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空族祭SS FK


No.2

■捏造祭り:SS投稿「マガツの過去」 投稿者:FK 投稿日:2012/03/01(木)
 砂に囲まれた街、パリヴァール━━━━王都から遠く離れたビルが立ち並ぶ
その廃墟にも近い寂れた通りのど真ん中に、彼の店はある。決して華奢な立ち住まいとはいえないが、
その少ない客足は決して途絶えない。一部のものには評判が絶えないほど、いわゆる知る人ぞ知る名店というやつである。

とある昼下がり━━━━。
その店の店主、マガツは、舟をこいでいた。
元より従業員は一人もいないこの店。客足は、2時から3時頃がピークである。
その他の時間帯は普段、めったに人がこない。
しかし、ごく最近、とある少年三人組が早めに現れることが多いので、店開きをすることが多くなったのだ。
もし寝ている中、万が一商品泥棒でも現れようものならば、容赦はしないのでその手の輩は最近結構来なくなった。
だからこうして居眠りをこごうと、あまり心配はしていない。
彼はいつの間にか夢の中へ入っていた。









「ぐああっ!!」
パリヴァールから遠く離れた前線基地…。彼は左肩に被弾した。肩に力が入らない。
次の瞬間、彼は閃光と共に意識が途絶えてしまった。

「うっ、うう…」
「動くな」
目を覚ました途端、彼の目に飛び込んできたのは銃口━━━━
「動くなと言っている。それ以上動くと左腕の意識がなくなるぞ」
「!?…」
彼の左腕は包帯でグルグル巻きにされていた。
「!…それよりここは。俺はどうなったんや!俺の部隊は?お前は…」
(カチャッ)
「!?」
「黙れと言ったはずだ!!!!それ以上言うと首が飛ぶぞ」

それが、彼女とのはじめての出会いだった。

彼女の名はヘルガ=ホワイト。対空中海賊作戦の司令官らしい。俺たちの部隊はこいつらの軍に壊滅させられたらしい。
早い話、目の前にいるこの女性は敵のボスということになる。
「な、なんで…わいを助けた…」
「黙れ」
「クッ…」
「言っただろう。貴様以外に生き残りは一人もいなかった。それが答えだ。」
「…」
「そもそも陸上の機関銃如きで航空機に向かってこようとする貴様らがあまりに哀れだったのだ。貴様の上官は能無しか!?」


「……勝手なことを言うんじゃねえ!!」
「!!」
「わいの…わいらのことを何も知らないくせに…なんじゃその言い草は!わいらだって死にたくてこんな任務しとんちゃうわ!
わいらは国から棄てられたんじゃ!今頃はとっくに死んでなきゃいけない連中なんじゃ!なんで…なんで助けたんじゃあああ!」
(ガン!!)
彼は銃弾の代わりに鉄拳を食らった。
「…やめろ」
(ハッ)
「ふ、ふん!殺したきゃ殺せやあ!」
彼の手元に当然武器はない。勿論没収されているのだ。彼は自分のできる最大限の抵抗を試みた。このまま潔く散ってやろうと思った。
(ポン)
今度は銃弾の代わりに飴が一粒飛んできた。
「!?」
「少し頭を冷やせ。それでも口の中に入れて少し黙ってろ。」
(スタスタ)
「お、おい!待て!待たんかああい!!」

投げられた飴は昔祭典などでよく見たほるひすの面と同じ形をしていた。
毒などが入っているようには見えなかったので、おそるおそる口の中に入れてみた。
彼にとって久々に口にした飴玉はこの上なく甘美な味がした。


「随分甘いですねえ。中佐らしくもない。」
「!…エドゥアルト中尉か。…何が言いたい。返答次第では貴様の左胸に風穴が開くぞ」
「おー怖…大佐、普段は敵は全て殲滅するのが敵に対する最大限の礼儀だとかおっしゃってるじゃないですか。
それなのに生き残りを助けるとは…『あんた』らしくもない。」
「!!…今の貴様の呼称は実に不愉快だ。このまま騒ぎを起こすのを躊躇わなければまっ先に貴様に銃口を向けるところだぞ」
「…」
「…まあいい。似ていたんだ。過去の自分にな。」
「へえ、みじめに飛行機に銃を向ける奴が、ですかい?」
「…彼の目が、な。」


数日後━━━━
「…三食付きの保護の施しは感謝する。」
「…その様子なら暴れることもなさそうだな。」
「で?どうするつもりなんや、これから俺を」
「…貴様の故郷はパリヴァールなのだろう?うちの部下にそこまで護送させる。」
「へっ!開放されたらまっ先に死んでやるがな!こんな敵に捕まっておめおめ生き残ってるなんて母ちゃんに申し訳ないからな!」
「…まだそんなことを言っているのか」
「わかってもらおうなどとこれっぽっちも思っとらんわ。どうせわいの気持ちなどわかるはずもないからな!」
「…………。ああ、わからんよ。知る気にもならん。」

「…」

「…」
「…悪いな…。」
「…なに、慣れっこさ」






「…じさん。おじさん!」
「ん」
「んもう、やっと起きたあ…。そこにある商品お金だけ置いてって帰るか迷ったんだよ?」
どうやら昔の夢を見たらしい店主は黄色い声でやっと目を覚ました。

「…んん…悪いなあ、姉ちゃん…ヘヘ…ん、誰かと思えば例のガキと一緒にいるジャジャ馬じゃねえか。あのガキはどしたんや」
「俺、横にいるよ!?どんだけ寝ぼけてんのマガツさん!?」
「ああ、へっへっへ、悪いなあ。あ、すまんが今何時や」
「もう3時半ですよっ!!主翼の調達に来たっていうのに…全くもう。あ、そういえばマガツさん」
「何や?」
「寝言でずっとヘルガっていう名前、呟いてましたよ?知り合いなんですか?」
「!!」
「なになに、マガツさんのコレ―?」
そう言いながらユイは笑って小指を立てる。
「うっさいっ!そんなんちゃうわ。今日は何か買いに来たんやろ?さっさと金払って帰らんかいっ!」
「あ、じゃあこれとこれ」
「ああ、それアカン」
「え?」
「それはまだジャンク品の奴や。後で改良し直さないとあかん。」
「ええーっ、そんなあ…」
「そう辛気臭い顔すんな。ほれ、飴やっから」
「…わかりました。じゃあ、今日は主翼だけで」
「毎度あり!52000ペラ頂くで」
「はい。それにしてもマガツさん、この飴好きですね。」
「ん?…ああ。想い出の味、やからなあ」
「え?」
「何でもない!さっさと帰れ!」
「はいはい。また来ますよ。」
「ああ、そや」
「え?」


