも教えてくださいね。」
「ああ、すぐに手紙を送らせてもらうよ。そっちも仕事、頑張って…!」
「はい…! 子育て、頑張ってくださいね!」
「ああ…!アケチも子作り頑張れよ!」
「あ、ああ…頑張るとも…。」


「またな、みんな!」
「また会える日を楽しみにしてるぞ!」
「俺達もだ! 家族みんなで、元気にな!」

別れの時間が終わり、鉄の鯨は再び飛翔し、東の空へと飛び立っていった。

「行っちゃったな、みんな。」
「ああ…」
飛び去るファッティホエール号の後ろ姿を見つめながら、夫婦は寂しそうに呟く。
「俺達、本当にたくさんの人達に助けられて、見守られてるんだな…。」
「うん…。改めて思ったよ…。俺達、本当に幸せ者だって…。」
誰からもその結婚を祝福された二人。
そして、二人の新しい家族の誕生を、両親が、仲間達が、街の人達が、みんな祝福してくれた…。
人々のあたたかい想いの環が、新しい家族を包み込んでくれた…。
「今度は、俺達が…」
「この子を幸せにする番だ…。」
すやすやとマリンの胸に抱かれて眠る愛娘を見つめて、二人はまた、微笑み合う。
「頑張ろうぜ、お母さん。」
「頑張ろうな、お父さん。」
「…帰ろうか、俺達の家に。」
「うん…さぁ、帰ろうか、赤ちゃん。」
若い新米の父親と母親は、歩き出す。
あたたかい、我が家に向かって。

「明日も、家族みんなで幸せな一日になるといいな。」
「そうだな…。こんな日が続くといいな。ずっと…ずっと…続くといいな。」
そして、光差す、新しい幸せの未来に向かって――。


今日もパライソの町には、たくさんの真紅のカーネーションの花が揺れている。
「母性」を象徴するその花は、新しい家族の誕生を祝福するように、
いつまでも、いつまでも、美しく咲いていた――。



おしまい


空族祭SS 雨夜


No.100

■ヒカル君がサクラに襲われたら? 投稿者:雨夜 投稿日:2012/03/24(土) 00:14


サクラちゃんとヒカルくん

サクラ「うにゅ~…飛んだあとだからやっぱり落ち着かないにゃあ…ん?そこにいるのは?」

ヒカル「…あれ?サクラちゃんどうしたの?」

サクラ「ヒカルくんかあ…う~ん、どうしよ…我慢できないしいっか。」

ヒカル「サクラちゃん?」

サクラ「ヒカルくん?こっち来て…」



ヒカル「!!
何するの!」

サクラ「みゃはははは…ちょっとだけ、ちょっとだけ、あたしに突っ込んでくれるだけでいいの…っ!」

ヒカル「やめて!くすぐったいよ!」

(ガバッ)

サクラ「…えっ?」

ヒカル「………!!」

サクラ「ヒカルくん…が……」

ヒカル「(今だ!)」

ガバッ!ガシッ!

ヒカル「…サクラちゃん?」

サクラ「え、何、ヒカルちゃ…」

ヒカル「見なかったことにする事。
僕は君に襲われて服を脱がされていない、胸の痣を見られていない、…女の子だと知られていない。」

サクラ「う…にゃあ…」

ヒカル「誰にも言わないこと。
特に…クロエには。
話したときは…覚悟しといてね?」

サクラ「ひっ…」

ヒカル「返事は?」

サクラ「は…い…。」

ヒカル「それでよし。
じゃあ、また後で。」

サクラ「…ヒカル…くん…服だけ整えて行っちゃった…あの黒い笑顔、本気だったよ…怖いにゃあ…」



No.101

■ウゲツとジン達 投稿者:雨夜 投稿日:2012/03/24(土) 00:14

ウゲツ「(?
なんだあの子。
さっきからキョロキョロして。)

おーい、君!」

???「ビクッ」

ウゲツ「驚かなくっていいよ。
困ってるみたいだから声をかけたんだ。パリヴァールは初めて?」

???「そんなことはないんです、あの…ウゲツさんですよね?」

ウゲツ「え?何で俺の名前を知ってるんだ?
…ひょっとして友達にイルって子がいる?」

???「え、はい、まあ…。さっきまで一緒にいたんですが、はぐれちゃったみたいで。」

ウゲツ「ああやっぱり。
…イルを探すんだったら俺も手伝うよ。」

???「いいんですか?」


ウゲツ「一応、友人だから。
…けど知らなかったな、イルにこんな可愛い女友達がいたなんて。」

???「…今なんて?」

ウゲツ「君みたいな可愛い子が、イルの友達なのかって。」

???「えっと…気づいてないんですか」

ウゲツ「え?何が…」

ジン「お、ウゲツー!」

ウゲツ「!、ジン!
ちょうどいいところに!」

(ギュッ)

