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空族祭SS F・S


No.26

■模造祭り イベント投稿 投稿者:F・S 投稿日:2012/03/12(月) 23:53


すれ違いイベント1回目『変な人たち』


ユイ 「ん~買出しはこれで終わりかな」
ユウ 「うん、これで全部だね。じゃあ、帰ろうか」
ユイ 「そうだね……? 何だろう、あの人たち」
ユウ 「ん? 何だろうって……へ?」


教授 「う~む、困ったのう。まさか買ったとたんに読み始めるとは」
ジョン「それだけ読みたかったのかな……(←背負っている)」
イオ 「……(←背負われている)」
教授 「できれば秘書の嬢ちゃんが帰ってくる前には帰っておきたいがの」
ジョン「でもお嬢様って本を読み始めるとなかなか動かないし。それに、このまま背負い続けてるのも手が疲れて(←背負っている)」
イオ 「……(←背負われつつ読書中)」
教授 「まあ、そこらへんのカフェにでも入って読み終わるのを待ってみるかの。時間までに読み終わりそうに無いなら無理やり座席に詰め込むしか無かろうて」
ジョン「……そうしようか(←背負っている)」
イオ 「……(←背負われつつ黙々と読書中)」


ユイ 「……」
ユウ 「……」
ユイ 「今の人たち、何だったんだろう……」
ユウ 「僕に聞かないでよ……」


すれ違いイベント2回目『変な人たち再び』


キョロキョロ

ユイ 「あの人なにしてるのかな?」
ユウ 「何か捜してるみたいだけど? あ、こっち見た」
シアン「! あの、すみません。こちらに『バカ』っぽくて飛行服を着た男と、緑の長髪の女性と、怪しい格好をした老人の三人組がこちらへ来ませんでしたか?」
ユウ 「(心なしか、『バカ』の部分に力が入っているような……)いえ、見てませんけど」
シアン「そうですか、ありがとうございます……おかしいな、こちらへ逃げたはずだが」

タッタッタッタッタッ

ユイ 「ね、ユウ君」
ユウ 「何?」
ユイ 「あの人が言っていた三人組ってさ……どっかで見たこと無かったっけ」
ユウ 「そういえば、前に見かけたよう(ゴトゴト)」

カパッ

ジョン「行ったみたいだな。よいしょっと」

ユウ 「って道端の樽の中からから人が!?」

教授 「やれやれ、ちときつかったの」

ユウ 「また出てきた! 二人も入って」

イオ 「……(ひょこっ)」

ユウ 「さ、三人目?」
ユイ 「ユ、ユウ君! あの人達って前に見たことない?」
ユウ 「うん、前にすれ違ったことのある……変な人たちだよね」

ジョン「いや~危なかった」
教授 「もう少しで見つかるところじゃったの」
イオ 「……うん、つかまったらオークションに行けない。今回出品される中に古代人が使っていた辞書がある……ぜひ読みたい」
ジョン「じゃ、オークション会場へ急ごうか……ってお嬢様? 何で樽の中に立ちっぱなし?」
イオ 「……めんどくさい」
ジョン「え」
イオ 「……走るの」
ジョン「……はぃ」
教授 「ま、がんばれ若者」

タッタッタッタッタッ

ユイ 「……」
ユウ 「……」





No.40

■すれ違いイベント3回目『変な人たち三度目』(上) 投稿者:F・S 投稿日:2012/03/15(木) 23:58

ファッテイホエール移動中……


アケチ「クロエ君、大変です! 緊急用周波数でSOSが発信されてます!」
ユウ 「何だって! それで内容は?」
教授 「『こちらアイアンバレル! 現在ポイント○-●-◎にて空中海賊の襲撃を受けておる! 誰か救援……』(ガンガン)うぉっと!」
ジョン「っつ! 爺さん、大丈夫か?」
教授 「大丈夫じゃ、コクピットへ直撃はしておらん。この調子で避けるんじゃぞ! わしは通信を送り続ける!『こちらアイアンバレル……』」
ジョン「くそ、事前の調査じゃこの辺りには空中海賊の話なんか無かったのに」
教授 「新しく進出してきたのかもしれんの。最近はどこもカメダ軍団が暴れておって連中もやり辛いんじゃろ」
ジョン「かもね。それで、通信のほうは?」
教授 「……今のところ反応なし。航路からは大きく離れてはおらんから誰も聞いてないということは無いと思うがの」
ジョン「援軍は期待できそうに無いなぁ。しかも相手は5機、今のところは何とかなってるけどっ!(グイッ)」


ダダダダダダダダダダ    ガンガンガンガンガン!


教授 「おーお-撃たれとる撃たれとる。こいつじゃなきゃ何回撃墜されとることやら」
ジョン「コクピット以外なら何とかなりそうだ。でもいつまでもこのままじゃいずれ落とされちまう」
イオ ピッ『……ジョン君、お爺ちゃん。いざとなったら』
教授 「お嬢さまを差し出して、というのは無しじゃぞ」
ジョン「ああいう手合いは身代金を取ったあと、生かして返してくれるとは限らないしね。何よりもシアンに泣かれる」
イオ 『……でも』
ジョン「いざとなったらロケットで加速してて引き離す。そのときは合図するから」
教授 「うむ。まあ直線飛行しか出来んから一時凌ぎにしかならんがの。座席に深く腰掛けて身体をしっかり固定して前を向いておくんじゃ。そうすれば最悪気絶ぐらいですむじゃろ」
イオ 『……うん。二人とも気をつけて』ピッ
ジョン「爺ちゃん、インカムを使わなきゃコクピット内の会話は洩れないよな」
教授 「うむ。客室とは直接繋がっとらんからの」
ジョン「最悪、なんとしてもお嬢さまだけは返してあげないとな(グイッ)」


ガンガンガンガンガン!


