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■小説・読み物(91-100)


No.100
■ヒカル君がサクラに襲われたら? 投稿者:雨夜 投稿日:2012/03/24(土) 00:14


サクラちゃんとヒカルくん

サクラ「うにゅ~…飛んだあとだからやっぱり落ち着かないにゃあ…ん?そこにいるのは?」

ヒカル「…あれ?サクラちゃんどうしたの?」

サクラ「ヒカルくんかあ…う~ん、どうしよ…我慢できないしいっか。」

ヒカル「サクラちゃん?」

サクラ「ヒカルくん?こっち来て…」



ヒカル「!!
何するの!」

サクラ「みゃはははは…ちょっとだけ、ちょっとだけ、あたしに突っ込んでくれるだけでいいの…っ!」

ヒカル「やめて!くすぐったいよ!」

(ガバッ)

サクラ「…えっ?」

ヒカル「………!!」

サクラ「ヒカルくん…が……」

ヒカル「(今だ!)」

ガバッ!ガシッ!

ヒカル「…サクラちゃん?」

サクラ「え、何、ヒカルちゃ…」

ヒカル「見なかったことにする事。
僕は君に襲われて服を脱がされていない、胸の痣を見られていない、…女の子だと知られていない。」

サクラ「う…にゃあ…」

ヒカル「誰にも言わないこと。
特に…クロエには。
話したときは…覚悟しといてね?」

サクラ「ひっ…」

ヒカル「返事は?」

サクラ「は…い…。」

ヒカル「それでよし。
じゃあ、また後で。」

サクラ「…ヒカル…くん…服だけ整えて行っちゃった…あの黒い笑顔、本気だったよ…怖いにゃあ…」


No.99
■嵐の夜(中篇) 投稿者:F・S 投稿日:2012/03/24(土) 00:02

 ”それ”は前触れもなく始まった。

「……?」
 ファッテイホエールの格納庫内でユイの手伝いをしていたエンゼルが顔を上げる。
「なんだろ?」
 彼女が立ち止まった気配を感じててユイが振り向いた瞬間。
 その体が崩れ落ちた。彼女が持っていた工具箱が床に激突し、大きな音を立てる。
「! エンゼルちゃん!」
 ユイは慌てて駆け寄り、その体を抱き起こす。
「大丈夫? しっかりして!」
「う……」
 その顔は真っ青に染まり、眼もどことなく虚ろだ。
「大変! 気化したガソリンでも吸い込んだのかな……誰か! シンドウさんを呼んできて!」
 大慌てで船医を呼ぶように回りに伝えるユイ。
 だが、
「へいき、だよ」
「エンゼルちゃん!?」
「ちょっと気分が悪くなっただけだから……すぐに良くなるよ」
 当のエンゼルがそれを差し止める。
「あはは、大丈夫だって。ほら、もう自分で立てるから」
「大丈夫って……ふらついてるじゃない。やっぱりシンドウさんを」
 ふらつきながらも立ち上がるエンゼルを見つつ、ユイは心配そうにたずねる。
 が、それをさえぎりつつ彼女は言葉を続けた。
「それよりも、なんか嫌な予感がしない?」
「嫌な予感?」
 そういわれ、ふと周りを見回してみる。
 確かにそう言われれば何かが違う感じはした。
 何か、異質な空気があたりに満ちているような。
「確かにそんな感じはするけれど……」
「あのさ、今休憩中の人たちも呼んできたほうがいいかも」
「え」
「ほら、空戦だけだろうからって陸戦要員の人たち待機中じゃん。何があるか判らないから準備だけはしておこう」
「う、うん。でも……」
 だがそれでもユイの目はエンゼルの顔から離れない。
 彼女の顔は相変わらず真っ青なままで、胸だって苦しそうに押さえている。
「ほら、こういう時はカンに従ったほうがいいかも。何もなくてもどのみち戦闘艇部隊の回収でてんやわんやになるんだしさ」
 しかし、そんな状態でありながらもエンゼルはユイをせかす。
 これから起こる事を知っているかのように。
「分かったわ。でも、ほんとに無理はしないでね」
 そういったユイが艦内電話のほうに歩いてゆくのを見て、エンゼルは壁にもたれかかる。
(すごく気持ち悪い……この空域のマナ、何か変。ついさっきまではなんともなかったのに……)
 彼女の体調不良の原因はこの空域に満ちる特殊な元素”マナ”が変質した結果だ。
 竜種である彼女の生存にはマナは必要不可欠なもの、それが変質すれば体調を崩すのも当たり前である。
 人間でも、敏感な人ならば何か感じ取っているのかもしれない。
(こんなの聞いたこともないよ……お父さんなら何か知ってるのかもしれないけど)
 その胸に一抹の不安がよぎる。何か、とんでもないことの前触れのような……。


「ちっ……つまんねえの」
 ファッティホエール有数の問題児であるピンはごろ、と寝返りを打ちながらそう、ぼやいた。
「ピンさん……働いてくださいよ」
 その横をミーナが荷物を抱えながら通り過ぎる。
「だあってよぉ。こいつはクロエの坊主たち、空戦組の仕事だぜ。俺ら陸戦組は何もする事がねえじゃん」
「だからってそこらへんでゴロゴロしないでください、皆の邪魔です」
「ふん、敵が乗り込んで着たら大活躍してやるよ。だからそのときのために英気を養ってんの」
「だからって通路で寝そべってぶーぶー言われても邪魔なだけバッタ」
 彼女と一緒に荷物を運んでいたボボも半目で彼をにらむ。
「ほら、ボボさんもこう言ってます。サボるならせめて部屋の中で」
「ふん。ほら、脇にどいてやるぞ」
 そういって寝そべったまま通路の壁にぴたっとくっつくピン。
「いや、だからそういうことではなく。ワタシが言いたいのは」
「いい年して拗ねるなでバッタ。ミーナちゃん、相手するだけ無駄でバッタ。急ぐでバッタ、テネジーちゃん待ってるでバッタ」
 ボボにせかされ、ミーナはしぶしぶと歩を進める。
「つっまんね~」
 二人が通り過ぎた後もピンはゴロゴロと暫く転がっていたが、不意に上体を起こす。
「こうなったら誰かと組み手でもすっかなぁ……っと」
 と、吐き捨てるように呟くとようやく立ち上がり、ゴキゴキと首を鳴らした。そして彼が歩き出したとき。
「あら、こんなところで何してるのよ」
 通路を黒コートの女性……リンが通りかかった。
 彼女の姿を認めると、ピンはうれしそうに唇を吊り上げる。
「おっ、丁度いい所にきた。ちょいと暇つぶしに付き合ってくれや」
「お断りよ、暇じゃないから」
 ピンの申し出をにべもなくリンは断る。
「え~」
「まあ、安心しなさい。すぐに暇じゃなくなるわ……多分ね」
 そう、呟くとリンはすっと目を細める。
「なんだよそりゃ」
「始まるのよ、”嵐の夜(ワイルドハント)”が」
「はあ?」
 不審げに唸るピンの前でリンはすっと指を伸ばし、近くの窓を指差す。
「何が……!」
 それにつられてピンは窓を覗き込み、絶句する。
 先ほどまで、そこに映る夜空には雲ひとつなく、月と星がきれいに輝いていた。
 しかし、今は。
 そこには何一つ映ってはいない。
 月も、星も。
「雲が出てやがるのか?」
「そう。それもかなり分厚いやつがね。この空域でこんな急激に天気が変化するようなことは今までに確認されていないわ」
「それとそのワイルドハントってやつとどういう関係があるんだよ」
「ええ、カメダ軍団が自分たちの活動の隠れ蓑にしていた伝説ね」

”先触れの西風、号令の雷鳴、眩き稲光。それらを合図に現れる漆黒の狩猟団。それは非業の死を遂げた一人の英雄が率いる、死者の猟団”

「そいつがどうかしたのか? だってそれはカメダの連中が撒き散らしてた噂話なんだろう?」
 と、ピンは首をひねる。が、リンは首を横に振ってその言葉を否定する。
「逆、ワイルドハントのほうが先なのよ」
「先?」
「ええ」
 リンが答えを返した瞬間。窓の外で雷鳴が轟き、稲光が彼女の横顔を照らす。
「ワイルドハントの噂が先なの。カメダの連中はそれに便乗しただけ」