???「え、ちょっと、ウゲツさん!?」

ジン「どうしたん、そんな慌てて。
…今手ぇ握っとるそいつは…」

ウゲツ「そいつって…可哀想だろ。
イルを探してるんだけど知らないか?この子、離れたみたいでさ。」

ジン「おま…そいつを女だって思うとるんかい?」

ウゲツ「そうだろ?俺もイルにこんな可愛い女友達がいるとは思いもしなかっ…」

ジン「くく…っ、
ぎゃはははははははは!」

ウゲツ「おまっ、何突然笑いだすんだよ!」

イル「なんや、えらいうるさいなあ…」

ウゲツ「あっ、イル!はぐれてた友達見つけたぞ!
あと、1人で腹抱えて笑ってるこのバカを何とかしてくれ!」

イル「え、ウチ友達と一緒ちゃうで?」

ウゲツ「嘘つけ、だってこの子…」

ジン「おおいイル!ウゲツの奴、ユウキをお前の女友達と勘違いしとるで!」

ウゲツ&イル「「…はい?」」

イル「え…ちょい待ちい兄ちゃん。
こいつが…うちの女友達や思うたん?」

ウゲツ「それしか思い付かなかったんだけど…違うのか?」

イル「プッ…アハハハハハハ!」

ウゲツ「おいこら笑うなよ!
え、じゃあこの子…」

???「え、ええっと…」

ジン「あー、こいつはユウキっつー奴でな、性別は男や!」

ウゲツ「へーぇ…えええええええええ!?
ウソっ!こんな可愛い子が?」

ユウキ「あーもう!さっきから酷いじゃ無いですか!可愛いだのなんだの言われても、俺全然嬉しくないですって!」

ウゲツ「ほ…本当みたいだ…。
…じゃあ何で君、女の子の格好なんかしてるんだよ。」

ユウキ「イルに着せられたんですよ。
この前だって潜入するときにヒラヒラしたの着せられるし…」

ウゲツ「そうだったのか…。
ごめんな、間違えたりなんかして。」

ジン「いやー皆見事に引っ掛かるから笑いが止まらへんわ」

ウゲツ「お前なあ…本人も嫌がってるみたいだし、やめておけよ。」

ジン「…なんやウゲツ、がっかりしてへんか?」

ウゲツ「何言ってるんだよ、そんなわけないだろ。」

ジン「ははあ…さては?
女装のユウキに惚れてたとか?」

ウゲツ「っ、馬鹿!そんなわけあるか!」

ジン「図星やな…長年いるからほんまに解りやすいこっちゃ。
…可愛い女の子見て鼻の下たらしてばっかで、肝心の相手が見つからへんってお前の姉ちゃんが言うとったなあ。」

ウゲツ「そんなこと言ってたのかよ姉さん…!」

ジン「で?今回惚れた感想はどうでっしゃ…おっと!」

ウゲツ「いい加減黙らないと、そろそろ只じゃおかないぞ!」

ジン「殴ろうとした後で言うなや!
しかも義手の方でストレートかまそうとしおって!」

ウゲツ「元々俺は左利きだからな。
ちょうど体を動かそうと思ってたところだ…お前がこの義手で殴られる人間第5号って事で!」

ジン「ほんまにやるんやったら、こっちも本気でいくで!
覚悟しいや!」

ウゲツ「望むところだこのゴリラ!」

ジン「悪人面が言うなや!」

イル「キャハハハ!なんや面白い事になってきたで!」

ユウキ「笑い事じゃないって!こんな道端でガチバトルするなよ二人とも!」

ジン&ウゲツ「「外野は黙っとらんかい(黙ってろ)!」」

ユウキ「えええっ!?」



その後、駆けつけた主人公たちによって喧嘩は止まり、ジンとウゲツは勿論、その場にいたイルとユウキも酷く叱られた…


ユウキ「…何で俺まで叱られるんだよ…」



※補足
・コーラスを助けたときにドラゴンヘッドを四人ぶん殴ったのでジンは5人目。
・時系列は全く考えてません。ユウキとウゲツは面識なしの方向で行きました。
ユウキがウゲツの名前を知ってたのはイルとジン経由。

ウゲツにマガツと悪友設定があったことを思い出し、あのコンビともこんな感じなんだろうなーとか思って書いたらこうなりました。






No.102

■ウゲツとアイハラ君 投稿者:雨夜 投稿日:2012/03/24(土) 00:14

ウゲツ「じ~…」

アイハラ「え、あの~…俺の機体と顔に何かついてます?」

ウゲツ「なあアンタ…この機体で大丈夫なのか?」

アイハラ「あ~もう慣れてきたよ。」

ウゲツ「機体名は…しんかい君?ああっ!やっぱり!
ボロッちい癖に数ある激戦を生き抜いてきた飛行艇があるって!パイロットは君だったのか!」

アイハラ「え、ちょっと待って。俺…ひょっとして有名?」

ウゲツ「当たり前じゃないか。プロのパイロットの間じゃ噂で持ちきりだった。
機体名はともかく、操縦者までは誰もわからなかったし…
会えて光栄だ。
機体もまさかこんな形で拝めるなんて。うわ、装甲ボロボロじゃないか。エンジンもずいぶん古いし…。」

アイハラ「俺だって、改造したいし武器だってつけたいよ。けど、金なくってさあ…。こんな装備でカノンの我が儘に付き合わされてさ、機体も心もボロボロだよ…。」

ウゲツ「よく生き残れたな…操縦の腕は本物だ。同じ空族として尊敬するよ。
…あ、そういえば、仲間の1人が「一回ぐらい撃ち落としてみたい」とか言ってた…あと、上司が一回でいいから刀で真っ二つにしたいって。」