教授 「とりあえずSOSは発信し続ける。最悪は墜落を装うしかないの」
ジョン「それであいつらが諦めてくれるんならね。それにしちゃ降伏勧告も無いのが気になるけど」
教授 「確かにのう。ま、切り抜ければええ。『こちら……』」

ダダダダダダダダダダ

ジョン「真後ろに食いつかれたか……なら、こいつで!(ボシュ)」
教授 「よし、うまいこと煙幕に巻き込んだか」

ジョン「今だ、スロットルを絞って……」

ジョン「後ろにつけた! もらい!」

ガガガガガガガガ    ……ボンッ!

ジョン「よし、何とか1機撃墜!」
教授 「とはいえまだ4機もおるの(ピー)」


『聞こえますか、こちらファッティホエール号! 直ちに救援を飛ばします、こちらの指示する方角に飛んでください!』


教授 「よし! 運が向いてきおったわ! 『受信した、こちらアイアンバレル号!』」
ジョン「とりあえず何とかなった……のかな?」





No.50

■模造祭り イベント投下 投稿者:F・S 投稿日:2012/03/17(土) 21:00

ユウ    「レンさん! 敵機の位置と高度の確認を!」
レン   「はい、位置と高度は……」
アカリ  「イーベルさんはクロエと編隊を組んで。私は攻撃を受けてる機の援護に回るわ」
イーベル.「了解した、宜しく頼むぞクロエ」
ユウ    「よし、出撃!」


レン   『敵機の高度に大きく変化なし。防衛目標はこちらへ直進、このままの速度ですと20秒後に交戦区域に入ります』
ユウ    『アクイラ1、了解』
イーベル.『アクイラ2、了解』
アカリ  『……こちらアクイラ3、見えたわよ。敵機及び目標、共に12時(正面)下方に確認』


ジョン.   「爺さん、援護は何時来てくれるって?」
教授.   「もう既に向かっとるそうじゃ、あと少しの辛抱だの」
ジョン.   「よし、何とかなりそうだな……って正面かよ!」


ガガガガガガガガ!
ダダダダダダダダダダ!


ユウ    「うわ、派手に撃たれてる! 早く助けないと!」
イーベル.「アクイラ1、落ち着け。こちらが攻撃を始めれば敵機の注意はこちらに向く、それで安全は確保されるさ」
アカリ  「そういうこと。アクイラ1・2はこちらから見て目標1時方向(右前方)の敵から処理をお願い。私は10時方向(左前方)の奴を仕留めるわ」
ユウ    「アクイラ1、了解」
イーベル.「アクイラ2、了解」
アカリ  「いくわよ、エンゲージ!」


ジョン.   「くそったれ、正面からとはやってくれるじゃねえか!」
教授.   「おいおい、エンジンは無事か? 火ぃ吹いとらんか?」
ジョン.   「何発か食らったみたいだけどとりあえず火は噴いてない。(ピッ)お嬢様?」
イオ   『……無事、援護は?』
教授.   「お、来てくれたようじゃの……腕もええようじゃ。2機ほど火を吹いとる」
ジョン.   「よっしゃ、何とかなったか。流石に諦めて逃げ出すだろ」


ユウ    『よし、1機撃墜!』
イーベル.『アクイラ3も目標を仕留めた。残り2機だな』
アカリ  『半数もやられたら引くでしょ。逃げるようなら追わなくてもいいわ』
イーベル.『いや……連中まだやる気だぞ』
アカリ  『ずいぶんとやる気ね。こうなった以上もう稼ぎなんて出ないでしょうに』
ユウ    『……レンさん、降伏勧告は?』
レン   『緊急用周波数で出してます! けど、返答も無くて!』
アカリ  『そう。なら仕方無いわ、全機叩き落すわよ!』


ジョン.   『助かりました、ありがとうごうざいます』
ユウ    『災難でしたね、無事でよかった。それにしても大丈夫ですか? 何ならうちの格納庫で簡単な修理でもやっていかれます?』
教授.   『貸していただけるのならありがたいが……』
ユウ    『困ったときはお互い様ですよ。遠慮なさらず』
教授.   『なら、好意に甘えるとしようかの』
ユウ    『じゃあ、僕が誘導しますので付いて来て下さい。それとアクイラ3は彼らの機体の損傷確認を。レンさんは引き続きレーダーで周辺警戒をお願い』
アカリ  『了解……とりあえず燃料とかはもれてないみたい。フロートにも穴は開いてないわ……えらく撃たれてるみたいだけど』
レン   『了解しました。今のところ不振な影はありません』
ユウ    『よし、ファッテイホエールを着水させて。皆を回収しよう』
?? 「そレで……暗殺は失敗したト」
カメダ  『あの忌々しい坊主に邪魔されたのでやんす! ただ運が悪かっただけでやんす!』
?? 「ハハハハ、海賊どもを脅してやラせずにご自慢のカメダ軍団を使えバよかったではナいですか」
カメダ  『い、いや、ちょっと都合がつかなかったのでやんす(こいつらとの関係を知られるわけには行かないでやんす……スポンサーの存在がばれてそっちに乗り換えられても困るでやんす)』
?? 「まあイいでショう。引き続き、発掘品の入手を頼みまスよ」
カメダ  『はいはいでやんす、資金援助の方を頼むでやんす!(くーっ、ゴーレムを手に入れるまでの辛抱でやんす)』(ブチッ)
?? 「ヤレやれ。もう少ししっかリしてくれませンかねェ」