「テネジーさん、言われたもの持ってきましたよ」
 ミーナはそう言って持ってきた荷物をテーブルの上に置く。ボボもその隣によいしょ、と声を出しながら荷物を置いた。
「ありがとうございます。ミーナさん、ボボさん」
 そう言ってファッテイホエールの料理長、テネジーは振り返ってにこりと微笑む。
「ん。テネジーさん。これ位でいいか?」
 そのとき、電熱調理器に鍋をかけていたカナが彼女に声をかける。
 テネジーはちょっと待ってね、と荷物を置いた二人に声をかけると彼女の手元の鍋を覗き込み、
「うん、これぐらいでいいわ。」
 答えを返した。
「そうか。じゃ、火から下ろすぞ」
「ええ、下ろしたらこちらに置いてちょうだい。あ、ボボさん。その箱の中から紅茶を取り出してくれる?」
「ん、これでバッタ?」
 もって来た箱の中から取り出した紅茶の缶をボボはテネジーに手渡す。
 彼女はそれを受け取ると、中から取り出した紅茶葉をポットの中に入れ、勢いよく鍋の中のお湯を注ぎ入れた。
「カナさん、ミルクを」
「ん、わかった」
 声をかけられたカナはつかつかと棚の中から牛乳入りの紙パックを取り出す。
「いやあ、最近は便利になったもんだ。昔はナイフで切って開けてたのにな」
 そう、呟きながらぺりぺりと音を立てて注ぎ口を開け、ポットの横に置く。
「ほい」
「ありがとう、じゃあ今のうちに並べてしまいましょう。ミーナさん、手伝ってくれるかしら。ボボさんは蜂蜜をお願い」
 テネジーの指示に従い、ミーナは自分の持ってきた箱の中から細長い筒のようなものを取り出す。
「ん? これなんだ?」
 と、カナがそれを興味深そうに覗き込んだ。
「ああ、これは保温瓶です。何でもレーヴェが開発した新型だそうです」
 それに答えたのはミーナ。彼女は筒のひとつを手に取ると親指でその一部をぐっと押し込む。
 すると、ぱかんと蓋が跳ね上がった。そこには軽く曲げられた細長い管が突き出ている。
「なんでも飛空挺パイロットが片手でも飲めるように改良した新型だとか。実際に使用したレポートを出す代わりにシアンさんから提供されたんです」
「ほほう、便利そうだね」
 カナはそのうちひとつを手に取ると自分も同じ場所をぐいっと押し込んでみる。
 ぱかっ。
「おお、開いた」
 嬉しそうに声を上げるカナにテネジーは声をかけた。
「遊んでないで蓋を開けて一列に並べる。私は紅茶を注ぐから、カナさんは蜂蜜を入れてかき混ぜて」
「はーい」
「これって割れたりしないんでバッタ? 確かこういうものは内側はガラス使ってるって聞いたことあるでバッタ」
「金属製だから大丈夫ですよ。そこが新開発の素材なんだそうです」
 彼らはまだ何も知らない。外で起きている異変のことは。


「あれ……?」
 艦橋で疑問の声を上げたのはレンだった。
 彼女はレーダの画面を覗き込む。
「今何か……きゃっ」
 その瞬間、艦橋の外で轟音が響く。
「雷!?」
 その音に無線機に耳を傾けていたマリンが顔を上げる。
 その目に映るのは漆黒の夜空。
 時折走る稲光が分厚い雲の姿を映し出す。
「馬鹿な! さっきまでは晴れていたんだぞ!」
「なに?」
 艦橋の船員と何か話し合っていたシアンがその言葉に窓の外を見る。
「なんてことだ。いつの間に」
 と、そのときイオが口を開く。
「……シアン。ワイルドハントかも」
「それは、カメダ軍団が流した誤情報だと……いや、まさか」
「……噂と一緒。突然黒雲が現れる。稲光が鳴り響く。たぶん西風も吹いているはず」
 何よりも、と一言はさみ彼女は言葉を続ける。
「……さっき、見えた」
「見えた……とは?」
 イオは相変わらずどこを見ているのかもわからない瞳のまま、すっと空中の一点を指し示す。
「多分、11時方向。複葉機が見えた」
 そこには暗闇しかない。月や星の光を失った今となっては上下すらわからないほどだ。
 時折、雷光のおかげで一瞬照らし出されるだけなのだが。
 だが、それでも。
「……1機じゃない。いっぱい」
 イオは断言する。
 それと同時にレンが叫び声をあげる。
「大変です! ボギー(未確認機)1,2,3……い、いっぱいです!」
 震える声でレンが報告をあげた。
 先ほどまで何も映っていなかったレーダーの画面からは大量の反応が確認出来る。
 その報告を受け、マリンは無線機のスイッチを叩く。
「くそ、何てことだ。アクイラ1! 聞こえるか!」
『こちらアクイラ1。イーグルアイ、どうしました』
「ボギーだ、それも大量の!」
『え……!? 分かりました! アクイラ1より全機へ。イーグルアイ上空で集合、編隊を組みなおす!』
「ボ、ボギー増加中。一直線にこちらへ向かってきます!」
 レンの報告にマリンは異議を唱える。
「ちがうな。おそらくそいつらはボギーじゃない……バンディット(敵機)だ!」


『こちらイーグルアイ、ボギーはなおも増加中。こちらの無線にも応じようとしない、恐らくはバンディットだ』
「アクイラ1了解。フェルス1・2、照明弾はいくら残ってる?」
『こちらフェルス1。まだ半分以上残ってる、たっぷりあるぞ』
『こちらフェルス2。こちらも同じく十分な量がある』
 すでにナイトレイダー隊は確認できている相手をほぼ全て撃墜している、これ以上の追撃の必要はないだろう。
 それよりも、気になるのは不明機のほうだ。聞いた限りではかなりの数がこちらへ向かっているらしい。
 彼らと一戦交えることは覚悟した方がいいだろう。
 こんな暗闇の中でまっすぐこちらへ向かってきているというのが気になるが……。
 フェルス1・2、ジョンとアラタニの報告を受け、ユウは決断を下す。
「こちらアクイラ1、これより我々は未確認機と交戦する。全機、残弾と燃料を確認!」
『こちらアクイラ2。弾薬はまだあるが、燃料が少ない。出来れば補給を』
 アクイラ2、イーベルの乗るローレライ号はもともと燃料が少ない。連続して戦闘となるとどうしても不安が出てくる。
 しかも戦場を激しく動き回るユウの列機として彼に追随していたのだ、必然的に燃料は少なくなる。
 すると、
『こちらアクイラ5。僕の機体から分けてあげようか?』
 ヒカルが口を挟んだ。
「え、そんなことできるの?」
 思わずユウが口を挟むと嬉しそうな声が無線機から返ってくる。
『うん、アケチ君やクロノ教授に協力してもらって新しい機能を付け加えたんだ。まあちょっとした応用かな?』
 ヒカルの乗るA-wingは彼の家に代々伝わってきた古代文明時代の貴重な機体だ。普通の機体には無いさまざまな機能を備えている。
 が、
「ヒカル君、A-wingに変なことされなかった? それって代々受け継がれてきた大切なものじゃあ……」
 キツイ言い方がユウの口から飛び出す。
 言うに事欠いていろいろと不安のある二人の手助けを受けているとなれば心配にもなろうというものだ。
 古い友人ではあるが、古代文明時代の技術にに大きな興味を持つアケチはそれに関連するものとなると少し暴走気味になる。
 クロノ教授に至ってはしょっちゅう何かをふっ飛ばしているような人だ。
(タチバナさんのベルトを見たときのアケチ君ってすごい表情してたしなあ、おまけにもう一人がクロノ教授だし)
 信じろ、というほうが無理がある。が、
『大丈夫、アイアンバレルで散々試したから』
 とのヒカルの返答にユウはとりあえず納得した。
(ああ、またジョン君実験台になってたんだ……)
「ああ、うん。とりあえず大丈夫そうならいいよ……他の人たちは?」
『こちらアクイラ3。こっちに不安はないわ』
『アクイラ4同じく。まだまだいけるぜ』
 アカリとパージヴァルはまだまだ余裕がありそうだ。
『アクイラ6、同様だ。残弾、燃料共に半分以上残っている』
 最後にアクイラ6、大神もその言葉に同意する。
「よし。アクイラ5、アクイラ2に補給をお願い。それと、フェルス2はアクイラ6の援護について。敵機の数はかなり多いらしいからアクイラ5には補給に専念してもらいたい」
『アクイラ5了解』
『フェルス2了解』
『アクイラ6了解。フェルス2、よろしく頼みます』
『アクイラ2了解。それで、私はどうすればいいんだ?』
 と、イーベルが不思議そうに問いかける。少なくとも飛行しながらの補給など彼女の知識にはない。
『アクイラ2、そのままの速度を維持して。後は僕とA-wingがやりますから』
 ヒカルはイーベルにそう答えると、機体をローレライ号の真上の位置につける。
 すると、機械音を響かせながらA-wingは変形。ローレライ号を包み込むような形状を取った。
 その形態はユウには見覚えのあるものだった。
(ああ、なるほど。以前僕の機体と合体したときの状態を応用したのか)
 そのあちらこちらから細いマジックアームが伸び、機体各所に設けられている整備用ハッチに取り付く。
 そして、燃料タンクの蓋を開け、中に管を突き入れる。
『燃料と、後は弾薬の補給もやっておくね。あと、この状態だと大きな動きはできないから注意して』
『アクイラ2了解。すごい物だね、古代文明の機体は』
『元々、多用途機として開発されていたみたい。僕らはその機能を調整しただけだよ』
 どこかくすぐったそうにヒカルが笑う。
『みんなと一緒に戦う以上、僕にしかできないことをやりたくってさ』
「うん、ありがとう。でも、できれば僕に一言ほしかったな」
『アクイラ5了解。驚かせてみたかったんだ……よし、補給終了。僕は一旦戻るよ、どうやら長丁場になりそうだ』
 飛行形態に戻ったA-wingがローレライ号から離れていく。
 それを見届けたユウの耳にファッティホエールから通信が入る。
『こちらイーグルアイ。こちらも準備完了だ。今から12時方向へ向けて照明弾を発射する』
「アクイラ1了解。各機編隊を維持、照明弾発射と共に攻撃開始!」