アイハラ「どっちも物騒だな!」

ウゲツ「それだけ有名なんだよ。撃墜したら相当凄腕だって言われてるんだ。」

アイハラ「はあ…胃が痛くなってきた…ついでに寿命縮みそうだ。
…なあ、君はチーガオでお医者さんの手伝いしてるんだろ?そこに転職とか…できるかな。」

ウゲツ「クラガさんの所か?出来るとは思うけど…勿体無い。」

アイハラ「は?勿体無い?」

ウゲツ「それだけの腕があるのに自分からやめるだなんて、やっぱり勿体無いって。
…転職先なら、俺が所属してた組織を紹介するよ。あそこなら設備も揃ってるし、機体の改造だっていつでもできる。」

アイハラ「それ本当か?」

ウゲツ「俺も調子を取り戻したら戻る予定だし、その時は一緒に行こう。あれだけボロい飛行艇でここまでこれたんだ。最高の装備を施せば、きっと伸びるよ!」

アイハラ「…!ありがとう!えーと、ウゲツ君!」

ウゲツ「どういたしまして、えーと…」

アイハラ「…アイハラな。」

ウゲツ「そうだそうだ、アイハラ君!」

アイハラ「くううやった!
漸く一筋の光が見えてきたッ!」

ウゲツ「(…あれ、さっき俺が言ったこと忘れてないかアイハラ君?

…多分、一緒に行ったときに「一回だけでいいから撃ち落とされなさいよ」って言われて大変な目に合うだろうな…。アイツや隊長に撃ち落とされないといいんだけど…)」

アイハラ「いやー本当にありがとうウゲツ君!」

ウゲツ「(こんな喜んでるし、本人に言いづらいなあ…)」






空族祭SS BLUE


No.86

■<月送り その後> 投稿者:BLUE 投稿日:2012/03/23(金) 15:30

- ファッティホエール号 病室 -

ガチャッ!

クロエ「シンドウさん!ヒカルは!?」
エンゼル「(しっー!)」
クロエ「あ、ご、ごめんなさい・・・。」

シンドウ「軽いすり傷があったので薬をつけましたが、命に別状はありませんよ。
     海水に浸かっていたので体は冷えていましたが、もうずいぶん回復しました。
     今は疲れて眠っていますが、もうすぐ起きるでしょう。」

クロエ「そうですか・・・良かった。」

エンゼル「彼・・・じゃなかった、彼女、やっぱりファウントゥームから落ちてきたのかな?」
シンドウ「そうでしょうね。装甲に包まれていたとはいえ、あれほどの高さから
     落ちてきて無事に済むとは・・・。奇跡としかいいようがありません。」
エンゼル「・・・そう、だね。(奇跡、か・・・ううん、きっとあの子達が頑張ったんだよね・・・。)」

クロエ「ヒカルはどこの部屋に?」
エンゼル「64号室だよ。案内す・・・」

ガチャ!

ジョン「先生!教授がぎっくり腰で倒れた!すぐに来てくれないかな!?」

エンゼル「あらら。」
シンドウ「やれやれ、またですか。もうお歳なんだからムリしないでと言ったんですが・・・。
     クロエくん、申し訳ないけど・・・あれ?」
エンゼル「もう行っちゃったけど。」
シンドウ「はは、そうですか。では私たちは教授の所へ行きましょうか。」


- 64号室 -


ヒカル「・・・ん・・・。」

クロエ「ヒカル! 良かった、目が覚めたか。」
ヒカル「・・・え?ユウ? ・・・夢でも見てるのかな・・・。」
クロエ「夢じゃないよ、ホラ。」

ヒカルの手を握るユウ。

ヒカル「あ・・・。」
クロエ「な?現実だろ?」

ヒカル「・・・うん。(そっか・・・A-wingが僕を運んでくれたんだ・・・)」

クロエ「お腹すいてない?温かい飲み物とか・・・」
ヒカル「ありがとう、大丈夫だよ。 それよりさ、今って夜?」
クロエ「え?うん。」
ヒカル「月・・・見えるかな?」
-ファッティホエール号 甲板-


ヒカル「・・・女神様になりそこねちゃったな。」
クロエ「女神様?」
ヒカル「ううん、なんでもない。・・・ねぇ、A-wingは?」
クロエ「! 格納庫に収容した、けど・・・その・・・動かなくて・・・。」
ヒカル「・・・最後の力を振り絞って、僕を下ろしてくれたんだ。
    僕が1人はイヤだなんて言うから、最後にわがままを聞いてくれたんだと思う。」
    機械だけど・・・僕の・・・家、族・・・う、ぐす・・・。」
クロエ「ヒカル・・・。」

風が吹き抜ける。雲が流れて、満月が顔を出す。月の光が明るい。

ヒカル「・・・なんで、僕は残ったんだろう。」
クロエ「え?」
ヒカル「僕だって、A-wing達と同じなんだ。
    ファウントゥームをこの世から遠ざける、この日の為に生きてきた。
    彼らは逝ってしまったのに、なんで、僕だけ、僕なんて、もう何の価値も・・・。」
クロエ「そんな事━━!」
オオガミ「そんな事はない!!」

クロエ&ヒカル「 !? 」
ホエール号の甲板に、パラシュート降下してくる人影がふたつ。

ひゅ~・・・ドスン!! スタンッ!