「見つかるといいな…ファントゥーム。頑張ってえな」


「…はい!」



このずっと後、ユウ達一行がネグロ辺りで奴隷商人とドンパチやる中、今は大尉となったヘルガ達と出会って、
カメダ軍団へ協力して立ち向かうことになるのだが、それはまた別のお話。






No.33

■裏サクセス祭りSS「三つ巴」 投稿者:FK 投稿日:2012/03/15(木) 18:23

レンが仲間になって半年…。
ここはファッティホエール号船内ユウの個室━━━━

(チュン、チュン)



(あ。あれ…私…)
レンは目を覚ました。ベッドの上で。昨日の記憶が曖昧だと思って横を向くと、
ベッドの隣の椅子で船をこいでいるユウがいたものだからレンはベッドから飛び起きた。
「きゃああ!!ク…クロエさんっ!?」
「…ん。ああ、おはよう」
「ど、どうしてクロエさんがここにっ!?」
「あ、やっぱり…覚えてないか。ええとだね…。」


(・・・・・・・回想・・・・・・)




「あー…もう」
「ユウさーん、飲んでますかー?」
「う、うん…飲んでるよ」
「ユーウ。あんた飲みが足らねえぞ━━━━!!」
(バシャーッ)
この物語の主人公、ユウはまた悪酔いした二人からビールがけを食らった。

「…おい。」
「はい?」
「誰だ、レンさんは気難しいから一度軽く飲みに行って親交を深めようなんて言った奴は」
「…あたしね。」
ハンチング帽を被ったそばかすの女子が言う。
本人曰く、『こういう若い娘達の心情はね、私たちの方がしってるのよ!』
とかなんとか言って、現在、ネグロの地下街の安い飲み場に居るわけなのだが…。

「なにが『あたしね』ですか、いけしゃあしゃあと。言いたいことはないんですか?」
四角いメガネのいかにも探偵風の少年は、顔を真っ赤にさせ、ジョッキを持った手をプルプルさせている。
もう如何にも怒り心頭に発するといったところだろうか。
「ご…ごめんな…」
「は!?」
「ご…」
「え!!!?」
そばかすの少女はもう半分涙目のところを怒鳴られたものだから、涙腺を崩壊させられた。
「う…うわあああああああん」
「泣いて許されると思ってるんですか、このアマは。責任とってもらいますよ!」

「…すいません、マスター」
「いえいえ、楽しそうじゃありませんか」
「ごめんなさい…お代といい…弁償費といい…前借りしちゃって…いつもいつも…」
「珍しくもないことですよ、ええ。だけど、そろそろ払ってくださいよ?
マガツさんのお知り合いでなければ…たたき出してるところですから」
「ごめんなさい…ごめんなさい…(泣)」


数時間後…
(すー、すー)
「結局、寝てるし…二人とも」
「んにゅう…クロエさん…だいす…」
「!?」
「おやおや、ユウ君~?隅に置けませんね~、なかなか♪」
「…アケチ、キャラ変わってきてるぞ。お前も酒入ってるだろ」
「それじゃその子は艦長に任せましょうか、こっちの青髪は僕が連れていきますので」
「へ!?…う、うん…任せたよ、それじゃあ」
「はい、そこのハンチングさんも手伝った手伝った!」
「ヒック、グスッ」
「いつまで泣いてるんですか、はやくそっち持ちなさい!」
「…やれやれ」


(・・・・・・回想終了・・・・・・)


「…理解した?」
「…す、すみませんっ!」(ペコリ)
「! い、いいんだよ」
「私、研究のためにお世話になっているのにご迷惑おかけしてしまって!」
「いやいや、いいんだいいんだ。僕もごめんねお酒に弱いって知らなくて」
「そ、そうだピンクさん達にも謝らなきゃ!」

「あ。もうちょっとあとの方がいいよ、今は多分頭を痛くさせていそうだから」

(酔った勢い、あの2人はアケチに任せてしまったが、さてはてどうなっていることやら。)

「はい、酔い覚ましの水」

「あ、ありがとうございます」

(ゴクッ)

「ふう…えへへ、ほんと『ユウさん』って頼りになりますね。」


(ブッ!)


暫く二人とも無言の時間が10秒ほど続いた。


「え、えへ…やっぱり、駄目ですか?」




「……いや、レンがいいなら…人前じゃなければ…その…別に…いいよ。俺はとっくに名前呼びだったし。」

(やっば、俺超赤面してないか?動揺するな動揺するな。
うわ、レンも顔真っ赤っか!しかも何両手頬杖してんだよ滅茶苦茶可愛い!お、落ち着け落ち着け)


「えへへ、やっと名前で呼べたあ…すごく嬉しいです!」

(お、落ち着け落ち着け。素数を数えて落ち着くんだ。え、ええと…。)

「そ、そろそろ部屋に戻った方がいいよ。もう早いし…」

「…ユウさん。今夜も部屋来ていいですか?」

「えっ!?いや、みんなの目もあるし…。」

「新しく出来上がったレーダー、ちょっと見ていただきたいんです!」

「う、うん…そういうことなら」

「えへ、やったぁ!それじゃあまた後で!」

レンがドアノブに手をかけて、開いた…その時。


「ユーーーーーーーーウくん!」


突然ドアが蹴破られた。扉の前にいたレンは一溜りもなくぺしゃんこに…
となるはずだったが、間一髪、1m程後ずさりしてその後、腰を抜かした。


「ユ、ユイ…さん!?」

「ありゃ、レンちゃんここにいたんだ。昨日さ、機体整備してたらレーダーに傷があったみたいでさ、
破損してるみたい。ちょっと見にいってもらえる?」

「あ、はい。わかりました!」

「…あ、それと」
「え?」




「…負けないから(ボソッ)」

「!?」

「………」


「………私こそ!」

(バタン)