『『『『『『『了解!』』』』』』』

 各機の返答と共にファッテイホエールの対空砲から照明団が次々と打ち出されて行く。
 それに照らし出されるのは無数の敵機。
『うそだろ、なんて数だよ!』
 思わずパーシヴァルが叫ぶ。
『それにしても古い機体が多いな。大半が複葉機だ』
 アラタニが首をかしげる。
『いろんな意味で普通じゃないのかもね、そもそも暗闇の中を探照灯もなしに飛行してきてるのがおかしいんだけど』
 アカリが疑問を呈するがそれに答えられるものは居ない。
「アクイラ3・4は2時、アクイラ6・フェルス2は10時の敵機を! フェルス1は状況を見て照明弾を追加! 全機、攻撃開始!」
 そして、ユウの放った号令で戦闘開始の狼煙が上がる。
 それを合図に、各機ははじかれたように敵集団の中へと飛び込んでいった。


「おいおい、マジかよ!」
 急に慌ただしくなった船内を、大慌てでピンは走る。
 向かう先はファッティホエールの甲板。
 とにかく状況を外に出て確かめようというのだ。
「ワイルドハント、ねえ。俺の出番があるとも思えんがな」
 そもそもここは空の上、普通に考えれば彼の出番などありはしない。
 だが、一つ気になることがある。
 なら、リンはなぜに『すぐに暇じゃなくなる』などと言ったのだろうか。
「まあ、俺が動き回れるとしたらデッキかよ。そこでお相手が待ち構えてくれてるわけか?」
 首をかしげながらもデッキに続くドアを開ける。
 案の定、強く風が吹いているだけで特に何も見えない。
「なんもねえなぁ。真っ暗で回りも見えないし、落っこちたら大変だし引っ込んどくか」
 そう呟き、ドアを閉めようとしたとき。
 ちょうど、ファッティホエールに装備されている大型探照灯が点灯を始めた。
 それに照らし出されたのは……
「おい、なんだありゃ」
 ピンの目に映るのはデッキの隅でうごめく影。
 それも1つや2つじゃない。
 何体もの人影らしきものがデッキの隅にうごめいている。
 そのうちの1体が、その手に握っている剣を振りかざし、振り下ろした。
 まるで、突撃開始の合図のように。
 「ちっ!」
 ピンは拳法の構えを取りつつ大声で叫ぶ。
「デッキに敵襲だ! 戦える奴ぁ出て来い!」


No.98
■レッドローズラストイベント 投稿者:アイス 投稿日:2012/03/23(金) 23:57

【奴隷解放クエスト中、Rローズを連れている】


Rローズ「すまない、僕の機体が危ない。一旦先に、下に降りさせてもらうよ」
クロエ「了解。気をつけろよ!」

カミカワ「(ったく、勝手にドンパチやりやがって。
どうせどうもならねえだろうよ。
流れ弾でも喰らう前に、とっとと安全な場所へ逃げるか)」

Rローズ「ふう…… ッ!! カミカワ!」
カミカワ「ん? ああ、誰かと思えばいつかの可愛い迷子じゃねえか。
また迷ったのか? 今ここらは危ないことになってるぜ。俺と一緒に安全なところまで」
Rローズ「少し静かにしてくれないかい。 今僕は貴様の知っているような可愛い素直な女ではないのでね。
僕は……彼女の中にいる別の魂だ」
カミカワ「はぁあ?」
Rローズ「この名前を聞けば少しは思い出してくれるかな?
僕は今、『レッドローズ』だ」
カミカワ「レッドローズ……ああ、随分昔、俺の策略を周りにばらしやがったガキだな。
周りの仲間も構わずに一人だけ逃げやがった臆病野郎でもあったか?」
Rローズ「黙れ!!」(カッ!)
カミカワ「カード……? 皮膚が切れてやがる……おおう、怖いね」
Rローズ「次は、このカードで貴様の首を切らせてもらう。
それで、僕の復讐劇の最終幕もおしまいだ」
カミカワ「(……こいつはやべえな) 誰がそんなモンに付き合うかよ!」
Rローズ「! 逃げるな!」

迷い子で選んだ選択肢により分岐
Aを選んだルート
Rローズ「待て!!」
カミカワ「ち、しつこく追いかけてきやがる……!」
Rローズ「はっ!」
カミカワ「(回りこまれただと!?)」
Rローズ「さあ、君の命運はここまでだ、おとなしく……あ……」
カミカワ「ああ、なんだぁ?」
Rローズ「(しまった、こんなところで、時間切れ、か
このままでは……ミソラ、に…………)」
ミソラ「……あれ、ここどこ?」
カミカワ「も、戻った?」
ミソラ「ああ、カミカワさん!!
どうしよう、あたしまた迷っちゃったんです! 気がついたら、ここに……」
カミカワ「……そうか。
じゃあ、俺と一緒に安全な場所まで行こうか」
ミソラ「は、はい!」

レッドローズがいなくなった……




Bを選んだルート
Rローズ「! (……いや、待て。
ここで追いかければ、僕は数分でミソラに戻ってしまう。
僕は奴さえ倒せればそれでいいが、ミソラは……
純粋な彼女のことだ、ここに戻ってくるまでにまた誰かに騙されて……今度こそ売られてしまう!
……我慢、だ)」

クロエ「なんとか上空の敵は退けた!
復帰してくれ、空からカジノに突入する!」
Rローズ「了解だ、クロエくん。
ああ、それと……後で、少々付き合ってくれたまえ」


(クエストクリア後)


カミカワ「ふう……逃げ切った、か」
Rローズ「さあて、それはどうかな?」
カミカワ「!! お、お前は……」
Rローズ「満月の夜に咲く赤い薔薇、怪盗レッドローズ、参上。
今宵は、君の命を奪いに参上したよ」
カミカワ「くっ……! 逃げ……」
クロエ「残念、今度は無理だぞ」
カミカワ「っこいつは! あの時一緒にいた……お前の仲間か……!」
Rローズ「ご名答。さて、もう逃げ場はないよ? ……覚悟は出来たかい」
カミカワ「く、来るな、来るなァァーーーっ!!」
Rローズ「せめて散り際ぐらい、気高き薔薇のように美しくいたまえ、カミカワ君」

(サク……)


クロエ「……なぁ、なんで」
Rローズ「なんだい?」
クロエ「あんな、殺すような……


演技をしたのか、聞いてもいいか?」
Rローズ「そっちの方が楽しいじゃあないか。
奴の極限まで追い詰められた怯えた顔を見たら、気分が清々したよ。
さて、適当に役所にでも突き出しておこうか」
クロエ「これでお前の恨みも晴れた、か?」
Rローズ「そうだね。少しは。 そして……だから、お別れだ」
クロエ「!! そんな、いきなり!」
Rローズ「随分と命の約束破りをしてしまったよ。とっくに制限時間は過ぎたんだ、僕はもう天に昇らなければね。
……そんな悲しい顔をしないでくれたまえ、クロエくん。
普段は僕と話すのに、あんなに嫌そうな顔をしていたのに」
クロエ「あ、あれは、お前の話が、いちいち、長くて……」
Rローズ「最後くらい笑顔で送ろうという粋な気遣いはないのかい?
そんなことでは、いつまでも女性にもてないよ」
クロエ「うるさい!」
Rローズ「フフフ。泣き顔よりはその方が少しは君に似合うね。
君達に、そしてミソラに、出会えてよかったよ。

ありがとう。

それじゃあ」

クロエ「レッドローズ!!」

ミソラ「う、ううん……?
あれ、ここは…… って、あの飛行機! ……あれ?
何にもならない……
あ、あの、レッドローズさんは?」
クロエ「ああ、あいつは。もう、帰ったよ」
ミソラ「……え?」