ガションガション

?   「財閥ノオ嬢様如キガソンナニモ気ニナルノデヤンス?」
?? 「おヤ。何、ちょっと出来ノ悪い道具にお灸をすえヨうとしただけでス、なかなか帰っテこないンでね。それにシてもお目覚めがずいぶンと遅かったデすね」
?   「フン、コノ体トノマッチングニ手間取ッタノデヤンス」
?? 「調子はドうです?」
?   「言語機能ニ障害ガアル他ハマアマアデヤンス。スコシ”運動”デモシテ調子ヲタシカメテクルノデヤンス」
?? 「貴方がここ二流れ着いたとキは首だけでしたからねェ。それと、”運動”をスるのなら遠くデお願いしますヨ、ここヲ他人に知られるワけには行きません」
?   「解ッテルデヤンス」
?? 「えエ、お願いシますヨ……”メカ亀田”さン」
メカ亀田 「(……アレハ『ヤツ』デハナイト理解ハシテイテモ矢張リ腹立タシイデヤンス。トットト始末シテヤリタイデヤンス)カメダガ利用シテタ空中海賊ドモデ”運動”シテクルデヤンス」
?? 「そうですネ、口封じもかねテいてちょうどいイ。カメダさんはドうにも信用できまセんからね……」
メカ亀田 「ジャア、イッテクルデヤス”ミスターK”」
ミスターK「エえ、お帰りをオ待ちしてマすよ」





No.64

■「嵐の夜(前編)」 投稿者:F・S 投稿日:2012/03/19(月) 23:59

 夜空に映る月と星を眺めつつ、彼女はほくそ笑む。
「ははは、いかに手だれの空族とはいえど姿が見えなければどうにもならないでしょう?」
 カメダ軍団幹部、ババヤガン。彼女は今、自ら率いるナイトレイダー隊と共に散々カメダ軍団を苦しめてきたクロエ・ユウとその仲間たちを静かに追い詰めつつあった。
 時刻は夜。空には雲一つ無いが、横たわる暗闇は彼女とその部下たちを覆い隠す。
 月や星の明かりでは夜闇に溶け込むよう濃紺色に塗装されたその機体を視認する事は不可能に近い。
 が、彼女たちの機体、ホーンドオウル号にはその闇夜を見通す為の”目”である機上レーダーが装備されている。そのおかげで、夜間でも正確に相手を捕捉できる。
 もし、相手も同じようにレーダーを備えていたとしても彼女たちを捕らえる事は至難の業だ。
 『漂白無頼のマッドサイエンティスト』との異名をとるババヤガンの手によって、ナイトオウル全機には対レーダー対策が施されており、それらのおかげで彼女らはレーダーに捕捉され辛くなっている。
 現に、追跡されているファッテイホエール号はその後ろを飛行する輸送機共々、彼女たちの接近に気がついた様子は無い。
「ま、我々に楯突いた事が不運とあきらめてくださいな」
 かけている眼鏡を中指で押し上げ。
 にぃ、と不敵に唇の端を吊り上げる。
「まずはその護衛対象からいただきましょうか。レーヴェ財閥が製造に成功したという新型合金、ファイアバグさんの新型機に丁度良さそうでねぇ」
「ファッテイホエール及び輸送機、両機とも捕捉しました。敵迎撃機は確認出来ず」
 後部座席よりレーダー手の報告が帰ってくる。
 その報告を聞き、彼女は無線機のスイッチを入れた。
「こちらバーグラー1。バーグラー全機、攻撃準備」
『バーグラー1へ。全機攻撃位置につきました』
 部下よりの報告を受け取り、彼女もまた操縦桿を握り締め、機銃のトリガーへと手をかける。
 ホーンドオウルに搭載されている機銃は折りたたみ式の旋回機銃。
 それが闇夜に浮かび上がる輸送機の翼へと狙いを定める。
「では攻撃開始、まずはエンジンを狙いなさい」
『了解、攻撃開始!』
 その声と同時に輸送機の後方、その上下に位置しているホーンドオウルから曳光弾の描く火線が走る。それらは狙いたがわず輸送機のエンジンに吸い込まれ、爆炎を上げる……。

「な……どういう事です!」

 はずだった。
 曳光弾が描き出す火線はエンジン部分をを突き抜けてゆく。が、火も噴かなければ翼がへし折れる様子もない。
「レーダー手!」
 思わずあげた叫び声に後部座席から返答が帰ってくる。
「レ、レーダーに異常なし! 確かに影は映っています!」
「馬鹿なっ……。ええい、全機接近!」
 着弾しているにもかかわらず火すら噴かない理由はいくらか考えられる。当たっているように見えるが実は当たっていないという可能性。
 レーダーがあるからといっても最後は人の目で照準を合わせなければならない。今回の目標となっている輸送機はかなり巨大なため目測を誤った可能性がある。
 また、エンジンや燃料タンク部分が厳重に防御されているのならば、当たっても火を噴かないというのは十分にありえる話だ。 
「肉薄攻撃で仕留めろ!」
『り、了解!』
 ならばぶつかる位近づいて攻撃を仕掛けるしかない。
 そう考えた彼女の指示により、ホーンドオウル全機が輸送機に向けて殺到する。
 その瞬間だった。
 突如として視界が閃光に埋め尽くされたのは。


「やった! 引っかかりましたよ!」
 ファッティホエールの艦橋に興奮したレンの叫び声が響き渡った。彼女は目の前の機械を覗き込んだまま、艦内無線のスイッチを入れる。
『クロエ君、閃光弾の炸裂信号を確認!』
「よし! 全機出撃!」
 その声を格納庫で聞いたユウは直ちに待機していた仲間たちに命令を下す。
 格納庫の正面扉が開き、カタパルトが突き出される。
 次々と射出されるクロエとその仲間たち。
 まず、最初に射出されたアイアンバレル号が機首を翻し、後方へと向かう。その機体から次々と照明弾が投下された。
 その光にホーンドオウルの濃紺の機体が映し出される。
 どの機もふらふらと酔っ払いのように左右によたつくばかりでアイアンバレルに気がついた様子も無い。
『こちらフェルス1! 連中まるで酔ってるみたいだ!』
「了解。全機、攻撃開始!」
 ユウの掛け声と共に残る全機が加速。閃光弾で目をつぶされたババヤガンの部隊へと猛禽の如く喰らい付いて行く。