クロエ「オ、オオガミさん!?(とルッカさん)」

オオガミ「グッドイブニング!キャプテン・クロエ!
     ファントゥームでの活躍は聞いたよ。よくぞやってくれた!!
     これで我が社のこれまでの苦労も報われるというものだ!
     ワシもあと30歳若ければ、自ら探索したかったのだが・・・。」

クロエ「は、はぁ。(ど、どこから降下してきたんだ・・・!?)」

オオガミ「そして・・・久しぶりだね、キャプテン・ヒカル!
     あの機体は実に興味深かったが、
     まさか君がファントゥームへの鍵を握る者だとは思ってもいなかったよ!」

ヒカル「・・・・・・もうキャプテンじゃありません。ましてや、鍵を握る者でもない。」
オオガミ「確かに。我が観測隊の方でも、ファントゥームが月に到達したのを確認したよ。     
     もう我々の文明と交わる事はないだろう。
     君は鍵を握る者としての使命を果たしたわけだ。」
ヒカル「・・・はい。」

オオガミ「しかし!!この世界にはいまだに前文明の影響が大きく残っている!!     
     解体されたカメダ軍団が持ち出したオーバーテクノロジーは各国へ散り散りになり、
     今でも残党はテロ活動を行っている。
     地上の遺跡は解析がほとんど進んでいないし、謎の飛行体も世界中で確認されている。
     問題は山積みだ! 君達には、まだまだ仕事が残っているのだよ。」

ヒカル「僕にできる事なんて・・・」
クロエ「あるさ!!ヒカル。俺たちと一緒に行こう!」

ぐいっ!ヒカルの肩を掴んで向き合う二人。

ヒカル「でも、A-wing達ももういないから飛行戦は「フィーデール号を使えばいい!」
    飛行艇の操縦はA-wingと全然違うから「俺が教える!」
    暗器くらいしか武器なんて使った事ないし、地上じゃ足手まと「俺が守る!!」

    えっ。・・・ぷっ!それじゃあ意味ないじゃないか!」

クロエ「え?あ、そうか。しまった。」

戻ってきてから、初めてヒカルが見せた笑顔。
それにつられてクロエも笑い出す。 甲板に二人の笑い声。

ヒカル「・・・本当にいいの?」
クロエ「もちろんだよ。みんな喜ぶさ。」


オオガミ「素晴らしい!!!」


突然大声を出すオオガミに驚く二人。甲板なのに彼の声はよく響く。

オオガミ「若い内は悩めるだけ悩みたまえ。君たちの価値なんてこれから高めていくものだ。
     もしワシぐらいの歳で君の立場だったら、それこそ後戻りできないがね!
     はははははははははははは!!  んん、・・・ルッカくん!」

ルッカが会長に白い箱を手渡す。それを持ってヒカルに近づいてくる会長。


オオガミ「君たちのような若者が、新しい時代を切り開いてくれると
     ワシは信じているよ。キャプテン・ヒカル・・・いや、ミス・ヒカル!     
     君の新しい人生に・・・。」


     「ハッピーバースディ!!」


おわり




No.87

■アルバム 投稿者:BLUE 投稿日:2012/03/23(金) 15:30


【パンツ1枚】

・条件 タチバナを仲間にしてシナリオクリア

カメダ軍団との戦いの後、タチバナさんはホエール号を降りてまた歩いて世界の旅に出た。
たまーにオオガミ会長から依頼を受けて仕事もしているようだが、
パンツと小銭しか持ち歩かない生活は相変わらずらしい。
前文明の兵器であるベルトのせいで、謎の組織に狙われたりしているとか・・・。

「ああー!?逃げてくる時に、明日のパンツを落としてしまったバッタァ!?(バキィ!)
 イタ!タカユキ、何するバッタ!」
「命狙われてるのに、明日もパンツもあるかボケ!!」

・・・だ、大丈夫かなぁ・・・。



【しんかい君は今日もゆく】

・条件 カノンを仲間にして、インタビューイベントを10キャラ以上見る。

カノンさんは、ファントゥームの事を公にしようとしたが、みんなの説得と
オオガミ会長の凄い額の手打ち金によってなんとか納得してもらった。
新しい就職先も見つかり、ファウントゥームを超える特ダネを見つける為、
今日も相棒と空を飛ぶ。

「今度はこの「あとらんてぃす」ってのを見つけてやるわよー!」
「それって海底都市ではなかったでしょうか。これ飛行艇ですが。」
「"深海"って名前の癖に何で潜れないのよ?」
「ムチャいうな!!」

空を・・・と、ぶ?
頑張れしんかい君!負けるなしんかい君!対応年数はもう限界だ!


【次なる時代へ・・・?】

・条件 オオガミの依頼を一度でも受けて、真ルートをクリアする。

オオガミ会長はまだまだ元気に仕事を続けている。時々依頼もしてくれて、とても感謝している。
・・・ただ、今でも気になる事があって、古代文明の事を熱心に調べていたのは、
「歴史の為」と言っていたけど、本当にそうなのかな・・・?