レッドローズがパーティからいなくなった
レッドローズ(ミソラ)アルバム確定


No.97
■『迷い子』の続き 投稿者:アイス 投稿日:2012/03/23(金) 23:57

Rローズ「少し、昔話を聞いてくれるかい?」
クロエ「……ああ」
Rローズ「ありがとう。
僕は父も母も知らない。気がついたら姉と二人で暮らしていたんだ」
それはそれは貧しくて、今日を食いつなぐのにも苦労する生活だったよ」
クロエ「普通の口調でいいのか?」
Rローズ「構わないよ。今日は怒りに満ちていて、泣ける気分でもないのでね。
ある日、貧困街に富裕層の男が来た。
『自分は、貧困と富裕の壁をなくしたい』と耳当たりのいいことを言って、
食べ物や少しながらの金も置いていったんだ。
初めは皆警戒していたが、食べてみたら全く問題ない食べ物でね。
3回ほど来た頃には、すっかり信用していたよ。情けないことにね。

そして、4回目に来たとき。
『子供達に美味しい物を食べさせてやりたい』と言ってきてね。
僕や姉も含む、近くの子供はほとんどついていったのさ。
――そこで、ほとんど全員が捕らえられた」

クロエ「…………」
Rローズ「僕は身が軽かったからね、必死に捕らえようとする手をかわした。
それでも捕まりそうになったとき、姉が僕をかばってね。
その隙に必死に逃げて、逃げて……結局、僕だけは助かった。
……悲しくて、悔しくてね。役に立たない反撃もしたよ。
奴らの手口を周囲の貧困街に教えてまわったり、金持ち相手に泥棒してみたり。
そしたらいつの間にか有名になっていたよ。
『器用さが役に立つ』と言われて、富裕層の家に養子として貰われた。
そこでパイロットの技術も学んだ。覚えは早かった、主人も結構喜んでくれてね。
このままここで暮らすのも悪くない、と思ったこともあった」
クロエ「なら、どうして……」
Rローズ「……見たのさ。僕の姉が、傲慢そうな金持ちに、連れて行かれているのを。
このままじゃやはりダメだと思って、
あの、満月が美しかった夜に……大金と飛行機と一緒に、ブランシエへ逃げたのさ。

……僕は、今度こそ必ず潰すよ。カミカワも、奴隷市場も」

クロエ「……そう、か」
Rローズ「失敬、つまらない話をしてしまったね。
君のほうから話があったんだろう?」
クロエ「そうだった。
俺たちはもうすぐ、奴隷市場に乗り込むことになる。
その時に、ぜひお前も連れて行きたい」
Rローズ「ありがとう。任せてくれたまえ」
クロエ「あ、あともちろん」

 A:その体は大切にしろよ
→B:ミソラさんのことを考えろよ

(Aを選んだ場合、フラグ未成立。奴隷解放クエストに影響)

Rローズ「わかっているよ。この体は大切にしている」
クロエ「……ミソラさんは、お前にとって体を貸してくれてるだけの存在か?」
Rローズ「イエスかノーで問われるならば、前者だね。
確かに助けようとしてくれた恩はあるが、今はそれだけだ」
クロエ「だけどなレッドローズ。 潜り込んだのがミソラさんでなきゃ、きっとお前は今ここにいないぞ」
Rローズ「どういう意味だい?」
クロエ「考えてみろよ。普通、
『君の中に別の魂があるから、そいつのために命を危険に晒してくれ』
なんて言って、頷く人がいるか?」
Rローズ「……まあ、いないだろうね」
クロエ「だろうな。でも、ミソラさんは頷いた。断れる道もあったのに。
『一度救えなかったから今度こそ』って、迷わずに、彼女は危険な道に飛び込んだ」
Rローズ「!! ……全く、真面目だねミソラは。
たまたま出会った者が、自分を救ってくれるたった一人の運命の人、とでも言うのかい?
人の世の、素敵な奇跡を感じさせてくれるね」
クロエ「もう一度聞く。 ミソラさんのことをちゃんと考えてくれるか?」
Rローズ「いいだろう。
僕はこれから、彼女と二人で舞台を演じさせてもらうよ」


レッドローズがパワーアップした!


No.96
■アルバム 投稿者:usuki 投稿日:2012/03/23(金) 23:53

■エンゼルノーマルEND
条件:エンゼルの御伽噺イベントを進行させていない状態でクリア


人が空を制するようになり、また一つ、不思議(ロマン)は駆逐される。

獣を追い立て野山を切り拓き、夜の闇を制御された稲光が照らし、大洋に鋼殻を鎧う船を沈め……
広がり続ける筈だった世界が円を結び、電信が彼我の距離を喪失させた。
(ロマン)
 未知を次々と貪り尽くしたこの世界に、ヒトを奮い立たせる幻想などもう何処にもない、と。
そんな『現実』に疲れた大人たちはうそぶくのだ。

……本当にそうだろうか?
人の子よ、大空を見上げてみるがいい。

微かな煌きを残し、雲間に消えた、小さな影。
不可思議な軌跡を描き、蒼穹を翔け抜けた"それ"に、子どもたちは息を呑んだ。

「い、今の……」
「なにあれ?」
「すっげー!!」

感じるだろう。その胸の高鳴りを。その高らかなる息吹を……
最後の『夢』は、まだ生き続ける。



■エンゼルトゥルーEND
条件:ソウを発見し、クリア

エンゼルはしばらくしてファッティホエール号を降り、再び世界を巡る旅に出た。
今日も彼女は流れ行く人波に乗り、空を翔る風を切って、様々な人々の営みを見つめている。
……なんのために?

「んー、人の笑顔を見たいからかな?」

ケガをした子どもの手当てをしてあげる。病で困っている人に薬を出してあげる。
大したことじゃなく、ちょっと困っている人の手助けをする。そんなことが今の彼女の生きがいだ。
……かつて、彼女を育てた『誰か』の想いを汲むかのように、彼女は人とともに在り、人と共に笑うのだ。

「あたしの家族は、もう殆どいなくなっちゃったけど。
 ……でもね、ソウくんがちゃあんと教えてくれたよ」

かつて追いかけた伝承の、本当の意味。人と人ならざるモノが、共に歩み、同じ未来を目指した。
その奇跡を起こした源が何かを、彼女はもう知っているから。

「さって。久しぶりに、あの空族くんのところにでも顔を出そうかな?」

その胸の高鳴りが、いかなる感情から生じているのか……
今の彼女には、確かに言い切れるだろう。

「……言葉にするのは野暮だね。ま、そうだねえ……ロマン、とでも言っておこうか♪」



■レッド・アルバム
条件:最終決戦でレッドが変身した&エンゼルがソウを発見し、クリア

「……すっげー、すっげーよレッドおじさん!今の、もっかいやって!」
「いいだろう、よく見ておけよ――」

あのあと、何故だか竜族の新たな希望であるソウは、なぜだかレッドの手に預けられ、ともに世界を巡ることとなった。
本来はソウを見出したエンゼルの役目なのだろうが、「まだまだ若輩ですしー」とそれを固辞。
「もっと相応しい人がいるじゃないですか」との彼女の推挙で、彼の下にやってきたのだった。
……ようは、体のいいベビーシッターなのであった。まあ、本人は満更でもなさそうなのではあるが。

「オレもおじさんみたいに、強くてカッコイイ男になる!
 それで、いつかおじさんに挑戦するんだ!」

まっすぐなその眼差しを帽子で遮り、男はふっと息を吐く。
竜と人。そのどちらでもあり、どちらでもない眼前の少年は――
果たして、どのように育ち、彼らの種族の未来をどう変えてゆくのだろうか。

(やれやれ、責任重大じゃないか。まあ――あんなドラ娘を育てたオレに対する報いかね?)