「あ、あははは。そういやアケチとピンクはどうしたの?」

「なんかケンカしてる。昨日のことはあたしのせいじゃないとかなんとかって」

「そうか…。」(あの二人なら大丈夫だろう)

「ね、『ユウ』。わたし、昨日何かしなかった、あなたに失礼なこと」

「ん?そうだね、酒喰らったこと以外は…!?って、呼び捨…?」


「え?何?///」


(言葉では惚けているが、耳まで真っ赤にしてる…ユイさんのことだ、勇気いったんだろうな…。)


「?」


(よ、よし!)
「そ、そうだね。大丈夫だったよ。あ、そうだ。この前『ユイ』が調整してくれた駆動系のネジ、外れかけてたよ」


「え?」

「・・・・・・」



「そ、そう。じゃ、じゃあ今すぐにも調整してくるね!」


(タタタタッ)


(あーあ…ドア修理しとかないとな。それにしても…うわ、俺、今顔熱くね?)


(ユイさんがいるのになんて事言っちゃったんだろ、私…今夜なんて顔すれば…)


(逃げて来ちゃったけどどうするのよこれ、向こうも呼び捨てで呼んでくれたってことは…同意ってことでいいのよね?
あーもう、どうしたらいいのよー!私どうしちゃったの!?)



三人はこの日一日中悶々とした日々を過ごすことになったとかならないとか。






No.56

「・・・ふう。」



この物語の主人公、クロエ・ユウは両手にバケツいっぱいの釘や螺子、尾翼などの大量の備品を持ちながら
ファッティホエール号格納庫内へと向かっていた。

現在、ファッティホエール号一行は、
ヒカルの入れ知恵で念願の地、ファントゥームへの足がかりが作れることになり、
万全の体制を整えてから出発しようということになり、パリヴァールで備品の交換を行なってから
最後の調整を、ユウたちの故郷であるここオルデルで行なっているのだ。

まあそれでも昼頃までは皆も手伝ってくれていたのだが、流石に現在は深夜11時。
他の人たちは皆明日出発をするため、仮眠を取るなり、飲みに行くなり、大騒ぎするなりしている。
だから最後のメンテナンスという名目で一人、格納庫で皆の戦闘機の調整を最後までやっておこうという魂胆なのである。
本来はこういうのはユイの仕事なのだが、ここ最近疲れ気味な日が多い為、自分が一肌脱ごうと思うに至ったのである。
そして明朝にユイや皆の驚く顔と喜ぶ顔を観たい…などと淡い期待もしているのだそうだ。(笑)
幸い現在格納庫内は鍵をかけていて、合鍵を渡している幼馴染のユイとアケチ以外は入って来れない。
その2人も普段ならぐっすり眠っているので、安心して彼は作業にかかった。
(あんまりうるさくしないようにしないとな)

皆の機体を眺めていると、彼の脳裏には今までの仲間との出会い、冒険の日々など数々の想い出がフラッシュバックした。

スウォンさんのベルーガ。
(スウォンさんにはいつもお世話になってたなあ。先輩としても、経験者としても。
考えてみればカメダ達がいなければ僕達は会っていなかったもんな。これも引き合わせなのかな。)

サクラ「さん」のチェリー・ブロッサム。
(あいつが突然「落ちてる!落ちてる!」なんて言い出したときはどうしたのかと思った。いつもの癖かと思ったけど、
シンドウさんに見てもらわなきゃどうなってたかな…彼女も大変だったんだよな。)

ア…?のアンカンシャス号。
(あれ…「これ」の持ち主、誰だったっけなあ?ま、いっか!一応最終整備しておこうっと!)

ジョンのアイアンバレル号。
(いつもクロノ博士にはお世話になってたなあ。ただ、毎日部屋の修理代をあの人に持っていかれるのは
どうにかして欲しい…。本当にさあ、ジョンもよくあの人に付いて行けるよなあ!(泣))

バーニングブレイドのブレードフェニックス号。
(あの人、ホントに何者だ?この前パラダイス・カフェに行ったらエーコさんとかトオルさんに
「是非私をお供にぃぃぃぃいいいい!!!生死を共に致しますううっ!」
とか言ってたっけ…そして機内に行けばヒトミさんとかテネジーに「神よおっ!手伝うことはありませんかっ!?」だもんなあ…
う、悪寒がする…あいつについては考えるのやめよう、なんか出てきそうだし。)

イーベルさんのローレライ号、サーシャのエーデルワイス号。
(あー…やっぱりサーシャ無茶な運転して…ここ緩みかかってるよ…子供だなあ、あいつも。
でも…俺も子供が出来たらサーシャみたいな奴が欲しいな、って何考えてるんだ俺!作業に集中集中!)

ユジーヌさんのプライマル・ジョー。
(この人から聞いたユウジローさんっていう人の伝説の数々。かっこよかったんだよなあ。
俺も将来あの人のような空族になれるかな?……いや!なってみせる、これから!)

アラタニ氏のサカマタ号。
(しっかしアラタニさん、渋いよな。まさに「漢」って感じ。
でも…あの人、いつも俺達と一緒にいるの、嫌がるんだよな。頼りにはなるんだけど…。)

コウシさんのサウザンド・ガジェット。
(火傷のせいとはいえ、あの人全身に包帯グルグル巻きでどうやって前が見えてるんだろ。
彼女が言ってたブルーメさん…元気なのかな)

パーシヴァルのインゼクター。
(あいつ…連れてって大丈夫かな?何かファントゥームでもよからぬことを思いつきそうで恐いなあ…。虫とか鳥とか)

ユラリのクラウディア。
(あの人…というかお姉さんもだけど、あの人達のしゃべる空気ってすごいよな、改めて。
なんか再会したら再会したで変な空気になりそう。
片方は…めんどくさい人、もう片方はいつも冗談が本気かわからない人だもんなあ
でも彼女も可愛いよなあ。この前ユウキとあんなことがあったと聞いたときは流石に笑ったけど)