「ぐうぅぅぅぅ! 糞がぁ!」
 閃光に焼かれ、痛みを訴える目を押さえながらババヤガンはレーダー手に声をかける。
「敵はどうなっている!」
「はっ! 敵空中母艦より小型機が射出! 戦闘艇と見られます。数は……8!」
 その報告を聞いた瞬間、間髪居れず彼女は無線機のスイッチを叩く。
「敵の展開が速すぎる……待ち伏せられていたな。バーグラー全機! 撤退せよ!」
『了か……』
 しかし、返答が終わるよりも早く無線が途絶える。
「大変です! ババヤガン様、レーダーが!」
『こちらバーグラー4! レーダーが真っし……』
『畜生! 敵はどこだ!』
『レーダーが故障した! どうなってるんだ!』
 次々と無線に飛び込んでくる悲鳴。
 もはや先ほどまでの余裕は全て吹き飛んでいた。
「どうなっている!」
 叫びながらも薄目を開ける。
「レーダーが真っ白です! 全機レーダー使用不能!」
 その視界に照明弾の光を反射する何かが映った。
「チャフか!」
 電子欺瞞紙。アルミ箔などの軽量な金属を一定の長さに切ったもので、これらを撒き散らしてレーダーより照射される電波を反射させ、妨害を行うものだ。
 それが周囲に大量にばら撒かれている。そのせいでホーンドオウルが搭載しているレーダーは全く役に立っていない。
 慣れていない連中にしてみれば故障したように思えても仕方が無いだろう。
 この調子では撤退も儘ならない。
「なんてことですか、ここまでいいようにやられるとは!」
 何よりも腹立たしいのはチャフが効果を発揮していることだ。チャフはレーダーの波長に対応して長さを変えなければ効果が出ない。
 その効果が発揮されているということは、ナイトレイダー隊の使用するレーダーの波長がばれている。
 それは彼女がファッティホエールとの情報戦に敗れたことを意味していた。
 ババヤガンは歯軋りしながらも機体を降下させる。


「ふむ、うまくいったようじゃな。策士策に溺れるといった所か」
 ファッティホエールの艦橋で満足そうにプロフェッサークロノが頷く。
「上手くいってもらわねば困ります。これだけ大掛かりな仕掛けをして失敗したら目も当てられません」
 その横でシアンがひとつ、ため息をつく。
「飛行姿勢テストに使用する予定のの大型グライダーを引っ張り出し、大規模改装を施したんですよ? しかも短期間というおまけつきで」
 今回、彼らが利用したのはレーヴェ財閥が開発中の大型輸送機……の飛行姿勢テスト用に作られた大型のグライダーだ。
 エンジンはついていないし燃料も積んでいない。何しろ骨組みと布だけの代物なのだからいくら撃った所で火もつかなければ爆発もしない。
 今回はそれにレーダより照射される電波を反射させて本物と誤認させるために機体の各所に金属板を貼り付け、さらに閃光弾を山のように埋め込んである。
 その埋め込まれた閃光弾は一定以上の強さの電波を受信すると起爆するようにレンやクロノの手によって細工されていた。
 あとは囮を狙うように情報を流し、ババヤガン率いるナイトレイダー隊がそれに引っかかるのを待つだけ。
 その間ユウたち戦闘艇組はエンジンをかけつつ格納庫内で待機。囮にはレーダーの波長を検知する機械も搭載されており、それからの情報に従ってチャフを用意する。
 後は閃光弾で肉眼を潰し、その後にチャフでレーダーを潰す。その後、混乱中のナイトレイダー隊を戦闘艇部隊が叩くという手順。
 そして、ものの見事にババヤガンはそれに引っかかったというわけだ。
「まあ、そう目くじら立てるでない。一応、飛行テストもかねての話じゃし」
「……そのため、責任者としてお嬢さまも乗られているのですが?」
「……」
 シアンがちら、と横に目をそらす。
 そこにはイオが座っていた、その瞳はどことなく眠そうだ。
 曲がりなりにもレーヴェ財閥のものを持ち出すということで、その責任者として彼女もついて来ている。
 ただ……。
「……シアン」
「何でしょうか」
「……ワイルドハントは?」
「……ですからお嬢様、何度も申し上げました用にあれはカメダ軍団が自分達のやっていることを隠すためにでっち上げた噂です」
「……でも」
「でももストもありません」
「……(しゅん)」
 イオが気にしているのは1つの噂だった。
『特徴的な西風と遠雷を前触れに表れる亡者の群れ。その先頭に立つのは漆黒に彩られ、その身に虎の紋章を刻む戦闘艇』
 ”ワイルドハント(嵐の夜)”西洋で言う所の百鬼夜行。名だたる英雄や王によって率いられる死者の群れ。
 それを見てみたい、というのが今回彼女がユウたちに同行した理由だったりする。
「よくもまあ、怒られんかったの」
 と、クロノが零した時。
「まあ、うちにも似たような奴が居ますから」
 と、横から声がかかる。
「ええ、もう。本当に好奇心が服を着ているようなやつがね……」
 そう、どこか上の空で声の主……マリンはそう答えた。


「ちっくしょー! やっぱりお前らなのかよ!」
 と、叫ぶのは先ほど話題に上がっていた好奇心が服を着たようなやつ……パーシヴァル。
『アクイラ4! 1時下方、タリホー(敵機視認)!』
「アクイラ4了解! せっかく珍しいものが拝めるかと思っていたのによ!」
『あんた生き物じゃなくて死者にも興味があったの?』
 あきれたように聞き返すアクイラ3、アカリに彼は声を返す。
「違う違う。いいか、こう言った場合死者たちは生前の姿で現れることが多いんだ。それもたいていは煌びやかな衣装を身に纏ってな」
 答えながらも彼は操縦桿を握り締め、前を行くアクイラ3に追随する。
「そういう衣装には色々な生き物とかを象徴にした物が多いんだよ! そういったものに興味があったの!」
『あっそう』
「あ、馬鹿にしたな! いいか、そういった物からも色んな事が学び取れるんだぞ!」
『興味ないわ』
「たとえばだな……」
『アクイラ3、スプラッシュワン(敵機撃墜)』
「聞けよぉ!」
『アクイラ4、10時上方、タリホー』
「だから!」
『アクイラ4、仕事しなさい』