「ルッカくん!"ギリュウ-セカンド"の調子はどうかね?」
「順調です。既にオリジナルの性能の70%は引き出せます。」

「そうかそうか。・・・おや?あの子は?」
「今日生まれた"人工龍族"の子供です。彼女は第137号ですが、今のところ2例目の五体満足です。
 上手く行くかは、今後の経過しだいですが・・・。」

「いやいや、そんな心配よりも今はこの子の誕生を祝おうじゃないか。

 ・・・君はこの世界の未来を担う新しい人類だ。君の将来に期待しているよ。」

「あ・・・ぐ・・・あう・・・ガァァアアア!!」

「ハッピーバースディ!!」



【炎はやがて】

・条件 青炎、赤炎のイベントを一つ以上見てクリアする

ファントゥームの一件が終わった後、彼等兄弟は俺達の前に姿を現さなくなった。
ある仲間は「死んだんじゃねーの?(by某ジャーナリスト)」などと言うが、俺にはそうは思えない。

復讐の炎をその胸に秘める限り、彼らは何度でも俺達の前に立ちはだかる。

??「ヤツラはここの港に立ち寄って、補給をしていくわ。どんなに急いでも2日以上の停泊は確実ね。」
??「この街のゴロツキを雇えるだけ雇って、騒ぎを起こさせろ。
   注意が向いている間に船にコイツを仕掛けて、離陸直後に爆破させる。
   ・・・くくく、今から楽しみだな。

   ・・・パーティの再開だ。」


そう・・・永遠に。





No.104
■<空族祭 打ち上げ会編> 投稿者:BLUE [URL] 投稿日:2012/03/28(水) 22:36

IMG_001203.png

※なんかもう色々お借りしました。そしてスーパーキャラ崩壊をお許しください。


暗い路地を歩く男が一人。

アイハラ「あー終わった終わった。この3週間は忙しかったなぁ。
 まさかあんなでっかい企画になるたぁ、当の本人も予想してなかったろうに。
 とりあえず粗方編集も終わったし、俺の仕事も終わりかな。
 ・・・うー今日もサムイねぇ。オデンでも食って帰るかな・・・。ん?」

一件の居酒屋に明かりがついている。かなりの大人数なのか、結構な騒ぎ声である。
居酒屋の張り紙を見て足を止めるアイハラ。

『空族祭 打ち上げ会場はこちら』

アイハラ「ええええええ!?打ち上げ会やってたのぉ!?アタシ、聞いてない!」


━━ 居酒屋 「星狐」 ━━

わいわいがやがや

カノン「あぁ~~ん?ミーナ、全然飲んでなひじゃん?(ひっく)
 もっと飲めよぉ、ほらぁ~!」
ミーナ「あなたは飲みすぎです;」
カノン「あああ!?飲みふぎってことが、ことが、あるわけ、ないでしょぉ?(ひっく)」

ガラッ!

アイハラ「アーーーレーーー!? 皆さんできあがってらっしゃる!?」

ウゲツ「あ!アイハラさん!」
アイハラ「おおう、ウゲツくん、フッキー。」
シルバー(白瀬)「あら"藍原"。来たのね。主催の1人の癖に来ないもんだから、
 みんなして薄情者だと話てたところよ。」
アイハラ「いつも俺の事そんな風に影口してんの!?
 いやいや、俺今日打ち上げがある事聞いてなかったんだよ!」
ウゲツ「え?でもカノンさんが・・・。」
アイハラ「カノンが・・・?」

 カノン「あ~るぅえ~?アイハラ!おっせーぞテメー!(ひっく)」
アイハラ「あ!おせーじゃねーよ!俺今日の事きいてなかったぞ!」
 カノン「バーカ!ちゃんと今朝紙渡したろぉ~?この紙!ほらぁ!」

尻のポケットから封筒を”2枚"出すカノン。

アイハラ「やっぱお前がもってんじゃねーか!!」
 カノン「ああ? うーん・・・ま、いいじゃん?」
アイハラ「てめぇええええ!!」
 ミーナ「アイハラさん、私の妹がホントにスイマセン・・・。」
アイハラ「う。ミーナさんに言われると弱るな・・・。」
 カノン「男の癖にケ○の穴ちいせーんだよオマエは!」
アイハラ「ちょっとは自重しろやオタンコナス!」

ウゲツ「アイハラさんとカノンさん、初めてコンビ組んだのに
  長年のコンビみたいですね・・・。」
シルバー「・・・まぁああいうヤツだから。ちょっとアイハラ。
  そこのバカ女とは撮影で散々しゃべったんだから、他の人に挨拶してきたら?」
アイハラ「む、そうだな。せっかくだしね・・・。」


━━ 各テーブル ━━

  ピン「おーい! こっち酒が足りてないぞぉー!?」
シンドウ「相変わらずザルだね、君は。もう何本あけてるんです。」
  ピン「うるせー!今日飲まなくていつ飲むんだよ!」


フェイ「今回アクションはいっぱいやったけど、ジン達みたいな
  コントもやってみたかったかなぁ。」
カズ「せやせや!演技とはいえ、フェイと殺し合いやるのは辛かったで~。
 ジンならいくらでもどつけるんにな!」
ジン「どういう意味や!大体なぁ、これでも結構シリアスな役やったんやで?
 アクションもえらい量こなしたし、終盤ユウキが筋肉痛でグダグダなのを、
 フォローするの大変やったんや。」

カズ「でも女装はしっかりやってたやん。」
ジン「せやせや、ユウキの女装回を撮っとる時、
  初めて来たコウサカさんが素で女の子とまちごうて・・・」
ユウキ「も、もうその話はいいだろ~!?」
イル(天本)「ユウキはんの女装はホンマ似合っとったなぁ~w 」