キャプテン・アルバットのアルバットウィング。
(これどうなってるんだ!?無闇にネジをはめようとしたら逆にバラバラになりかねないフォルムだぞ、これ。
そ…掃除だけして置いとこっと。)

アイハラさんのしんかい号。
(!? この機体、ミサイルどころか武器が何も積んでないじゃん!今までどうやって戦ってきたんだあの人!?
突撃でもしてたのか??!そ、そうだ!余りもののサイドレーザーがあるからそれを何とか…)


フェイ達のファランクス。
(彼女達は最初に出逢った時から喧嘩ばかりで、いつもこっちはハラハラさせられたっけ。
そしてほんとに殺し合い始めた時はどうなるかと思ったけど。
彼女らも…思いは同じなんだよな。カズさん…俺の父さんの仇…なんだよな。でも…信用していていいんだろうなあ…。
カズさん達も今まで通り、俺も今までどおり…。)

(グッ)


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(ふう…これであらかた終わったかな。あとは自分のと…「こいつ」か。)



ヒカルの「A-wing」こと…『ギリュウ』。
(これに関しては…俺の手出しできるもんじゃないからな。掃除位しか…。)
彼の、言わばかっこよさと共に化け物のような恐ろしさも感じる機体。
彼は機体を見上げながら、物哀しさを感じざるを得なかった。
昨夜のことが自然と思い出された。
彼…いや、彼女が自分の正体を明かしてくれた時のこと。


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「し、正気ですか?!そんなことをすれば、あなたも…!」

「全てが終わった後のことです。僕の運命は、元より決まっていたことですから。」

「そんな…!だってあなたは…!」

「僕が撒いた種なんです…僕のケジメは…僕がつけたいんです!」

「……………」

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「へへっ、どこまでも無茶な奴め。」

(無茶な合体して一緒に火山に飛び込んだりもしたじゃないか!生死を共にした仲間じゃないか!!!!
今までだって仲間のピンチに掛け合ってきたのに…どうして…どうして今になってこんなことに…)



「…クソっ!」

「…『あいつ』が心配?」


(!?)


ユウが振り返ると、そこには彼の幼馴染である、青髪の少女が立っていた。


「ユイか。脅かすなよ、心臓に悪い」

「アハッ、ごめん。何か…寝れなくてさあ…。 ねえ、ユウ。昨日のことが、そんなにショック?」

「!…いや。」

「ウソ。顔に嘘って書いてある。…私も、ショックだった。」

「……………」


「ヒカルちゃん、どうするんだろうね。本当に…行っちゃうつもりなのかなあ?一人で。」


「……………」


「……………」



「あいつのおかげでファントゥームの謎が半分以上解けた。俺たちがあいつに文句を言うのはお門違いってもんだろ」

「…! ユウ!」
(バッ)
あまりに冷たい物言いにユイが振り返ると、




「でもさあ、どうしてなんだろ。こう、胸に、空いたさあ、虚無感っていうかさあ、
クッ、明日俺達は仲間を殺しに行くみたいなさあ、ヒック、どうすることもできないさあ…グスッ、ウッ、クッ…」
ユウは自分でも涙をこらえ切ることができなかった。

「…ユウ」












(チュッ♥)
ユウは頬に柔らかい感触を感じた。



「!…クッ、ユイ?」

「アハッ、初キッス、しーちゃった★」

「ユイ…………ウッ…ヒッ…ヒック…」





(ポロ…ポロポロ)
「それにさあ、まだヒカルちゃん…がいなくなると決まった訳じゃないし…あれ、どうして…だろ、あたしも泣けてきた…
あ…はは、ど…ど…う…して…。う…う…ううううううう!!ふええ、えええええええん!」

「くっ…う…う…うわああああ。うおおおおおお、ああ、ああああああ!うわあああああああああああああああ!!!!」

二人は寒空の下、小一時間涙を流した。






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フィデール号の掃除と整備を粗方終わらせ、ユウとユイはフィデール号のそばに腰掛けていた。
もちろんユイは作業のため、上着は脱いでいる。かたやユウも皆の整備を終わらせたばかりなので上は下着一枚、軍手はしていたが体中真っ黒になっていた。

「はい、コーヒー」

「お、サンキュ」

「ううん、お礼言わなきゃいけないのはこっち。ほんとは整備は技師長の私の仕事なのに…」

「いいんだよ、仲間が増えて整備も大変になってきてたろ?明日は大事な日だし、ゆっくり休んでればよかったのにさ」

「ユウ…♥」

「!…あ、そうだユイちょっとこっち向いて。顔がすすだらけだぜ。」

「もう、みないでよ!」

「アハハ!取ったげるよ。あれ?えーと…」



(チュッ♥)
今度は彼らは口同士で感触を感じた。
すすとコーヒーの香りが立ち込めた、常人なら我慢できないような接吻だったが、2人は気にもしなかった。


「む!…んー…ぷはぁ。もう!」


「これでさっきのおあいこってことで!」

「もう、それは女の子の台詞だよ!」

(アハハハハハ)

「ね。…せっかくだから…もう1回…して?」


「!?……………」

「は・や・く♥」


「……………わ、わかったよ」


(んー)

2人の口間の距離が再び3cm未満に達した…その時、




「…楽しそうで何よりですね。」

「?!」

二人だけの世界にいたご両人を現実に引き戻したのは同じくユウの幼馴染である探偵風の服を来た少年だった。

「あ、アケチ君!? な、なんでここにいるのよ!?」

「ユウ君に話があったから部屋に行ったけどいないから来たんです!しっかし、あなた達暫く見ない間に随分な仲に…」

「ご、誤解だアケチ!これには訳が」

(ムッ!)