脳裏に浮かぶ能天気な笑顔に肩をすくめ、期待に目を輝かす少年の頭に、男はぽんと手を置いた。

「はは、そいつは楽しみだ……
 じゃあまずは、しっかりメシを食って、背を伸ばすところからだな!」
「でもおじさん、さっき『ぶしはくわねどたかようじ』とか言ってなかった?」
「…………」


No.95
■捏造祭りイベント「ロマンは此処に」 投稿者:usuki 投稿日:2012/03/23(金) 23:53

(ファントゥーム最深部)

「だいぶ奥まで来たけど……ううん、方向感覚が狂っちゃって、よくわかんないなー……っと!」
(ズドン!)←殴打音
「鬱陶しいなあ、護衛ロボット……あーぁ。折角頑丈に作ったのに、薬箱、歪んじゃったじゃない」
(グラグラグラ……)
「……上は上で相当派手にやってるみたいだし。クロエたち、大丈夫かな……」
(ズドォン!!)
「きゃ……っととと!?危ない危ない……って、あれ?」
「崩れた壁の隙間に……部屋?ここは……なんだろ、銀行の巨大な扉みたいな?」

(ガコン……)

「……術式施錠? パスワード……んー……もしかして!」

《――ア・イ》

「……開いた!やっぱり……」
(まるで……竜の卵……方舟……揺籠みたい?)
「中に居るのは……男の子?」
「…………」
(生きてる……というか、甦ってる!?)
「…………眠い。うう、コールドスリープは身体に堪えるな……」
「竜……違う、人……でもない。まさか……」
「……姉ちゃんか、オレを起こしたの」
「あ、え、えっと。キミは……」
「ん?オレは……『ソウ』」
「ええと。ソウくん……は、なんでここで?」
「大きな戦がはじまるから……って、母さんに言われてさ。それからずっと、眠ってたんだけど……」
(……ってことは……あの伝承の時代から、ずっと冬眠してたっていうの!?)
「ところで姉ちゃん、ここに来るまでに、誰かと会わなかった?」
「!……もう、ここに……この都市に、ずっと、人は誰も居ないんだ」
「そっか……」
「ソウくん……」
「……わかってたさ。だからこそ、母さんはオレをこの『クレイドル』で永い眠りにつかせたんだから」
(ああ……なるほどね。これが……伝説にある、あらゆる災厄から逃れるためのシェルターなんだ……)
「あ、あのさ、ソウくん」
「ん?なんだよ?」
「キミのご両親って……」
「ああ。父さんは偉くて賢い王様なんだ。で、母さんは、優しくて大きな――白竜、だよ」
「…………!!……そっか! やっぱり……あははは!そうなんだ!」
「ね、姉ちゃん……どうしたの?」
「これが浮かれずにいられますかっての!ああ――そこにロマンは、あったんだ!」
「……意味わかんないんだけど」
「ああ、平気平気、こっちの話だから。ごめん、ちょっとテンション上がっちゃってさ」
「なんでもいいけどさ。……こっちに名乗らせといて、そっちは紹介もなしなのかよ?」
「あ、ごめんごめん。あたしは……竜族の末。天より舞い降りた白翼の天使竜――エンゼル」
「……竜族!じゃあ、母さんの仲間か!」
「ま、そんなところだねー……さって、知りたかったこともわかったことだし。
 後は――上で暴れてる、全ての元凶を片付けるだけかな……キミのためにも、ね」
「……よくわかんないけど。オレも行くよ。
 なんだか……今起こってることを見届けなくちゃいけない、そんな風に思うんだ」
「男の子はそうでなくっちゃね……さぁ、行こう!
 伝説を越える……新たなロマンを創るのも、悪くない!」

(――天使竜エンゼルが戦線に加わりました!)



No.94
■オマケSS「新たな門出」 投稿者:FK 投稿日:2012/03/23(金) 23:27

ファントゥーム崩壊後、一年が経過した。

皆がそれぞれ自分の帰る場所に戻り、ヒカルは空へと帰っていった。
そして、ある者とは笑顔の、ある者とは涙の別れをした。そして、ある者は主人公と共に残るという決意をした。
そして…皆が望んだ、平穏な日常が戻ってきた。



━━━━そんなある日。

ここはオルデルのとある工場。看板には「飛行艇製造アブニール」とある。
中から工場員達の叫び声が聞こえる。
「おはようございます、社長!」
「あはは、堅苦しい挨拶はいいからさ。いつもの作業始めて」
「「「「はい!!」」」」



社長室のドアを開けたのは━━━━、クロエ・ユウ。

彼は1年前の惨劇の終焉を迎えることで、彼は世界中で英雄として称え崇められた。
しかし、彼は真実を明らかにすることで、また様々な出会いや別れ、触れ合いや悲劇など様々な喜怒哀楽を体験した。
彼にとって、全てが過去のものになろうとしていた━━━━。

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(もう…時代遅れなのかなあ。飛行艇という概念が)

彼は髪をかきあげながら、経営の計算をしている。ここのところ経営が斜め下がりになってしまい、苦労する日々が続いていた。
(新しい分野…ユイたちが言っていた、家電…とかか。それもいいかな。ふぅ…)

ふとユウは椅子から立ち上がり、クローゼットを開けた。






彼の1年前の服が…そこには残っていた。

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作業員が仕事をしている中、ラジオからとある臨時ニュースが飛び込んできた。
それは作業員に一時作業を中断させるほどの力がある一報だった。
「えー、只今入った情報によりますと、ちょうど1年前に世間を騒がせた浮遊城によく似た形状をした
浮遊城が北極上空で観測されたということです。更に200年前に発見された新大陸ホープランド上空、更にはウンガルフ上空でも観測されたという情報が…」

「「「「!!」」」」


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アブニール社、社長室━━━━



「「「「社長!!大変なことに」」」」
「わかっている。俺もラジオで聞いた。くそっ、どういうことだ!!?レッドさんやヒカルたちの頑張りで、
ファントゥームは永久に空へと帰ったはず…。君たちは業務に戻れ!!」
「「「「は…はい!!!!」」」」
(まさか…ヒカルがこんな形で帰ってきたのか!?いやいや、まさか)

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ここはアブニール社7号倉庫━━━━
ユウは合鍵で鍵を開けた。
ここにはトウヒの元現役機、サージュ号が眠っている。
1年前、ガンダーとの戦いで大破したサージュ号だが、故郷に帰るなり一応の修復をして、保存してあるのだ。
「…トウヒさん」
現在、トウヒは病院にいる。酒との付き合いのせいで、肝臓が悪くなっていた、と彼の主治医は語っていた。
「俺は…アブニール社を守らなくちゃいけないんだよな、うん。今更俺が…」
(グッ)



(キラッ)
サージュ号のコックピット内で何かが光った気がした。
ただのほこりとは思えなかったトウヒは、急いでよじ登り、内部を調べてみた。
そこにあったのは━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

6年前━━━━


「おい、アケチ!これなんだよ、汚ったない人形だな」
「失礼なこと言わないでください!これは先祖代々伝わる人形で、野球ができるという代物なんですよ」
「ヤキュー?なんだそれ変なの」
「野球知らないんですか?!ふぅ…。これは様々なパーツで構成されたですねえ…。」

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「どうして…サージュ号にこんなものが…。」
アケチが置いていったのか?いやいや、わざわざ置土産にこんなものを置いておくとは思えない。
だとしたら━━━━。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


アケチ宅━━━━

「こんにちはクロエさん!」
「あ、ああ…。テネジー、こんにちは。」(一瞬昔のメイド服じゃなくて秘書のような格好をしてるから誰だかわからなかったぞ。でも相変わらず巨乳だなあ…。)
「社長なら2階でお待ちですよ」
「ああ、悪いね」





「やあ、クロエ君ご無沙汰しております。いつも我が社の口座をご利用くださいまして有難うございます。」
「堅苦しい挨拶はいいって…俺がそういうの嫌いなのは知ってるだろ」
「ハハハ、一応形式上、ですよ。…で。要件はなんでしょう。………その……また冒険に連れ出…」
「頼むアケチ!書斎を見せてくれ」
「は?」
「お前と子供の頃、よく遊んでいた書斎!」
「え、ええと…わかりました。」

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アケチ宅に出向く2時間前にユウが耳にした、その日の夕方のラジオのニュースは、ユウの予想を裏付けるものだった。
「嬉しいニュースが入ってきました。只今入った情報によりますと、世界各国、各地方で、古代に発掘されたと言われる
通称『野球人形』が大量に発掘されたということです。ブランシェの金塊発掘場にて120体、ネグロの…」

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アケチ宅書斎内━━━━


「あんまり引っ掻き回さないでくださいよ」
「ええと…。ええと…。あった!!!これだこれ!!」
「それは…」


ユウは「~野球人形の書~第二巻」と書かれた分厚い書籍を取り出すと、ページをパラパラめくる。
その152ページに書いてあったのは、紛れも無く自分が確かめたいことであった。
「…やっぱり…!!」
「ちょっと、どういうことですか?説明してくださいよ」
「アケチ…俺、やることが決まったみたい!!今までありがとう!!!」
「ハ!?あ、あの、ちょっと!!」
(タタタタタッ)

「ふう…一体どういうことなんでしょうか。言いたいことだけ言って出ていってしまわれて…」
アケチはユウが置いていった書籍を拾い上げ、ユウが見ていたページをのぞき込む。その瞬間、彼の顔色が変わった。



~野球人形に関するパーツ、動力に関する謎は未だ解明されたいない。だが、偶然とも捉えられるが、50年前に空族が発展し、
様々な飛行機が地球上空に飛び交うようになってから、発掘量が激増したということは事実であり、何らかの関係性があるという一説が存在する。~


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


(タッタッタッタッ)
(間違いない…あの浮遊城には、野球人形に関するエネルギーがある!なんでそれらが地上に来てるかはわからないが…
もし万が一浮遊城ごとに不死身のゴーレムも存在するならば…万が一ゴーレムが地上に降りて来たりでもしたら…これは大変だぞ…
行方不明になったカメダが潜んでいる可能性もある…万が一ヒカルも…いるかもしれない!)