「相変わらず先生は騒がしいなぁ」
 苦笑しながらもユウは戦域全体に目をやり、無線機に耳を澄ます。
『こちらフェルス1、マザーより7時方向に3機逃走』
 照明弾を撒き終わったあと、高度を上げて敵機を観察していたジョンより報告が入る。
「了解、アクイラ1追撃に入る」
 返答を返すと操縦桿を握り締め、ユウは愛機フィーディール号の機首を指示された方角に向け、加速。
「ここで1機でも多く仕留めておかないと……」
 脳裏に今回の作戦前に情報を集めていた時のことが蘇る。

 いまだに行方不明の搭乗員を必死になって探す彼らの家族。
 夜間の撃墜のため、たとえ救難通信を受け取ってもすぐには救援をよこすことも出来ず、ただひたすらに夜が明けるのを待ち続けた救助隊の人々。
『せめて通信を受け取った直後に出られれば彼らは助かったのかも知れません。せめて日中なら……』
 そう、悔しそうにかたる彼らの顔。
 度重なる被害に封鎖された航空路。それによって苦しい生活を強いられるようになった人々。
 そして彼らに忍び寄る奴隷商人たち。
『心外ですね、我々は彼らのくらしをちょっと楽にしてあげてるだけですよ? それとも貴方が彼らの面倒を見るとでも?』
『奴隷として売られたって飢え死にするよりましでしょう? むしろただ死ぬより家族にお金も残せるし、良いじゃありませんか』
 そう、言い放つ彼らを何度殴ってやりたいと思ったことか。
 あいつらを殴らせろと叫んでいたジンを逆に宥め、今、ここでこいつらを殴っても何も解決しないんだと言い聞かせた。

「大本を断たなきゃいけないんだ」

 そう。たとえ下っ端を幾ら張り倒しても意味がない。
 今回の事件の元凶とも言える、ナイトレイダー隊を打ち倒さない限りは……。

「ここで痛手を与えておけば立ち直るのに時間がかかる。幾らカメダ軍団が無尽蔵に近い資金力を持っていても、人員の養成は簡単じゃない。ましてや、夜間空戦なんて特殊な人員は……」

 その為には……。

「殺す……いや、捕縛するだけでもいい」
 それは言い訳だ、撃墜すればかなり高い確率で相手は死ぬ。墜落する飛行艇から脱出するのは難しく、失敗することも多い。
 そもそも、撃たれたときにパイロットに直撃していればアウトだ。
 それでも、撃たなければいけない。
「アクイラ1、12時下方、タリホー!」
『アクイラ2了解』
 後方に続くイーベルに敵機の位置を教えると、ユウは操縦桿を握る手に力を入れる。
 そして、眼下の敵めがけ一気に距離を詰めトリガーを引く。
 解き放たれる12.7mmの暴力の嵐。火を噴いて揺らぐ敵機。
 そして、爆散。
「アクイラ1、スプラッシュワン!」
『アクイラ2、スプラッシュワン!』
 

「うん、いい闘志だ」
 夜闇の中、愛機の背で彼はつぶやく。
「死ぬということ、殺すということ。それらを知ってなおも闘争に挑む。果たさねばならぬ己の目的のために」
 にこ、と笑みを浮かべる。
「さりとて獣ではなく、さりとて子供ではなく。その重みを確かに受け止めている」
 周りの者たちに、聞かせるように。
 パン、と手を叩く。
「いいね」
 周囲がざわつく。
 彼の回りを埋める同胞達が。
 死者の軍団が。
「さて、我らの同胞となるか」
 片手を振り上げ、
「それとも我らの”狩”を終わらせるか」
 振り下ろす。
「どちらでもすばらしい」
 騎兵が夜闇を疾駆する、ぼろぼろの複葉機がエンジンのうなりを上げる。重装歩兵達が虚空を進み、マスケットを携えたた戦列歩兵がそれに続く。
 その姿は一様に漆黒。
 吹け、先触れの西風。鳴り響け号令の雷鳴



「さあ”嵐の夜(ワイルドハント)”の始まりだ!」





No.99

■嵐の夜(中篇) 投稿者:F・S 投稿日:2012/03/24(土) 00:02

 ”それ”は前触れもなく始まった。

「……?」
 ファッテイホエールの格納庫内でユイの手伝いをしていたエンゼルが顔を上げる。
「なんだろ?」
 彼女が立ち止まった気配を感じててユイが振り向いた瞬間。
 その体が崩れ落ちた。彼女が持っていた工具箱が床に激突し、大きな音を立てる。
「! エンゼルちゃん!」
 ユイは慌てて駆け寄り、その体を抱き起こす。
「大丈夫? しっかりして!」
「う……」
 その顔は真っ青に染まり、眼もどことなく虚ろだ。
「大変! 気化したガソリンでも吸い込んだのかな……誰か! シンドウさんを呼んできて!」
 大慌てで船医を呼ぶように回りに伝えるユイ。
 だが、
「へいき、だよ」
「エンゼルちゃん!?」
「ちょっと気分が悪くなっただけだから……すぐに良くなるよ」
 当のエンゼルがそれを差し止める。
「あはは、大丈夫だって。ほら、もう自分で立てるから」
「大丈夫って……ふらついてるじゃない。やっぱりシンドウさんを」
 ふらつきながらも立ち上がるエンゼルを見つつ、ユイは心配そうにたずねる。
 が、それをさえぎりつつ彼女は言葉を続けた。
「それよりも、なんか嫌な予感がしない?」
「嫌な予感?」
 そういわれ、ふと周りを見回してみる。
 確かにそう言われれば何かが違う感じはした。
 何か、異質な空気があたりに満ちているような。
「確かにそんな感じはするけれど……」
「あのさ、今休憩中の人たちも呼んできたほうがいいかも」
「え」
「ほら、空戦だけだろうからって陸戦要員の人たち待機中じゃん。何があるか判らないから準備だけはしておこう」
「う、うん。でも……」
 だがそれでもユイの目はエンゼルの顔から離れない。
 彼女の顔は相変わらず真っ青なままで、胸だって苦しそうに押さえている。
「ほら、こういう時はカンに従ったほうがいいかも。何もなくてもどのみち戦闘艇部隊の回収でてんやわんやになるんだしさ」
 しかし、そんな状態でありながらもエンゼルはユイをせかす。
 これから起こる事を知っているかのように。
「分かったわ。でも、ほんとに無理はしないでね」
 そういったユイが艦内電話のほうに歩いてゆくのを見て、エンゼルは壁にもたれかかる。
(すごく気持ち悪い……この空域のマナ、何か変。ついさっきまではなんともなかったのに……)
 彼女の体調不良の原因はこの空域に満ちる特殊な元素”マナ”が変質した結果だ。
 竜種である彼女の生存にはマナは必要不可欠なもの、それが変質すれば体調を崩すのも当たり前である。
 人間でも、敏感な人ならば何か感じ取っているのかもしれない。
(こんなの聞いたこともないよ……お父さんなら何か知ってるのかもしれないけど)
 その胸に一抹の不安がよぎる。何か、とんでもないことの前触れのような……。