「そ、それにそういうお前だって気が付けばテネジーと…!」

「!…僕のことはいいでしょう!」

「あー、赤くなったー!このー、白状しろー!」

「なあ、どこまで進んだんだよあいつとは、あん?」

「はあ…もういいですよ、降参です。それよりちょっとどいてください。」

「へ?」

アケチはまっすぐフィデール号の方向へと向かったかと思うと、コックピット内のレンお手製の最新レーダーを覗き込んだ。

「やっぱり…端末で確認した時はこんな時間にまさかと思いましたが。敵が来ます!」

「え!!?わ、悪いアケチ。ちょっと俺にも見せて!?」

「ちょっと誰よこんな時に、もしかしてリコじゃない!?」

「ええーーー!!?ちょっと勘弁してくれよぉ」

「お喋りしている場合ですか、きますよ!もうす…」





(ドッカーーーーーーーーン)



「ふん、やっぱあのババァ(※1)が作った爆弾じゃこれくらいが限界か。さて…と。」
<※1=ババヤガンのことです。>


(コツ、コツ、コツ)


「ふん、これがあいつのなんとかウィングってやつね。つまりこいつをぶっ壊せばやつらは術を失う訳ね。ハハッ、いい気味」

(カチャ)

ユウは侵入者の頭上に頭巾越しから彼のエンフィールド・リボルバーを突きつけた。

「何しにきた…ヨミチ」

(シュッ、サッ)
彼女は暗器のジャマダハルで素早く彼の腕を切りつけ、難を逃れる。

「ぐっ!?」

「私に銃突きつけるとはやるじゃないの。何、なんか文句ある?」

「あなたはパリヴァールで出会った…!敵自ら奇襲してくるとは…!」

「クッ…お前…お前のせいで俺達の仲間は…お前を信じた仲間はっ…!」

「ああ、あのキュウリ野郎(※2)のこと?そういやあたしが瀕死にしてやったんだっけ。あいつ、無事?」
<※2カナ=キュリーのあだ名です。>

(ギリッ)

「ていうかさあ、あんたとのんびりくっちゃべってる時間は無いの。どいて…もらおうかしら!」

「させるか…よっ!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<ヨミチとの戦闘になります。パーティはユウ、ユイ、アケチの3人で固定されます。敗北すれば当然の如くゲームオーバーです!>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「へっ…ぐぇ、ふふ。や…るじゃないの。」

「アケチ、何というか…流石だな。お前がグレネードランチャーを誤射しないとは。」

「ふっ、人間、集中してると何かしら成果はあるものですよ」

「何!?じゃあいつもは集中してないってのか!」

「く…ふふ、あんたら、敵が目の前にいるってのに…漫才?余…裕……ね。」

(キッ)ユイはヨミチを睨みつけた。
「あんたの脳天にあたしのモンキーレンチが炸裂したってのに喋ってられるあんたの方が凄いわよ。」

「く…ガハッ…!あたしはこんな…とこで…終わらないわ…よ…!」

「あきらめろ、悪いがお前は暫く…」

(サ、サ、シュッ!)
「ガハッ!!!!」

「ユウ!!」

「まだあんなに動ける気力があるとは…ただの少女ではない…化け物ですか、彼女は!?」

「ユウ、ユウ!!しっかりして!ユウ!」

「ク…くそっ…」
ユウは猛毒に侵されてしまった。

「へ、ヘヘ。ざまあ見なって…んだ。だけど…あたしもげん…かいか。」

(ポイ、ポイ)

(ドカカーーーーーン!!)

「?!」

(パチパチパチ)
「くっ、しまった、手榴弾を…!ああ、フィデール号が!?」

「い、ヒ、ヒ。アタシなんかに…構ってる場合?」

「クッ、早く消さないと!」

「本来は…あのガキの…でかい奴を始末する…予定だったのに…だ…が…艦長のを仕留められたなら、上…出来だ!」

「!…この…野郎…!」

「ユウ!お願い!もういいから!喋らないで!」
ユイは涙目になりながら必死にユウの傷口から見よう見まね半分で血管の毒を吸い出している。

(シュッ)

「?! …消えた!?どこ行きやがったアイツッ!」

「ユイさん、そっちはいいから!ユウ君の血の毒を吸い出したら消火作業手伝ってください!」

「ま…待て…待てよ…ヨミチイイイイイィィィィィっ!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ババヤガン専用機、ホーンドオウル号内…。

「相変わらず無茶するんですから、あなたも。カメダ様にどう説明するつもりですかぁ?」

「うるせぇ…。あん…な…変態メガネ…のことなん…か…どうでもいい…ってんだ…」(バタッ)

「あらあら、気絶しちゃいましたねえ。それにしても…奴らの力は地上戦でもここまで強大、ですか
全く…だからめんどくさいことせずにこの護衛艦ごとぶっ壊してしまえとカメダ様は言っていたのに」


(!この女…情けが移ったんでしょうか。…
これは…油断できなくなってきましたねえ。私は私で彼らを待っておくとしますか)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌朝━━━━


「一応応急処置はしておきましたが…出力不足はやむを得ませんよ。」

「ありがとうございます、ソネットさん」

「しっかしあなた達も随分ドンパチやったんですねえ、こんな狭いところで。
飛行機を直しにやって来て壊されるとは本末転倒もいいところじゃありませんか。」

「すみません…。」

「!…ソネットさん!ユウはカメダの手先を…!」

「ユイ、いいんだ」

「…!その腕の傷を見るに只の手練ではないと思っていましたが…そういうことですか。」
ユウの右腕にはエンゼルの薬箱から出してもらった包帯でグルグル巻きにされていた。

「ごめんなさい…つい…熱くなってしまって」

「フフフ、いやいや、素晴らしい。艦長らしい態度です。本当に彼女のお父さんにここまで似るとは…」

「!…パパに?」

「実はですね、昨夜私トウヒさんにターニャさんの酒場で初めてお会いしてきてですね。少し晩酌を交わしてきた訳ですよ。
お酒の飲みすぎで少しお体をいわされてるようでしたが…成程噂通りのお方だった。」

「!」

「それでですね、これは完全な独り言なのですがね、いよいよ明日出発だということを告げたら、
何を勘違いしたのやら一人で泣き出しまして、勝手に昔話を始めたんですよ。
なんでも自分の家の倉庫に現役の頃乗っていた機体を修理したものがあるんだそうで、
それはレプリカには違いないのですが、クセが強い代わりにパワーや性能は相当のものなんだそうです。
で、出発するときそれを持って行けと…」