ネヴィル(ワームホール)「最初お試しキャラでって話だったから、
   あんまり出番ないと思ってたんだが、
   結構出してもらえましたねぇ。表じゃあんまり出番なかったし。」
ババヤガン「いやはや、実に名演でしたよ。私も表じゃさっくり殺されちゃって
   裏には出番がありませんでしたからね。いい役を頂けて嬉しい限りです。」
ネヴィル「ババヤガン、今度はヒロイン役で出たらどうだ?w」
ババヤガン「い、いや、それはちょっと・・・;」
コウサカ「あ、いいですね。私もちょっと見てみたいです。」
スカイン「ヒュー!そいつぁグッドゥなアイデアだぜネヴィルちゃん!
   そんときゃ俺が王子様役やってやんYO?」
ババヤガン「あ、あんまりからかわないでください!///」
一同「 (デレた!!) 」



ボボ「・・・で、結局あんまり変身する機会がなくて、不完全燃焼バッタ~。
  俺もレッドさんみたいにガンダー相手に無双したかったバッタ~。
  レッドさんの活躍超かっこよかったバッタ~。」
レッド「ありがとう。裏サクセスなのにあの格好で動き回るのはちょっと恥ずかしかったがね。」
エンゼル(武美)「え~?その割にはノリノリだったじゃない。
   変身シーンにCGで炎つける時なんか
   「ここの色が・・・」とか「ここの揺らめきが・・・」とかいちいち注文つけてたって」
レッド「よ、余計な事を・・・!」
アルベルト「ワタシはその点、CGなしの体当たりワイヤーアクションで
  グッドでハイスピードデース!もっともそのおかげで、
  14回も骨折してしまいましたけどネ!
  HAHAHAHAHA!!」



スウォン「ああ、アイハラさん。良かった、今日はいらっしゃらないのかと思いましたよ。
  この度は本当におつかれさまです。」
アイハラ「いえいえ、こちらこそお世話になりましてん。あるれ、ヒトミしゃんは?」
スウォン「今はパラダイス・カフェの皆さんのところへ。
  今回は本当にたくさんの人と共演しましたからね。
  皆さんに挨拶するだけでも一苦労ですよ。」

エドアルト「おう、アイハラか!遅かったな!まぁ飲め、とりあえず座れ!
  スウォン!オマエも全然飲んどらんじゃないかぁ!軍規違反だぞ!」
イシナカ「すいませーん!ラーメン!と、ギョーザ3つ!」
イワノフ「ああ、もう食べれない・・・。」
アイハラ「(ああ、空軍メンバーに捕まってるわけか・・・)
  いやぁ~・・・また後でご一緒しますぁ!失礼しまーす!」
(ぴゅー!)
エドアルト「あ!貴様ぁ!敵前逃亡で軍法会議にかけてやる!」
ヘルガ「たわけ!いつまで役になりきってるか!」



  赤炎「でな~青炎のやつ、コンビニでウチを貶めて・・・あ!原やんやんか!
    なんや来てたんか、おつかれさまやで~♪」
アイハラ「あーカズちゃんおつかれ~・・・って赤炎ちゃん!?」
  赤炎「え!?なにその反応!傷つくわぁ~。」
アイハラ「・・・素は関西弁だったのか・・・。」
  赤炎「そらそうやん、ウチら大江カズナの弟妹みたいなもんやもん。」
アイハラ「いやいや、11じゃあピピガガ言いつつも標準語だったじゃんかよ。」
  赤炎「あれはそういう役やったから。結構ムリしてたんやで?」
アイハラ「(ますますカズのクローンでしかねぇ・・・。)」

  青炎「・・・まぁ、俺は標準語なんだけどな。」
アイハラ&赤炎「なんでやねん!!」



 ジョン「・・・ねぇ、ず~と気になってたんだけど。
  その包帯姿でどうやって日常生活送ってるの?」
マゼンタ「ん?特に困る事ないけど。」
 ジョン「ええー。ご飯とかどうやって食べるのさ?」
マゼンタ「こうやって・・・。」
 ジョン「ん? ・・・お?おおお!?すげぇえええ!そういう仕掛けになってたのか!」
アロー「え?何?何?私にも見せてよ。」
マゼンタ「ね?特に問題ないだろ?」
 ジョン「へー。ビックリした。そうだったのかー。」
アロー「私はスルーかい!」



オオガミ「やぁシアン君。今回は随分頑張っていたね。」
シアン「コレはコレは、先代社長。いえ、演技はなれていますから。
  ・・・まさか3役やるとは思っていませんでしたが。
  それを言うなら社長こそ、今回は大変だったのでは?」
オオガミ「ん、まぁな。いつもとは全然違う役柄で、だいぶ疲れたよ。
  かなり笑ったり大声だしたりしたものだから、顔が筋肉痛だ。」
シアン「はは、どうぞお大事に。」



メリッサ「たとえこの体がいくら燃え尽きてもいい~さ~♪」

グントラム「だあああ、いい加減あの女の歌は終わりにしてくれ!酒がまずくなる!」
メダチ「へーい!メリッサ!加勢するぜ!君の歌と俺のダンスが
  合わされば、どんなヤツでも俺たちに釘付けだ!」