「ちっ……つまんねえの」
 ファッティホエール有数の問題児であるピンはごろ、と寝返りを打ちながらそう、ぼやいた。
「ピンさん……働いてくださいよ」
 その横をミーナが荷物を抱えながら通り過ぎる。
「だあってよぉ。こいつはクロエの坊主たち、空戦組の仕事だぜ。俺ら陸戦組は何もする事がねえじゃん」
「だからってそこらへんでゴロゴロしないでください、皆の邪魔です」
「ふん、敵が乗り込んで着たら大活躍してやるよ。だからそのときのために英気を養ってんの」
「だからって通路で寝そべってぶーぶー言われても邪魔なだけバッタ」
 彼女と一緒に荷物を運んでいたボボも半目で彼をにらむ。
「ほら、ボボさんもこう言ってます。サボるならせめて部屋の中で」
「ふん。ほら、脇にどいてやるぞ」
 そういって寝そべったまま通路の壁にぴたっとくっつくピン。
「いや、だからそういうことではなく。ワタシが言いたいのは」
「いい年して拗ねるなでバッタ。ミーナちゃん、相手するだけ無駄でバッタ。急ぐでバッタ、テネジーちゃん待ってるでバッタ」
 ボボにせかされ、ミーナはしぶしぶと歩を進める。
「つっまんね~」
 二人が通り過ぎた後もピンはゴロゴロと暫く転がっていたが、不意に上体を起こす。
「こうなったら誰かと組み手でもすっかなぁ……っと」
 と、吐き捨てるように呟くとようやく立ち上がり、ゴキゴキと首を鳴らした。そして彼が歩き出したとき。
「あら、こんなところで何してるのよ」
 通路を黒コートの女性……リンが通りかかった。
 彼女の姿を認めると、ピンはうれしそうに唇を吊り上げる。
「おっ、丁度いい所にきた。ちょいと暇つぶしに付き合ってくれや」
「お断りよ、暇じゃないから」
 ピンの申し出をにべもなくリンは断る。
「え~」
「まあ、安心しなさい。すぐに暇じゃなくなるわ……多分ね」
 そう、呟くとリンはすっと目を細める。
「なんだよそりゃ」
「始まるのよ、”嵐の夜(ワイルドハント)”が」
「はあ?」
 不審げに唸るピンの前でリンはすっと指を伸ばし、近くの窓を指差す。
「何が……!」
 それにつられてピンは窓を覗き込み、絶句する。
 先ほどまで、そこに映る夜空には雲ひとつなく、月と星がきれいに輝いていた。
 しかし、今は。
 そこには何一つ映ってはいない。
 月も、星も。
「雲が出てやがるのか?」
「そう。それもかなり分厚いやつがね。この空域でこんな急激に天気が変化するようなことは今までに確認されていないわ」
「それとそのワイルドハントってやつとどういう関係があるんだよ」
「ええ、カメダ軍団が自分たちの活動の隠れ蓑にしていた伝説ね」

”先触れの西風、号令の雷鳴、眩き稲光。それらを合図に現れる漆黒の狩猟団。それは非業の死を遂げた一人の英雄が率いる、死者の猟団”

「そいつがどうかしたのか? だってそれはカメダの連中が撒き散らしてた噂話なんだろう?」
 と、ピンは首をひねる。が、リンは首を横に振ってその言葉を否定する。
「逆、ワイルドハントのほうが先なのよ」
「先?」
「ええ」
 リンが答えを返した瞬間。窓の外で雷鳴が轟き、稲光が彼女の横顔を照らす。
「ワイルドハントの噂が先なの。カメダの連中はそれに便乗しただけ」