「!…」

「!………ユイ、アケチ、悪い!すぐ戻る!」
(タタタタッ)

「あ!…待って、ユウ!あたしも!」
(タタタタッ)

「…あ、ちょっと…すみませんソネットさん。失礼します!」
(タタタタッ)






「フフ、…やはりよく似ている」
ソネットはキセルを取り出し、一服した。






ユウが外に飛び出した瞬間。
彼の目にフィデール号の1.5倍はあろうかという機体が飛び込んできた。
その機体を見た瞬間、彼はそのフォルム、その構造、全てが彼のハートを直撃した。
いわゆる一目惚れというやつであった。

「こ、これが…」

「おう!持ってきてやったぞ」

「ツチさん、ボボ!そして…」

「よっ」

「トウヒさん!!!」

「ソネさんに聞いてさあ、近くにいたこいつを持ってくるの手伝えって言ったらさあ、てんで役に立たないんだよ、こいつが」

「う、うるさいでバッタね!飛行機乗るのはどうしても慣れないバッタよ!怖かったバッタ~。」

「ヘッ」

「トウヒさん、これが…」

「おう!これがわいの元現役機、サージュ号や!!」

「す…すごい、すごいすごい!!!わあ…」
ユウは仔犬のような潤んだ目で機体を眺めていた。眼がキラキラしているという擬音はまさにこういう時使うのだろう。

(タタタタッ)

「…パパ!!」

「おう、ユイ!どしたんやーお前ー!帰ってきたなら挨拶の一度くらいしてから行けえや人が悪いのお!」

「…もう!そういうのが恥ずかしかったから行かなかったんだよ!!」

「工場長!お久しぶりです」

「おう、眼鏡坊主!(※3)なんや暫く見いひんうちに面構えが変わったな、旅の途中にコレでも出来たか?イシシ」
<※3=勿論アケチのことです。>
トウヒは笑いながら小指を立てた。

「!!」

(アハハハ)

「冒険が終わったら家帰ったれよ!あいつら心配してたで~」

(スチャ)<←メガネを戻す音>
「…はい!必ず!!」

「そして…おいユウ!!」

「はい!!」

「何ボケっとしてんねん。何やいらへんのか、サージュ号?」

「い、いや!トウヒさんの愛機を頂けるとは思ってなくて…!」

「何勘違いしてるねん、やらんわ!!貸すだけや、暫く!」

「へ?」

「ファントゥームから帰ってくるまでの期間付きでこいつを貸したる!墜落させたりしたらただじゃ済まさへんで~」

「……」

「……」

「…はい!絶対、生きて帰ります!!」

(ガン!!)

「痛っ!?」

「へっ、いっちょ前の口ぃ聞くようになりやがって」

「パパったら!」

(アハハハハハハ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

━━━━ 一時間後。

「よしみんな!準備は出来たか?」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「はい!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「じゃあ最終点呼!!」

「ちょっと待ってユウさん!」

ポンチョを着た少女が手を挙げた。

「どうしたエンゼル?」

「…いや、何でもない、ゴメン!」

「? どうしたんだよ、余計に心配するじゃないか。」

「え、ええと…。もし、もしだよ。ファントゥームで私がいなくなっても…」

「!?」

「ご、ごめん!本当に何でもないんだ、今のは聞き流して!」

「あ、ああ…ええと…。それじゃ改めて点呼取るよ!」」


━━━━ そして。

ここはサージュ号内部。

「えへへ、ユウと一緒に飛行機乗れるのって幸せー♥」

「ははは、あんまりはしゃぐなよ?…それじゃ」

「ファッティホエール号、点火用意!!目標、ファントゥーム!」

「こちらアクイラ2(「A-wing」)。先に離水します!」

「了解!!道標を頼む」

「3」

「2」

「1━━━━」



「点火!!」
整備員の声が一斉に響きわたる。


そして…
「こちらアクイラ1(サージュ号)。離水する!」

(これが、俺たちの)
(私たちの初めてのフライト…!)

「いくよ、ユイ」

「うん…!」

(ガコン)

(ブオオオオオオオオオオ)

ユウ・ユイ「「点火!!」」






オルドル地上では片足の中年男性が空を見上げて叫びを上げていた。
「………………生きて…帰って来いやああああああ!!!」




(ユウがパワーアップした!)
(ユイがパワーアップした!)
(アケチがパワーアップした!)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ここはオルドルとは遠く離れた辺境の地…。
「さて。俺も行くか。面白そうな臭いが、あの浮遊城に漂ってる。待ってろよ、エンゼル。」


とある大男が乗った飛行機━━━━レッドドラゴン号が離水した。







No.94
■オマケSS「新たな門出」 投稿者:FK 投稿日:2012/03/23(金) 23:27

ファントゥーム崩壊後、一年が経過した。

皆がそれぞれ自分の帰る場所に戻り、ヒカルは空へと帰っていった。
そして、ある者とは笑顔の、ある者とは涙の別れをした。そして、ある者は主人公と共に残るという決意をした。
そして…皆が望んだ、平穏な日常が戻ってきた。



━━━━そんなある日。

ここはオルデルのとある工場。看板には「飛行艇製造アブニール」とある。
中から工場員達の叫び声が聞こえる。
「おはようございます、社長!」
「あはは、堅苦しい挨拶はいいからさ。いつもの作業始めて」
「「「「はい!!」」」」



社長室のドアを開けたのは━━━━、クロエ・ユウ。

彼は1年前の惨劇の終焉を迎えることで、彼は世界中で英雄として称え崇められた。
しかし、彼は真実を明らかにすることで、また様々な出会いや別れ、触れ合いや悲劇など様々な喜怒哀楽を体験した。
彼にとって、全てが過去のものになろうとしていた━━━━。

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(もう…時代遅れなのかなあ。飛行艇という概念が)

彼は髪をかきあげながら、経営の計算をしている。ここのところ経営が斜め下がりになってしまい、苦労する日々が続いていた。
(新しい分野…ユイたちが言っていた、家電…とかか。それもいいかな。ふぅ…)