 ニノ「おじさーん、チョコパフェとアイスバームクーヘン!」
モモコ「さっきからデザートばっかりではないか!撮影中あれだけ食べておったのに!」
 ソウ「いいじゃん、好きな物食べれば。こんなチャンスめったにないし」
サーシャ「甘いものばっかり食べてると虫歯になるってお母さんが言ってたよ。」
 ゾネン「ちゃんと栄養のあるもの食べないとダメなんだよ!」
ジョーヌ「おじさーん!海鮮サラダ!」
 ニノ「ちぇっ。女はくちうるさいな~。」
 ソウ「オレもニノみたいにおかし食べながら撮りたかったなぁ。」
 


ヨミチ「アンタとも久しぶりに会えて楽しかったわ。 カメダ・・・たち?うん?どっち?」
カメダ「おかしいでやんす!オイラがラスボスのはずなのに、全然活躍できてないでやんす!」
メカ亀田「表サクセスからわざわざキタのに、オイラもろくなメにアッテないでやんス!」
「「ああ~~ 不憫でやんス~~」」

ヨミチ「め、めんどくさ~・・・。」



パーシヴァル「よう、おつかれ!二役もやって大変だったな!」
マリン・ヴェール(夏海)「どっちも濃い役だったからな。かなり気をつかったぞ。」

※夏海ちゃん(二役演じ分け)=ヴェール・マリン
 夏海ちゃん(子役)=ジョーヌ

パーシヴァル「気をつかったのは俺も一緒なんだけどな~。
   その、なんだ、アレなシーンも多かったし・・・。」
マリン「あれで気をつかったつもりだったのか!?」
パーシヴァル「えー!?」



モモカ「はにゅ~・・・。あにゃ・・・。」
サクラ「うにゅー!?モモカちゃんにキャラをパクられた!」
ツバキ「違う違う、オレたちゃらっきょで酔うんだよ。こいつはらっきょの食いすぎ。」
サクラ「らっきょ?あ、ホントだ。レッドさんもお酒と一緒にかじってる・・・。」

レッド「(ぎくっ)」



ミソラ「う~・・・どいつもこいつも、あたしの事
  子供扱いしやがって~・・・(ひっく)
  あたしだってもう大人なんだぞぉ~・・・。」
ジョージ(渦木)「あ!ミソラさん、未成年がお酒飲んじゃだめでしょう!」
ミソラ「うるへー!大人らっていってるでしょー!」

ばたばた!

 エーコ「あらあら、背伸びしちゃってかわいいわね。」
ジョージ「悠長な事いってる場合ですか。手がつけられませんよ。」
カミカワ「あー、レッドローズにしてた方が大人しくなるぜ。」

さっ(飛行機の写真を取り出すカミカワ)

レッドローズ「・・・ふっ。マスター、極上のカクテルを頼むよ。」
カミカワ「マスターじゃねーし、居酒屋にそんなもんねーよ。」
ジョージ「というか、それ役の設定じゃなくて素なんですか。」
カミカワ「いや、まだ役になりきってるんだよ、コイツ。」



カキウチ「なんだとー!?もういっぺん言ってみろ!」
キオカ「あーなんべんだって言ってやるぜ!オマエのとこの格好だせーんだよ!」

ざわざわ

ヒカリ「あわわ・・・なんだか険悪な雰囲気。」
ユラリ「大丈夫です。こんな事もあろうかと既にスタンバイしてあります。(ピピー!)←笛」

ドドドドドド・・・
ハガネ「なんだこの音は?」
 サブ「・・・!? あ、あっちから犬の大群が・・・!!」

オクトパ&幸華メンバー 「うごおおおおおおおおお!!」
ズドズドズドズド!!

ヒカリ「な、な、なんですかこの犬の大群は!」
ユラリ「エクスカリバー"達"だ。」
ナオ「犬は嫌いじゃあないですけど・・・なんでこんなに?」
ユラリ「撮影用のペットっていうのは複数の代役がいるものなんだ。
  某ケータイCMのお父さんも、3匹くらいいるらしいぞ。」
サラ「に、20匹近くいますが・・・;」

ガビンダ「おーう!犬くさいデース!はやく追い出してくだサイ!」
ヨツバ「なんだったら、イヌ鍋にしてくっちまうか。」
カーニー「い、イヌ食うのかカニ!?」
ヨツバ「あん?なんだカニもあるのか。」
カーニー「ひぃいいいい!!」

ブラック「・・・スキヤキはこれ一匹。鍋はダメ。」
スキヤキ「みー。」



  ツチ「あるぅえ~?ソネットさん全然飲んでないじゃないですかぁ~?
   えへへ~もっと飲みましょうよ~。」
ソネット「・・・あなたは飲みすぎです。まったく、自分の限界も分からないのに
  酒は飲むなとあれほど・・・。」
  ツチ「いいから飲みましょうよ~(ドボドボ)」
ソネット「こ、こら!勝手につがないでください!」
 ツチ「え~?ひょっとしてお酒苦手なんですか?かわいいですねーw」
ソネット「な、なんと!?失礼な!軍人たる者、この程度のアルコールに
   負けるはずがないでしょう!!」

(ぐびぐび!!)