「ただいま!」
「あ、社長おかえりなさい!そういえばユイさんが一度社内に来てらっしゃいましたよ」
「ああ、ありがとう。なんて言ってた?」
「いや、特別何も…。社長がお出かけ中だとおっしゃったらお帰りになられました。あ、でも…」
「?」
「そうだ思い出しました。前社長が、退院なされたそうです!」
「!!」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

トウヒ宅書斎内━━━━

ユウはトウヒに深々と頭を下げていた。


「…お願いします!」
「…お前はなあ、年上に対する敬意ってもんがないな。お前は一度社長の座を降りた病み上がりの爺にまた復帰しろって言ってるんやで。」
「………すみません。」
「…浮遊城、か?」
「!!!!…はい。」

「…………」

「…………」

「ハァ…勝手にせえ。……今度は…帰りが遅くなりそうやな。」

「……すみません。」

世界中の浮遊城を巡るとなれば、それこそ1年や2年ではすまない。ユウも覚悟はしていた。

「…持って行け。」

(チャリン)

「…これは………!!サージュ号と…ファッティホエール号のエンジンキー!?」

「これからあと人生が10年あるかないかのおっさんが持ってたって、しょうがない代物や。もうありゃあ…お前が持っとき。」


「!!!!!」



(ポロ…ツー)
「あ…ありがとうございます…有難うございますっ!!…ヒック…」
(ポタ…ポタポタ)


「礼なんかええわっ!!とっとと行っちまえっ!!」



「…失礼しますっ!!!」
(バタン)


「ふん、どうせ『あいつ』も行くんやろが…折角…折角よお…
一緒に暮らせると思ったのに…畜生っ…!あいつらも…大人になったってことなのかい…
チクショオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


その日の深夜、
アブニール社18号倉庫━━━━

本来ここに来るつもりはなかった。フィデール号だけでただ一人、出発するつもりでいた。
今回のことはただの自分の我侭だ。仇や復讐と言った理由も存在しない。こんなことに皆を巻き込むわけにはいかなかった。

「トウヒさん…」

彼は再びファッティホエール号の保管してある倉庫に入った。1年前とは何一つ変わっていない身なりで。
ボロボロの半袖の作業着に、サングラス付きのエアキャップをかぶっているだけである。
せめて皆の思い出は、旅のお供に持っていきたかったようだ。

ファッティホエール号は、機能の80%を自動操縦にすれば1人でも操作はできる。出発だけなら問題ないだろう。
「前途多難だな…また、仲間を集めることからやり直しか…」

(ポロ…)

(な…泣くな…泣くなよ、俺…!死にに行く訳じゃないんだぞ、そうだよ、全ての浮遊城をまた…空に戻すだけだろおっ!!?)
もう彼のそばにヒカルはいない。どうするべきかわからない。全てを手探りで進まなければならない。暗中模索の世界だ。
自分で決心したことではあるが、彼は終わりの見えない旅に一人、絶望を抱き、一人頭を抱えて泣いた。

(仲間が居ないと…こんなに心細いものだったんだ、冒険って…)

今までどんなことがあっても僕の側にはユイがいた。アケチがいた。皆がいた。個性的な人々がいた。
だから、どんなに困難なことでも力が振り絞れた。
それが、今は、全く居ない━━━━。
「うっ…うっ…うお…うおおおおおおおおおお。わあああああああん。」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

彼がアブニール社7号倉庫に到着した…その時。

ユウは倉庫前に2人の人影を見た。
一瞬ただのカップルかと思った。しかし、彼らの姿を見るなり、ユウは素っ頓狂な声を上げた。
二人はどう考えても不機嫌にしか思えない顔をしていた。

「な…な…何でここに…」
「おやおや、来ましたよ」
(ツカツカツカ)
「ユウ…一発殴らせて」
「へ!?」


(バッチーーーーーン)


ユウは青髪の少女にビンタを食らった。思いっきり叩かれたユウの体は20cmほど吹っ飛ばされた。




「てーーっ…。な…なにするんだよっ!!」

「こんの……アホンダラーーっ!!!なんであなたは…あなたは全部一人で溜め込もうとするのよ!!」
(ポロ…ポロポロ)
ユイは大粒の涙を流していた。

「!!………」

「貴方の置いていった書籍を見て…嫌な予感はしましたが…何をするつもりだったんですか、あなたは!!!」

「……」

「全部トウヒさんに聞きましたよ。クロエ君、まさかたった一人で黙って出発するつもりだったんですか?!」

「……」

「パパ……泣いてたよ。折角病気が治って、これからって時に。ユウ、私たちもユウが黙って行っちゃったら…一生恨むよ、ユウを」

「!……」

「ユウは…焦ってるの?世界を救いに行くため?それとも…ヒカルを迎えに行くため?」

「!!!!」






(ツーッ)
「…ヒック…ぐすっ…くっ…」
(ああ、俺は、…馬鹿だ。俺にはこんなにも身近に自分を気にしてくれている仲間がいたのに…目の前に。
一人でなんでも解決しようとした、どうしようもない馬鹿だ!)

「ご…」

「!」


「ごめん、二人とも!!!」
(バッ)

「相談しなくて…ぐすっ…ゴメン!自分勝手で…ヒック…ゴメン!!!!!!!…ヒク、グス、…」


「ユウ…」

「クロエ君…」



(チュッ)

下を向いて謝りながらただただ涙を流しているユウの顔をグイッと上げ、ユイは口付けを交わした。

「!?」

「バーカッ♪」
(ニコッ)

「ユイ…」


「やれやれ…お熱いですね。人の目を気にしないとは。」

「!!!」
(バッ)
慌てて顔を真っ赤にした両名は顔を離す。

「私もですね。…銀行の業務をテネジーに任せてきましたよ。クロエ君。貴方は…一人なんかじゃありません。
僕達は…永遠の仲間なんですよ!」

(グイ)ユウは袖で涙を拭いた。
「うん…うん!!!ほんとにゴメン…そして…有難う!!」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


明朝、ファッティホエール号司令室内━━━━


「パパが言ってたよ。1年毎には帰ってきなさいってね!やっぱ寂しいんだよ、パパも」
「テネジーにも最初は止められましたよ。この借りは大きいですよー?クロエ君。」
「ブランシェやネグロにも今までの仲間たちにも会ってみようよ、まずは!
もう一度行ってくれるみんなもきっといるって!」
「ヒカル君も、沢山の仲間できっと…待ってるはずです!」

「………ああ!それじゃあ」


ユウは握り拳を2人の前に突き出した。

「おーうっ!」
「はい!」

(コツッ!)

ユイとアケチはそれに対して握り拳をぶつけた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

午前8時。

オルドルの広場でファッティホエール号が煙を上げた。

「エヘヘ…久しぶりだね、こういうの!」
「全くです。」
「…それじゃ!」

(ブオオオオオオオオオオオオオオオ)


「「「ファッティホエール号、離水!」」」





(あらたな冒険のはじまりだ!)


No.93
■各キャラ後日談 投稿者:無頼 投稿日:2012/03/23(金) 22:49

・スウォン&ヒトミ
ユイ「スウォンさんはあの戦いが終わった後、またワギリに戻って元気に働いています。
   だけど、ブランシェや街の近辺で悪い空族が暴れた時には、ベルーガ号で出撃しては
   悪党たちを次々と撃墜しています。
   今では、ブランシェの街を守る守護神のような存在になったみたいです。
   そしてもう一つ大事な事。
   スウォンさんは無事にヒトミさんと結婚し、幸せな夫婦生活を送っています。
   結婚式、本当に素敵だったな…。二人とも、とっても幸せそうでした。
   もうすぐ赤ちゃんも生まれるとの事です。赤ちゃん、無事に生まれてくるといいなぁ…。」

アルバムの一枚絵は、二人が子供達と一緒に幸せに暮らしている光景。

スウォンさんとヒトミさんはその後、双子の娘を授かりました。
一家は激動の時代を無事に生き抜き、末永く幸せに暮らしました。
天寿を全うするまでブランシェの守護神であり続けたスウォンさん。
世界に何か大きな危機があった時、世界の命運をかけた空戦には、
必ず「白き閃光」のような戦闘機が姿を現した、と伝えられています。
彼は生涯、その力で力なき人を守る為に、その力を行使し続けました。
ヒトミさんとは、生涯を終える最後の瞬間まで、ラブラブ夫婦でした。

パラダイス・カフェも、その後も繁盛を続け、
かつてファッティホエール号に集い、戦った仲間達もたまに集まり、彼らの憩いの場となり続けています。


・サーヤ
ユイ「サーヤちゃんはスウォンさんと一緒にワギリに戻り、元気に働いています。
   今ではお父さんの事も積極的に手伝っているみたい。
   まだクロエ君の事は諦めていないみたい。
サーヤ「もっといいオンナになって、必ずクロエ君の心を射止めてみせるわ! ユイ、あなたにだって負けないから!」
   と改めて宣戦布告されちゃった。…私も負けないからね、サーヤ。」