ふとユウは椅子から立ち上がり、クローゼットを開けた。






彼の1年前の服が…そこには残っていた。

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作業員が仕事をしている中、ラジオからとある臨時ニュースが飛び込んできた。
それは作業員に一時作業を中断させるほどの力がある一報だった。
「えー、只今入った情報によりますと、ちょうど1年前に世間を騒がせた浮遊城によく似た形状をした
浮遊城が北極上空で観測されたということです。更に200年前に発見された新大陸ホープランド上空、更にはウンガルフ上空でも観測されたという情報が…」

「「「「!!」」」」


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アブニール社、社長室━━━━



「「「「社長!!大変なことに」」」」
「わかっている。俺もラジオで聞いた。くそっ、どういうことだ!!?レッドさんやヒカルたちの頑張りで、
ファントゥームは永久に空へと帰ったはず…。君たちは業務に戻れ!!」
「「「「は…はい!!!!」」」」
(まさか…ヒカルがこんな形で帰ってきたのか!?いやいや、まさか)

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ここはアブニール社7号倉庫━━━━
ユウは合鍵で鍵を開けた。
ここにはトウヒの元現役機、サージュ号が眠っている。
1年前、ガンダーとの戦いで大破したサージュ号だが、故郷に帰るなり一応の修復をして、保存してあるのだ。
「…トウヒさん」
現在、トウヒは病院にいる。酒との付き合いのせいで、肝臓が悪くなっていた、と彼の主治医は語っていた。
「俺は…アブニール社を守らなくちゃいけないんだよな、うん。今更俺が…」
(グッ)



(キラッ)
サージュ号のコックピット内で何かが光った気がした。
ただのほこりとは思えなかったトウヒは、急いでよじ登り、内部を調べてみた。
そこにあったのは━━━━

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6年前━━━━


「おい、アケチ!これなんだよ、汚ったない人形だな」
「失礼なこと言わないでください!これは先祖代々伝わる人形で、野球ができるという代物なんですよ」
「ヤキュー?なんだそれ変なの」
「野球知らないんですか?!ふぅ…。これは様々なパーツで構成されたですねえ…。」

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「どうして…サージュ号にこんなものが…。」
アケチが置いていったのか?いやいや、わざわざ置土産にこんなものを置いておくとは思えない。
だとしたら━━━━。


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アケチ宅━━━━

「こんにちはクロエさん!」
「あ、ああ…。テネジー、こんにちは。」(一瞬昔のメイド服じゃなくて秘書のような格好をしてるから誰だかわからなかったぞ。でも相変わらず巨乳だなあ…。)
「社長なら2階でお待ちですよ」
「ああ、悪いね」





「やあ、クロエ君ご無沙汰しております。いつも我が社の口座をご利用くださいまして有難うございます。」
「堅苦しい挨拶はいいって…俺がそういうの嫌いなのは知ってるだろ」
「ハハハ、一応形式上、ですよ。…で。要件はなんでしょう。………その……また冒険に連れ出…」
「頼むアケチ!書斎を見せてくれ」
「は?」
「お前と子供の頃、よく遊んでいた書斎!」
「え、ええと…わかりました。」

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アケチ宅に出向く2時間前にユウが耳にした、その日の夕方のラジオのニュースは、ユウの予想を裏付けるものだった。
「嬉しいニュースが入ってきました。只今入った情報によりますと、世界各国、各地方で、古代に発掘されたと言われる
通称『野球人形』が大量に発掘されたということです。ブランシェの金塊発掘場にて120体、ネグロの…」

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アケチ宅書斎内━━━━


「あんまり引っ掻き回さないでくださいよ」
「ええと…。ええと…。あった!!!これだこれ!!」
「それは…」


ユウは「~野球人形の書~第二巻」と書かれた分厚い書籍を取り出すと、ページをパラパラめくる。
その152ページに書いてあったのは、紛れも無く自分が確かめたいことであった。
「…やっぱり…!!」
「ちょっと、どういうことですか?説明してくださいよ」
「アケチ…俺、やることが決まったみたい!!今までありがとう!!!」
「ハ!?あ、あの、ちょっと!!」
(タタタタタッ)

「ふう…一体どういうことなんでしょうか。言いたいことだけ言って出ていってしまわれて…」
アケチはユウが置いていった書籍を拾い上げ、ユウが見ていたページをのぞき込む。その瞬間、彼の顔色が変わった。



~野球人形に関するパーツ、動力に関する謎は未だ解明されたいない。だが、偶然とも捉えられるが、50年前に空族が発展し、
様々な飛行機が地球上空に飛び交うようになってから、発掘量が激増したということは事実であり、何らかの関係性があるという一説が存在する。~


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(タッタッタッタッ)
(間違いない…あの浮遊城には、野球人形に関するエネルギーがある!なんでそれらが地上に来てるかはわからないが…
もし万が一浮遊城ごとに不死身のゴーレムも存在するならば…万が一ゴーレムが地上に降りて来たりでもしたら…これは大変だぞ…
行方不明になったカメダが潜んでいる可能性もある…万が一ヒカルも…いるかもしれない!)


「ただいま!」
「あ、社長おかえりなさい!そういえばユイさんが一度社内に来てらっしゃいましたよ」
「ああ、ありがとう。なんて言ってた?」
「いや、特別何も…。社長がお出かけ中だとおっしゃったらお帰りになられました。あ、でも…」
「?」
「そうだ思い出しました。前社長が、退院なされたそうです!」
「!!」

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トウヒ宅書斎内━━━━

ユウはトウヒに深々と頭を下げていた。


「…お願いします!」
「…お前はなあ、年上に対する敬意ってもんがないな。お前は一度社長の座を降りた病み上がりの爺にまた復帰しろって言ってるんやで。」
「………すみません。」
「…浮遊城、か?」
「!!!!…はい。」

「…………」

「…………」

「ハァ…勝手にせえ。……今度は…帰りが遅くなりそうやな。」

「……すみません。」

世界中の浮遊城を巡るとなれば、それこそ1年や2年ではすまない。ユウも覚悟はしていた。

「…持って行け。」

(チャリン)