「テネジーさん、言われたもの持ってきましたよ」
 ミーナはそう言って持ってきた荷物をテーブルの上に置く。ボボもその隣によいしょ、と声を出しながら荷物を置いた。
「ありがとうございます。ミーナさん、ボボさん」
 そう言ってファッテイホエールの料理長、テネジーは振り返ってにこりと微笑む。
「ん。テネジーさん。これ位でいいか?」
 そのとき、電熱調理器に鍋をかけていたカナが彼女に声をかける。
 テネジーはちょっと待ってね、と荷物を置いた二人に声をかけると彼女の手元の鍋を覗き込み、
「うん、これぐらいでいいわ。」
 答えを返した。
「そうか。じゃ、火から下ろすぞ」
「ええ、下ろしたらこちらに置いてちょうだい。あ、ボボさん。その箱の中から紅茶を取り出してくれる?」
「ん、これでバッタ?」
 もって来た箱の中から取り出した紅茶の缶をボボはテネジーに手渡す。
 彼女はそれを受け取ると、中から取り出した紅茶葉をポットの中に入れ、勢いよく鍋の中のお湯を注ぎ入れた。
「カナさん、ミルクを」
「ん、わかった」
 声をかけられたカナはつかつかと棚の中から牛乳入りの紙パックを取り出す。
「いやあ、最近は便利になったもんだ。昔はナイフで切って開けてたのにな」
 そう、呟きながらぺりぺりと音を立てて注ぎ口を開け、ポットの横に置く。
「ほい」
「ありがとう、じゃあ今のうちに並べてしまいましょう。ミーナさん、手伝ってくれるかしら。ボボさんは蜂蜜をお願い」
 テネジーの指示に従い、ミーナは自分の持ってきた箱の中から細長い筒のようなものを取り出す。
「ん? これなんだ?」
 と、カナがそれを興味深そうに覗き込んだ。
「ああ、これは保温瓶です。何でもレーヴェが開発した新型だそうです」
 それに答えたのはミーナ。彼女は筒のひとつを手に取ると親指でその一部をぐっと押し込む。
 すると、ぱかんと蓋が跳ね上がった。そこには軽く曲げられた細長い管が突き出ている。
「なんでも飛空挺パイロットが片手でも飲めるように改良した新型だとか。実際に使用したレポートを出す代わりにシアンさんから提供されたんです」
「ほほう、便利そうだね」
 カナはそのうちひとつを手に取ると自分も同じ場所をぐいっと押し込んでみる。
 ぱかっ。
「おお、開いた」
 嬉しそうに声を上げるカナにテネジーは声をかけた。
「遊んでないで蓋を開けて一列に並べる。私は紅茶を注ぐから、カナさんは蜂蜜を入れてかき混ぜて」
「はーい」
「これって割れたりしないんでバッタ? 確かこういうものは内側はガラス使ってるって聞いたことあるでバッタ」
「金属製だから大丈夫ですよ。そこが新開発の素材なんだそうです」
 彼らはまだ何も知らない。外で起きている異変のことは。


「あれ……?」
 艦橋で疑問の声を上げたのはレンだった。
 彼女はレーダの画面を覗き込む。
「今何か……きゃっ」
 その瞬間、艦橋の外で轟音が響く。
「雷!?」
 その音に無線機に耳を傾けていたマリンが顔を上げる。
 その目に映るのは漆黒の夜空。
 時折走る稲光が分厚い雲の姿を映し出す。
「馬鹿な! さっきまでは晴れていたんだぞ!」
「なに?」
 艦橋の船員と何か話し合っていたシアンがその言葉に窓の外を見る。
「なんてことだ。いつの間に」
 と、そのときイオが口を開く。
「……シアン。ワイルドハントかも」
「それは、カメダ軍団が流した誤情報だと……いや、まさか」
「……噂と一緒。突然黒雲が現れる。稲光が鳴り響く。たぶん西風も吹いているはず」
 何よりも、と一言はさみ彼女は言葉を続ける。
「……さっき、見えた」
「見えた……とは?」
 イオは相変わらずどこを見ているのかもわからない瞳のまま、すっと空中の一点を指し示す。
「多分、11時方向。複葉機が見えた」
 そこには暗闇しかない。月や星の光を失った今となっては上下すらわからないほどだ。
 時折、雷光のおかげで一瞬照らし出されるだけなのだが。
 だが、それでも。
「……1機じゃない。いっぱい」
 イオは断言する。
 それと同時にレンが叫び声をあげる。
「大変です! ボギー(未確認機)1,2,3……い、いっぱいです!」
 震える声でレンが報告をあげた。
 先ほどまで何も映っていなかったレーダーの画面からは大量の反応が確認出来る。
 その報告を受け、マリンは無線機のスイッチを叩く。
「くそ、何てことだ。アクイラ1! 聞こえるか!」
『こちらアクイラ1。イーグルアイ、どうしました』
「ボギーだ、それも大量の!」
『え……!? 分かりました! アクイラ1より全機へ。イーグルアイ上空で集合、編隊を組みなおす!』
「ボ、ボギー増加中。一直線にこちらへ向かってきます!」
 レンの報告にマリンは異議を唱える。
「ちがうな。おそらくそいつらはボギーじゃない……バンディット(敵機)だ!」