一枚絵はお父さんの仕事を手伝うサーヤの姿。
サーヤちゃんは二十年後、お父さんの跡を継いでワギリの女社長に就任。
ワギリを更に大きな企業に発展させ、飛行機の開発や平和利用にも大きく貢献するほどに成長しました。
クロエ君にアタックした後の展開は秘密です。
歳をとってからもその若々しい風貌は衰えなかったそうで、これも「サクラのおかげ」との事…。


・ユジーヌ
ユイ「ユジーヌ君は故郷に帰って、ミナさんと結婚。
   その後も空族として活躍を続け、今ではすっかり一流の空族として名を馳せています。
   空族がどんどん姿を消していく今でも、ユジーヌ君の空族としての活躍は続いています。」

一枚絵はユジーヌ君の駆るプライマル・ジョー号の空戦シーン。
ユジーヌ君はその後、空族という言葉が人々の記憶から忘れられるその時まで、空族として戦い続けました。
引退後は両親の跡を継ぎ、家業に専念しています。
空族引退後も飛行機好きは止まらず、たまにかつての愛機に乗って飛び回っています。
   


・パーシヴァル&マリン
ユイ「パーシヴァル君は今も世界中を飛び回り、研究と冒険を続けています。
パーシヴァル「ファントゥームの生き物たちを研究できなかったのは残念だけど、
       世界にはまだ不思議な生物がいっぱいいるはずだ!」
   と、今でも不思議な生物を追い求め続けています。
   でも、彼もアケチ君と同じように、仮にファントゥームの生き物たちを研究できたとしても、
   彼もその事実を封印するつもりだったみたいです。パーシヴァル君も、アケチ君とその想いは同じだったみたい。
   パーシヴァル君の発表した研究成果は他の学者さん達からも高く評価され、
   彼の博物学者としての名声は高まる一方です。
   きっと、いつかすごい大発見をしそうだな…。
   そして、マリンさんも正式にパーシヴァル君の助手になり、彼と共に旅立っていきました。
   二人はいつも一緒に研究と冒険を続けています。
   二人はもうすっかり、公私ともに素晴らしいパートナー同士となりました。
   今はまだ表向きは博士と助手の関係だけど、二人もいつかきっと…。」

アルバム一枚絵は、書斎で研究論文を執筆するパーシヴァル先生と、傍らで優しい笑みを浮かべながらそれを手伝うマリンさんの姿。

パーシヴァル先生とマリンさんはその後結婚し、正式に夫婦となりました。
夫婦はその後、共に末永く幸せな人生を送りました。
パーシヴァル先生は天寿を全うするまで多くの研究を発表し、多くの大発見をし、博物学・生物学の発展に大きく貢献。
彼の学者としての地位は不動のものとなり、後世の研究にも大きく影響を与えました。
そして、いつも彼の傍らにあったマリンさん。
彼女の幸せは、その後は二度と崩れ去る事は無く、彼女はシュネー先生が望んだように、
無事に長生きし、最愛の夫と共に幸せに天寿を全うする事が出来ました。



No.92
■『新しい幸せの日々へ…』 投稿者:無頼 投稿日:2012/03/23(金) 22:49

今宵も、空には月が、数多の星々が輝く。
そして、輝く夜空の光は、夜に沈んだ世界を優しく照らす。
月と星の光に照らされた夜の世界には、
太陽の光に照らされた昼間とは違った美しさと、輝きがある。
そして、光をもらうだけでなく、自らも光を放ち、輝く夜の世界もあった。


眠らない街・ブランシェ。
世界有数の大都市であるこの街は、
夜闇に包まれた現在も街の各所に明るい灯りが輝き、
光りあるところに、人々の明るく賑やかな喧騒があった。
人々は、今宵も平和な夜を謳歌する。
それぞれの、お互いの幸せを喜び合いながら。

幾多の問題を抱えながらも、世界は廻り続けている。
戦火の芽は今も撒かれ、芽吹き続け、
新たな戦いと悲劇もまた、生まれようとしている。
だが、混迷続くその世界には、平和も確かにあった。


「今夜も星が綺麗ですね。」
「この空…きっと明日もいい天気だよ。いい青空になる。」
平和な夜を享受するブランシェの街の一角にある、喧騒から外れた公園。
海が近く、街の風景もよく見渡せるその公園は、
ブランシェの街の人々にとって憩いの地だ。
昼間ともなればこの公園も人で賑わっているのだが、今は夜。
とても静かだ。
そこに、手を繋ぎ、夜空を見上げながら散歩する一組の男女の姿が在った。
優しく手を繋ぎながら、お互いの顔を見合わせて微笑み合う二人の姿。
他者から見ても、二人が仲睦まじい関係であることを察するのは、容易だった。
「ヒトミさん、寒くない?」
「ちっとも寒くありませんよ。だって…スウォンさんが隣にいるんですもの。」
ぎゅっと、女性――ヒトミの、男性――スウォンの手を握る力が、少し強くなる。
お互いのあたたかさを、今の自分達の幸せを、より強く噛み締めるように。


ファントゥームでの最後の戦いが終わってから、二週間が経過した。
世界の存亡を賭けるまでに発展したカメダ軍団との最後の戦いは
クロエ達ファッティホエール号の仲間達の勝利に終わり、カメダ軍団は遂に壊滅。
ファントゥームもまた、この世界を、「仲間」達を愛し、平和を願う一人の少女の意思により、
この世界から永遠に姿を消した。

戦いを終えたファッティホエール号の仲間達は、遂に解散の時を迎える事になった。
戦いが終わっても、世界は終わらない。
この世界の「終焉」は阻止され、これからも世界は廻り続ける。
そして、皆にはその世界で、それぞれのやるべき事がある。
全員が、この戦いを通して得た絆と思い出を改めて確かめ合い、
必ず再会する事を約束して。
解散した仲間達は、各々の道へと旅立っていった。
行くべき場所へ。
帰るべき場所へ。
それぞれの未来へ。

スウォンもまた、帰るべき場所へと戻ってきた。
たくさんの仲間達の、そして、愛する人の待つ、故郷のブランシェへと。

ブランシェに帰って来て、情勢が落ち着いてきてしばらく経ち、
そして今日、スウォンは久しぶりに、
幼馴染で恋人のヒトミと一緒にデートに出かけていた。
最愛の人との幸せな時間を、二人は久しぶりに満喫する事が出来た。
その「一日」も、もう残り短くなりつつあった。
二人は今日一日のデートの最後の外出先に、この公園を選んだ。


「今日は一日、どうだった?」
「とっても楽しかったです。久々のデート、本当に素敵な一日でした。」
ブランシェの港地区の美しい夜景を一望しながら、
スウォンとヒトミは、ベンチに腰を降ろし、互いに寄り添い合っていた。
「嬉しいよ。またこうしてヒトミさんとデートする事が出来て…。」
「私もです。あなたが無事に帰って来てくれて、私、本当に嬉しかった…。」
「…長く心配かけて、すまなかったね…。」
「ううん、いいんです。
 それに、私達がこうして今日もこうして平和に生きていられるのも、
 スウォンさん達のおかげですから…。」
ヒトミは改めて、ブランシェの夜景を見渡す。
街に輝く灯りの下にはたくさんの人達がいて、今も明るい賑わいを見せている。
平和の光景、そのものだった。
「スウォンさんが、テネジーちゃんやヒカリ君が、
 クロエさん達が、皆さんが守った街です…。皆さんが守った平和です…。」
「守れたんだな…俺達…。」
あの最後の戦いで負けていたら、この世界は終焉を迎えていた。
そう、ファッティホエール号の仲間達は、救う事が出来たのだ。
この世界と、そこに生きる数多の命を。