  ツチ「おおお~!さすがソネットさん!」
ソネット「・・・・・・・。」 (バタン!)
  ツチ「あれ?」
  


テネジー「あーもう全然料理が間に合わない~;;
  先生のところで一緒にお酒飲みたいのに~。」
カナ「めげたら負けだぞ!火力アップでどんどん料理つくるぞ!!
  はい、ラーメンとギョーザ!いっちょあがり!」

(ばくばく) カナ「ん?」

暴食(天使)「(うまうま)」
テネジー&カナ「 くうぅなあああああ!! 」



━━ FKさん追加分 ━━ 

レン「ぐすっ…やっぱり…ひどいです艦長…最近はユイさんにお熱みたいだし、
  私なんかよりも元気のあるユイちゃんの方が…。」
(ポン)
レン「?!」
ジオット「フフフ、お仲間がいたとはね。私も結構出張ったつもりなんだけどね。
  レンくん、行きつけのバーがあるんだけど、ご一緒にどう?」
レン「ジオットさん!?実質ラスボスなのに忘れられたんですか!?
  ええと…は、はい。お供はしますが…。
  そのお店では、お酒の肴にメロンパンを出したりはしないんでしょうね…。」
ジオット「ハハハ、まさか。というかそのネタいつまで引っ張るつもりなんだい、
  こっちも少々迷惑してるんだよ」

サカイ「おーい」
マガツ「わいらもええか?」
アラタニ「……」
アカリ「フン」

レン「あ、みなさん!ええ、こんなに!?ええと…。」
アカリ「カズったら…。本編ではあれだけ私のこと気にかけてくれたのに、
  お祭りでは専らフェイにお熱だからあたしのこと忘れちゃったんだ…どうせあたしなんて…グスン」
レン「あ、ああ泣かないでアカリさん!」
マガツ「わいそんなに影薄かったかぁー!?まあお試しキャラなのに
  使ってくれた人そこまで多くなかったしなあ」
アラタニ「…ユイの親父とキャラがかぶt」
(ガン!!)
アラタニ「…痛い」
マガツ「気にしてること言うんじゃねえやこの野郎!!」
トウヒ「喧嘩すんなや。わいも打ち上げ、呼ばれてへんし、アハハ」
チヒロ「フフ、右に同じね。まあ、私は死んでるしモデルはパワプロキャラだし」
マガツ「わっ、親父さんこんなとこに!」
サカイ「私もマイナーでしたかね?結構出番あったような気がするんですけどねぇ…。」
ジオット「困ったなあ。僕が知ってる店はあまり大人数は受け入れてないんだよ。
やっぱりさ、戻って皆さんのお仲間に入れてもらった方がいいかな、これは」
レン「えっ、で、でも…」
イーベル「レンさん!!」
レン「! あ、イーベルさん、ティオさん、クロマツさんも?!」
イーベル「娘が心配だ。このままだと私たちだけ泣き寝入りすることになるぞ!!」
ティオ「そうよ、殴り込みに行きましょ!私たちのこと、忘れてんじゃないわよ!ってね。」
クロマツ「ふざけんじゃねぇぞ、あいつら。
一番酔っ払ってる野郎に鉄拳制裁を加えてやる!!!」
レン「は…はい!……ジオットさん。それじゃあ」
ジオット「うん。風の噂じゃアイハラさんも呼ばれなかったというし…
  カノンちゃんをとっちめるのも、悪くなさそうだねえ!!!!アハハハハハハ!!!」
レン「こ、怖い…」

因みにその頃バーニング・ブレイド軍曹は…というと。
「あああああ…私は天国にいるぅ~~~」
パラダイス・カフェにてトオルやヒトミに色々お世話されていたそうな。

またまた一方その頃…
Mr.K「ワタシハウラボス、ワタシハウラボス、ワタシハウラボス…」



━━ 再びアイハラ視点 ━━

アイハラ「肝心のクロエちゃんが全然見つかりませんがな・・・。」

  ユイ「あ!アイハラさん!」
アイハラ「お、ユイちゃん!と、いう事は・・・。」
 クロエ「アイハラさん!良かった!来てくれたんですね。」
 ヒカル「あ、こんばんは。おつかれさまです。」
アイハラ「おーう、仲良し三人組と鍵にぎちゃんじゃない!
  やー良かった。ようやく見つかった。」
 アケチ「僕たちも心配してたんですよ。カノンさんが会の事を
  知らせ忘れてるんじゃないかって。」
アイハラ「(うん、ばっちり忘れてたよ。) みんなおつかれさん!
  やぁ、うまくいってよかったねぇ。」
 クロエ「ありがとうございます。みなさんのおかげですよ。」

ヒカルが詰めてくれた席に座るアイハラ
アイハラ「はぁーどっこいしょ。悪いねー若者の席にこんなおっさん入ってきて。」
 アケチ「いえいえ。」
アイハラ「そいじゃあオレもなんかもらおうかね。」
 ヒカル「えーと、この席にはアルコール類は・・・。」
  ユイ「あ!ワタシとってきます!」
アイハラ「あああ、いいよいいよ。んじゃウーロン茶で。」
 クロエ「ははは・・・、それじゃあアイハラさんも来たし、改めて。」

 「おつかれさま!かんぱーい!」



おわり


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Author:pwpkkmnriderdcd
パワポケスタジアムで行われた「パワポケ空族祭」の作品をまとめてあります。
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