『こちらイーグルアイ、ボギーはなおも増加中。こちらの無線にも応じようとしない、恐らくはバンディットだ』
「アクイラ1了解。フェルス1・2、照明弾はいくら残ってる?」
『こちらフェルス1。まだ半分以上残ってる、たっぷりあるぞ』
『こちらフェルス2。こちらも同じく十分な量がある』
 すでにナイトレイダー隊は確認できている相手をほぼ全て撃墜している、これ以上の追撃の必要はないだろう。
 それよりも、気になるのは不明機のほうだ。聞いた限りではかなりの数がこちらへ向かっているらしい。
 彼らと一戦交えることは覚悟した方がいいだろう。
 こんな暗闇の中でまっすぐこちらへ向かってきているというのが気になるが……。
 フェルス1・2、ジョンとアラタニの報告を受け、ユウは決断を下す。
「こちらアクイラ1、これより我々は未確認機と交戦する。全機、残弾と燃料を確認!」
『こちらアクイラ2。弾薬はまだあるが、燃料が少ない。出来れば補給を』
 アクイラ2、イーベルの乗るローレライ号はもともと燃料が少ない。連続して戦闘となるとどうしても不安が出てくる。
 しかも戦場を激しく動き回るユウの列機として彼に追随していたのだ、必然的に燃料は少なくなる。
 すると、
『こちらアクイラ5。僕の機体から分けてあげようか?』
 ヒカルが口を挟んだ。
「え、そんなことできるの?」
 思わずユウが口を挟むと嬉しそうな声が無線機から返ってくる。
『うん、アケチ君やクロノ教授に協力してもらって新しい機能を付け加えたんだ。まあちょっとした応用かな?』
 ヒカルの乗るA-wingは彼の家に代々伝わってきた古代文明時代の貴重な機体だ。普通の機体には無いさまざまな機能を備えている。
 が、
「ヒカル君、A-wingに変なことされなかった? それって代々受け継がれてきた大切なものじゃあ……」
 キツイ言い方がユウの口から飛び出す。
 言うに事欠いていろいろと不安のある二人の手助けを受けているとなれば心配にもなろうというものだ。
 古い友人ではあるが、古代文明時代の技術にに大きな興味を持つアケチはそれに関連するものとなると少し暴走気味になる。
 クロノ教授に至ってはしょっちゅう何かをふっ飛ばしているような人だ。
(タチバナさんのベルトを見たときのアケチ君ってすごい表情してたしなあ、おまけにもう一人がクロノ教授だし)
 信じろ、というほうが無理がある。が、
『大丈夫、アイアンバレルで散々試したから』
 とのヒカルの返答にユウはとりあえず納得した。
(ああ、またジョン君実験台になってたんだ……)
「ああ、うん。とりあえず大丈夫そうならいいよ……他の人たちは?」
『こちらアクイラ3。こっちに不安はないわ』
『アクイラ4同じく。まだまだいけるぜ』
 アカリとパージヴァルはまだまだ余裕がありそうだ。
『アクイラ6、同様だ。残弾、燃料共に半分以上残っている』
 最後にアクイラ6、大神もその言葉に同意する。
「よし。アクイラ5、アクイラ2に補給をお願い。それと、フェルス2はアクイラ6の援護について。敵機の数はかなり多いらしいからアクイラ5には補給に専念してもらいたい」
『アクイラ5了解』
『フェルス2了解』
『アクイラ6了解。フェルス2、よろしく頼みます』
『アクイラ2了解。それで、私はどうすればいいんだ?』
 と、イーベルが不思議そうに問いかける。少なくとも飛行しながらの補給など彼女の知識にはない。
『アクイラ2、そのままの速度を維持して。後は僕とA-wingがやりますから』
 ヒカルはイーベルにそう答えると、機体をローレライ号の真上の位置につける。
 すると、機械音を響かせながらA-wingは変形。ローレライ号を包み込むような形状を取った。
 その形態はユウには見覚えのあるものだった。
(ああ、なるほど。以前僕の機体と合体したときの状態を応用したのか)
 そのあちらこちらから細いマジックアームが伸び、機体各所に設けられている整備用ハッチに取り付く。
 そして、燃料タンクの蓋を開け、中に管を突き入れる。
『燃料と、後は弾薬の補給もやっておくね。あと、この状態だと大きな動きはできないから注意して』
『アクイラ2了解。すごい物だね、古代文明の機体は』
『元々、多用途機として開発されていたみたい。僕らはその機能を調整しただけだよ』
 どこかくすぐったそうにヒカルが笑う。
『みんなと一緒に戦う以上、僕にしかできないことをやりたくってさ』
「うん、ありがとう。でも、できれば僕に一言ほしかったな」
『アクイラ5了解。驚かせてみたかったんだ……よし、補給終了。僕は一旦戻るよ、どうやら長丁場になりそうだ』
 飛行形態に戻ったA-wingがローレライ号から離れていく。
 それを見届けたユウの耳にファッティホエールから通信が入る。
『こちらイーグルアイ。こちらも準備完了だ。今から12時方向へ向けて照明弾を発射する』
「アクイラ1了解。各機編隊を維持、照明弾発射と共に攻撃開始!」

『『『『『『『了解!』』』』』』』

 各機の返答と共にファッテイホエールの対空砲から照明団が次々と打ち出されて行く。
 それに照らし出されるのは無数の敵機。
『うそだろ、なんて数だよ!』
 思わずパーシヴァルが叫ぶ。
『それにしても古い機体が多いな。大半が複葉機だ』
 アラタニが首をかしげる。
『いろんな意味で普通じゃないのかもね、そもそも暗闇の中を探照灯もなしに飛行してきてるのがおかしいんだけど』
 アカリが疑問を呈するがそれに答えられるものは居ない。
「アクイラ3・4は2時、アクイラ6・フェルス2は10時の敵機を! フェルス1は状況を見て照明弾を追加! 全機、攻撃開始!」
 そして、ユウの放った号令で戦闘開始の狼煙が上がる。
 それを合図に、各機ははじかれたように敵集団の中へと飛び込んでいった。


「おいおい、マジかよ!」
 急に慌ただしくなった船内を、大慌てでピンは走る。
 向かう先はファッティホエールの甲板。
 とにかく状況を外に出て確かめようというのだ。
「ワイルドハント、ねえ。俺の出番があるとも思えんがな」
 そもそもここは空の上、普通に考えれば彼の出番などありはしない。
 だが、一つ気になることがある。
 なら、リンはなぜに『すぐに暇じゃなくなる』などと言ったのだろうか。
「まあ、俺が動き回れるとしたらデッキかよ。そこでお相手が待ち構えてくれてるわけか?」
 首をかしげながらもデッキに続くドアを開ける。
 案の定、強く風が吹いているだけで特に何も見えない。
「なんもねえなぁ。真っ暗で回りも見えないし、落っこちたら大変だし引っ込んどくか」
 そう呟き、ドアを閉めようとしたとき。
 ちょうど、ファッティホエールに装備されている大型探照灯が点灯を始めた。
 それに照らし出されたのは……
「おい、なんだありゃ」
 ピンの目に映るのはデッキの隅でうごめく影。
 それも1つや2つじゃない。
 何体もの人影らしきものがデッキの隅にうごめいている。
 そのうちの1体が、その手に握っている剣を振りかざし、振り下ろした。
 まるで、突撃開始の合図のように。
 「ちっ!」
 ピンは拳法の構えを取りつつ大声で叫ぶ。
「デッキに敵襲だ! 戦える奴ぁ出て来い!」



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パワポケスタジアムで行われた「パワポケ空族祭」の作品をまとめてあります。
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