「…これは………!!サージュ号と…ファッティホエール号のエンジンキー!?」

「これからあと人生が10年あるかないかのおっさんが持ってたって、しょうがない代物や。もうありゃあ…お前が持っとき。」


「!!!!!」



(ポロ…ツー)
「あ…ありがとうございます…有難うございますっ!!…ヒック…」
(ポタ…ポタポタ)


「礼なんかええわっ!!とっとと行っちまえっ!!」



「…失礼しますっ!!!」
(バタン)


「ふん、どうせ『あいつ』も行くんやろが…折角…折角よお…
一緒に暮らせると思ったのに…畜生っ…!あいつらも…大人になったってことなのかい…
チクショオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


その日の深夜、
アブニール社18号倉庫━━━━

本来ここに来るつもりはなかった。フィデール号だけでただ一人、出発するつもりでいた。
今回のことはただの自分の我侭だ。仇や復讐と言った理由も存在しない。こんなことに皆を巻き込むわけにはいかなかった。

「トウヒさん…」

彼は再びファッティホエール号の保管してある倉庫に入った。1年前とは何一つ変わっていない身なりで。
ボロボロの半袖の作業着に、サングラス付きのエアキャップをかぶっているだけである。
せめて皆の思い出は、旅のお供に持っていきたかったようだ。

ファッティホエール号は、機能の80%を自動操縦にすれば1人でも操作はできる。出発だけなら問題ないだろう。
「前途多難だな…また、仲間を集めることからやり直しか…」

(ポロ…)

(な…泣くな…泣くなよ、俺…!死にに行く訳じゃないんだぞ、そうだよ、全ての浮遊城をまた…空に戻すだけだろおっ!!?)
もう彼のそばにヒカルはいない。どうするべきかわからない。全てを手探りで進まなければならない。暗中模索の世界だ。
自分で決心したことではあるが、彼は終わりの見えない旅に一人、絶望を抱き、一人頭を抱えて泣いた。

(仲間が居ないと…こんなに心細いものだったんだ、冒険って…)

今までどんなことがあっても僕の側にはユイがいた。アケチがいた。皆がいた。個性的な人々がいた。
だから、どんなに困難なことでも力が振り絞れた。
それが、今は、全く居ない━━━━。
「うっ…うっ…うお…うおおおおおおおおおお。わあああああああん。」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

彼がアブニール社7号倉庫に到着した…その時。

ユウは倉庫前に2人の人影を見た。
一瞬ただのカップルかと思った。しかし、彼らの姿を見るなり、ユウは素っ頓狂な声を上げた。
二人はどう考えても不機嫌にしか思えない顔をしていた。

「な…な…何でここに…」
「おやおや、来ましたよ」
(ツカツカツカ)
「ユウ…一発殴らせて」
「へ!?」


(バッチーーーーーン)


ユウは青髪の少女にビンタを食らった。思いっきり叩かれたユウの体は20cmほど吹っ飛ばされた。




「てーーっ…。な…なにするんだよっ!!」

「こんの……アホンダラーーっ!!!なんであなたは…あなたは全部一人で溜め込もうとするのよ!!」
(ポロ…ポロポロ)
ユイは大粒の涙を流していた。

「!!………」

「貴方の置いていった書籍を見て…嫌な予感はしましたが…何をするつもりだったんですか、あなたは!!!」

「……」

「全部トウヒさんに聞きましたよ。クロエ君、まさかたった一人で黙って出発するつもりだったんですか?!」

「……」

「パパ……泣いてたよ。折角病気が治って、これからって時に。ユウ、私たちもユウが黙って行っちゃったら…一生恨むよ、ユウを」

「!……」

「ユウは…焦ってるの?世界を救いに行くため?それとも…ヒカルを迎えに行くため?」

「!!!!」






(ツーッ)
「…ヒック…ぐすっ…くっ…」
(ああ、俺は、…馬鹿だ。俺にはこんなにも身近に自分を気にしてくれている仲間がいたのに…目の前に。
一人でなんでも解決しようとした、どうしようもない馬鹿だ!)

「ご…」

「!」


「ごめん、二人とも!!!」
(バッ)

「相談しなくて…ぐすっ…ゴメン!自分勝手で…ヒック…ゴメン!!!!!!!…ヒク、グス、…」


「ユウ…」

「クロエ君…」



(チュッ)

下を向いて謝りながらただただ涙を流しているユウの顔をグイッと上げ、ユイは口付けを交わした。

「!?」

「バーカッ♪」
(ニコッ)

「ユイ…」


「やれやれ…お熱いですね。人の目を気にしないとは。」

「!!!」
(バッ)
慌てて顔を真っ赤にした両名は顔を離す。

「私もですね。…銀行の業務をテネジーに任せてきましたよ。クロエ君。貴方は…一人なんかじゃありません。
僕達は…永遠の仲間なんですよ!」

(グイ)ユウは袖で涙を拭いた。
「うん…うん!!!ほんとにゴメン…そして…有難う!!」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


明朝、ファッティホエール号司令室内━━━━


「パパが言ってたよ。1年毎には帰ってきなさいってね!やっぱ寂しいんだよ、パパも」
「テネジーにも最初は止められましたよ。この借りは大きいですよー?クロエ君。」
「ブランシェやネグロにも今までの仲間たちにも会ってみようよ、まずは!
もう一度行ってくれるみんなもきっといるって!」
「ヒカル君も、沢山の仲間できっと…待ってるはずです!」

「………ああ!それじゃあ」


ユウは握り拳を2人の前に突き出した。

「おーうっ!」
「はい!」

(コツッ!)

ユイとアケチはそれに対して握り拳をぶつけた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

午前8時。

オルドルの広場でファッティホエール号が煙を上げた。

「エヘヘ…久しぶりだね、こういうの!」
「全くです。」
「…それじゃ!」

(ブオオオオオオオオオオオオオオオ)


「「「ファッティホエール号、離水!」」」





(あらたな冒険のはじまりだ!)



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パワポケスタジアムで行われた「パワポケ空族祭」の作品をまとめてあります。
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