「スウォンさんは、これからもワギリで働き続ける予定ですか?」
「ああ。もう身体も完全に回復したし、前と同じように働ける。
 これからは、また元気に働けるよ。」
微笑んでそう答えると、スウォンは夜空を仰ぐ。
視線の先は、一際輝く満月。
一瞬、スウォンは静かに満月をじっと見つめると、再び言葉を紡ぎ始める。
「ただ、必要とあらば、また空で戦う事もあると思う。」
「えっ…?」
「カメダ軍団とのファントゥームを巡る戦いは終わったけど、
 まだ世界が完全に平和になったわけじゃない。
 いつまた大きい戦争が始まるかもわからない。
 それに、カメダ軍団は確かに壊滅したけど、
 逃走した残党だってまだ多く居るはずだ。
 カメダ軍団だけじゃない。
 自らの私利私欲で平和を脅かそうとする輩は、他にもたくさんいる。
 いつかまた、あのファイアバグやカメダ、ジオットのような悪党が現れるかもしれない。
 もし今までの一連の戦いの時みたいに、この世界が危機に曝されたその時は、
 戦うよ、俺は。」
この世界を、もっといい方向へ導くこと。
この世界に、一つでも多くの幸せと平和を齎す事。
それが、続くこの世界でこれからも生き続ける俺達の役割だと思うから。
平和の礎となって散っていった数多くの魂の為にも。
幸せを、平和を踏み躙られ、犠牲となった、かつての旧友達に、数多くの魂の為にも。
この世界の幸せと平和を願い、みんなにそれを託した彼女の為にも。
俺達は、未来を創らなくてはいけない。明るい未来を。
「スウォンさん…。」
そしてまた、静かに、スウォンはヒトミに微笑みかけ、
そっと彼女のあたたかい身体を抱き締める。
「小さな力だけど、俺には戦う力がある。
 だから、その力で、少しでも多くの人の平和を、幸せを守りたいんだ。
 そして…誰よりも、ヒトミさん、君の事を守りたいんだ。」
あたたかく濡れたものが、ヒトミの目元に溢れ、頬を伝う。
多くの傷を心身に負いながらも、戦い続けたスウォン。
彼の戦いは、いつも「誰かの幸せを守る為」という行動理念から始まっていた。
カメダ軍団との一連の戦いでは、
友の命を奪ったファイアバグへの復讐、という怨恨も確かにあった。
だが、それ以上に彼を突き動かしたのは、
人々の幸せを踏み躙るカメダ軍団への怒り、そして軍団の非道から人々を守りたいという
想いに他ならなかった。
そして、彼はまた、新たな戦いに身を投じようとしている。
彼の決意は、揺らぐことは無い。
ヒトミは、彼がそういう人間だという事を熟知している。
彼はまた、自分達の為に傷つこうとしている。
いつもスウォンの事を見守り続けてきたヒトミ。
彼の優しさに、嬉しく、同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「…スウォンさん…。 スウォンさん…!」
スウォンの背中にも、そっとヒトミの手が廻る。
ありがとう。ごめんなさい。
最愛の人への、謝意に満ち溢れた涙が、ヒトミの頬をとめどなく流れる。

ずっと近くなり、感じ合う、お互いのあたたかい温もり。
絶対に守りたい、最愛の人の温もりを感じながら、
スウォンは一旦、名残惜しそうに彼女の身体を離した。
まだ潤んだままのヒトミの目元と、涙の痕に、
スウォンも嬉しくも、申し訳ない気持ちになる。
だが、再び戦いに身を投じる決意に、躊躇いは無い。
彼女の幸せを守る為にも。
幸せにしたいのだ。誰よりも、彼女を。
最愛の女性(ひと)だから。

一連の戦いの日々の中で、
以前から相思相愛ながらもなかなか進展できなかった二人の関係は、
様々な出来事を経て、大きく前へと進んだ。
お互いの気持ち、想いは、もうはっきりとわかっている。
だからこそ、彼は今日、彼女に向けてある言葉を贈る事を決意していた。

「ヒトミさん、お願いがあるんだけど、いいかな…?」
「う、うん…」
「左手、前に出して。」
「…っ!?」
その声に従い、ヒトミはそっと左手を前に差し出す。
スウォンはポケットから小さな箱を取り出し、
箱の中にある物を、そっとヒトミの左手の薬指に、それをゆっくりとはめた。
「ス、スウォンさん…! これ…!?」
ヒトミの左手の薬指にはめられたもの。
それは、美しい宝石の指輪。
それが何を意味するのか。わからないわけがなかった。
「ヒトミさん、ごめん。
 また先の戦いのような事が起こったら、
俺、これからも何度もヒトミさんを待たせる事もあると思う。
寂しい想いをさせてしまう事もあるかもしれない。
だけど、信じてほしい。
俺は絶対、君の所に帰ってくる。
俺は、これからも君の隣にいたい。」
「あ、ああ…。」
再び、ヒトミの頬を涙が伝い始める。
今度は、喜びと幸せに満ち溢れた涙が。
「絶対に、幸せにする。
 俺と、結婚してほしい。
 一緒に、幸せになろう。」
「……はい…!」
最初の返事は、涙と幸せに溢れた笑顔と共に。

そして、二つ目の返事は、涙に濡れた、甘酸っぱい口付けと共に。


一つの物語が終わり、いくつもの新しい物語が始まる。

これは、二人の新しい幸せの日々の始まり――。



HAPPY END!!


No.91
■捏造祭りSS07「その後」 投稿者:tare 投稿日:2012/03/23(金) 22:24

・アカリ
全てが終わった後、彼女は艦を降りること無くクロエ達と共に過ごしながら火砲の研究を続けている。
数々の実戦を経て開発された火砲は、性能と整備のしやすさを並立した非常に使いやすい火砲として評判を呼ぶことになる。
そして、様々なメーカーがライセンス生産を申し出て、世界中でライセンス生産されることになった。
そのライセンス収入は莫大なはずであるが、彼女自身の生活は昔と変わらない。莫大な収入は何処に行ったのか、と彼女はよく問われるが、彼女の答えはいつも一つ。
「さあ? 何処へ行ったんでしょうね」

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・レン
ファッティホエール号の電信室、レーダー員席。そこが、今でも彼女の定位置である。全てが終わった後、一連の騒動の解決に大きな力となった電子戦の力が多大に評価されることとなった。
そして、彼女の研究も大いに評価され、彼女の師である寺岡博士以上に評価する声すら上がるようになり、当然研究職として迎えようと言う組織も多数に上った。
だが、彼女はそれを全て固辞し、在野の研究者として自由に活動している。何故研究環境としてより良い場所へ行かないのかと問われた彼女はこう答えたという。
「ここが一番好きな場所なんです。ここにいるのが幸せですから」

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・スメラ
彼が冒険の末に見届けたのは、世界と人の闇だった。その後の彼の姿は、貧困地域と呼ばれる様々な場所で見かけることになった。
世界中を飛び回った飛行艇に物資を積み込み、貧困地域において支援活動を行う姿が目撃されるようになったのである。
その活動の資金は彼自身の持つ資産だけでは明らかに足りないものであったが、彼自身が困窮する様子は無く、相変わらずの変人伯爵として地元では親しまれている。
一度、あるジャーナリストが彼に取材をし、その資金源を問われた時彼は一言だけ、こう答えたという。
「友人から、とでも言っておこうか」

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・ゴンダ&イシナカ
とある港から程近い大衆向けパブで、酒を酌み交わしながら笑う男達の集団があった。最初は対立していた男達は、ある事件から一つの方向を向き始め、いつしか一つの集団の如き姿になった。
出会えば酒を飲みながら談笑し、空の上では協力し合う仲間達。そんな二つの集団を象徴するが如き、無二の親友となった二人の男が、同時に笑い声を上げる。
「今日も良くやったなあ!」
「そっちこそ!」

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・リコ&サエカ
"RS Brigade"はいつの間にか巨大化し、構成員には多数の空族が名前を連ねる。だが、彼らは連携を取るわけでもなく、思い思いに世界の空を飛ぶ。
入団条件はただ一つ「面白いことが好き」。その信念だけを胸に、今日も空を飛び回る。「面白いこと」を求めて。
「んー、そろそろあいつの所に遊びに行こうか」
「また? 昨日も行ったばかりでしょうが」

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・ヘルガ
空中海賊狩りで大きな戦功を上げたとして昇進の話もあったが、彼女はそれを固辞。今も現場に残り、後進の指導と共に最前線の空を飛んでいる。
戦後、あの戦いの証言を集めていたとある人物に向けて、空を見上げながら呟くように話した彼女の言葉は、大きな語り草となっている。
「……あの功績は指揮官だった私の物ではない。この栄誉は、実際に戦いに身を投じた者、そして死んでいった者達に与えられるべきだ」

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・ミーナ
彼女が戦後暫くしてから発表した二本のドキュメント、カメダ軍団の栄枯盛衰を書いた作品とネグロの裏を暴露した書籍は世界的な大反響を呼び起こした。
一つは当事者としてその場に居合わせ、ひたすらに証言記録を取り続けた彼女の作品は、あの戦いを語る上での重要な基礎史料となった。
もう一つはネグロ国内には非常に大きなな衝撃を与え、最終的にはネグロの政治体制そのものが変化する程のインパクトを与えた。
これに伴い彼女自身の名声も一気に高まったが、彼女はその名声を全て固辞するような態度を見せる。彼女の二冊の本の結びには、同じ言葉が書かれていた。

――栄誉は筆者ではなく、当事者に与えられるべき物と信ずる。

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パワポケスタジアムで行われた「パワポケ空族祭」の作品をまとめてあります。
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